ローマ人はフクロウをストリクスStrix(複数形は Striges)と呼んだ。この語は魔女を意味した[1]。ギリシア人はフクロウは、古代メソポタミアの「目の女神」のギリシア版である女神アテーナーに捧げられた鳥だと言った[1]。フクロウのように凝視する目を持つ「目の女神」の像は、中東地方一帯、とくに女神マリの名をとって名づけられた都市周辺で発見されている[2]。フクロウはまた、リリト、プロデュウエッド、アナト、その他三相一体の月女神の異版である女神のトーテム鳥であった。Trinity.
キリスト教の伝説によれば、フクロウは「不服従の3姉妹」の1人で、神を拒んだため、決して太陽を見ることのない鳥に姿を変えられたという[3]。この考え方に、女神自身の姿と、教会の女神に対する敵意を読みとるのはやさしい。フクロウに対する中世の名の1つは、「夜の魔女」であった。フクロウは鳥の姿となった魔女と言われていた[4]。「諸聖人の祝日の前夜祭」 Halloweenのシンボルでも、フクロウはいまだに魔女と結びつけられている。
フクロウはまた、かつては女神の知恵を具象化した鳥であったところから、知恵の鳥でもある。ある中世の魔法のまじないは明らかに、この鳥がもとの女主人や女性に対して持っている神託を告げるカを用いようとしたものである。フクロウを殺し、心臓を引っ張り出し、眠っている女性の左の胸を置くと、その女性は眠ったまま話し、彼女の秘密のすべてを明かす[5]。これがもととなって、女性が親しい者と語る秘密の会話を意味する「打ち明け話」 (heart to heart talk)という表現が生まれたように思われる。
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
〔象徴〕 フランス人はフクロウに盗賊の汚名を着せている。また、どうもラブレーの意見には反対のようで、フクロウを醜悪の象徴としている。一方、ギリシア人にとってこの鳥は女神〈アテーナー〉の鳥であった。月と関係を持つ夜の烏で、フクロウは太陽の光に耐えることができない。したがって太陽の光を眼を開いて受けるワシとこの点において対立する。ゲノンによると、それは〈アテナ-ミネルウァ〉の関係と同じで、ワシに対立するフクロウとは、(太陽の)光の直視、すなわち直観的認識に対立する(月の)反射光の知覚、すなわち理性的認識のシンボルと考えることができる(GUES)。多分それが伝統的にフクロウが占い師の付き物である理由でもある。フクロウは占い師の透視能力、徴候を解釈する能力を象徴する。「アテーナーの鳥、フクロウは闇を支配する省察力を象徴する」(MAGE、108)。
〔ギリシア・神話〕 ギリシア神話ではフクロウはアケロンと闇のニンフの息子のアスカラボスによって表される。ペルセポネーが冥府の食べ物(ザクロの実1粒)を口にするのを「見」て彼女を告発し、完全に冥府を去り地上に帰るという希望を絶ってしまったのはこのアスカラボスである(GRID)。
〔中米・神話〕 アステカでフクロウはクモとともに、地獄の神を象徴する動物である。多くの絵文書に「大地の冥(ま)い家の番人」として描かれている。冥界の諸力と結ばれたフクロウは夜、雨、嵐の化身でもある。この象徴的意味はフクロウを死に結びつけると同時に、水、植物、そして成長一般を司る月*大地的な無意識の諸力に関連させる。
〔南米・神話〕 ペルーの前インカ文明であるチムー文明の墓の埋葬品の中に、夜の鳥すなわちフクロウかミミズクの姿をした半人半獣の神が上に乗った、半月形の生贄用の小刀の絵が頻繁に見られる。明らかに死あるいは生贄の観念と結ばれたこのシンボルは真珠と貝殻の首飾りをつけ、胸は赤く塗られている。このように描かれた神はしばしば2匹のイヌを両側に従えているが、イヌが霊魂導師という意味を持つことは人の知るところである。このミミズクあるいはフクロウはよく一方の手に生贄用の小刀を、片方に生贄の血を受けるための壷を持っている(GRID)。
今日でもなお、フクロウは数多くのアメリカ・インディアン諸族にとって死の神であり、墓の番人である(REIN)。それにしても、これほど普遍的に暗く、不吉な観念と連結したシンボル媒体であるフクロウという言葉が、ラテン諸語では形容詞として美しい女性を示し、無差別に吉兆のすべてを意味してきたことは驚きである。
(『世界シンボル大事典』)