間歇日記

世界Aの始末書


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2000年12月上旬

【12月10日(日)】
「あ! あれたべよ」大塚食品)シリーズに、「限定販売」と書かれた“企画モノ”が出ていて驚く。母が懐かしがって買ってきたのである。パッケージには、「20世紀の傑作 元祖ボンカレー&ライス」とあって、なんとホーロー看板の面影もそのままの松山容子が微笑みかけている。ひえええ。こりゃあ、買ってしまうわな。
 そこでやはり気になるのは、「カレーはどっちだ」問題である(1999年10月20日24日28日2000年1月2日5日16日などなど参照。しかし、我孫子武丸さんではあるまいし、なぜこんなにカレーにこだわる?)。「れとろ看板写真館」「大塚系れとろ看板」にある写真では、松山容子看板のカレーはこちらから見て左、米は右にあるが、この限定版「あ! あれたべよ」のパッケージ写真では、カレーが“手前”になっているのだった。ううむ、これが時代の変遷というものか。まわるまわるよ、カレーはまわる。
 それはともかく、「元祖ボンカレー&カレーライス」の「あ! あれたべよ」は、食ってみるとちっとも元祖ボンカレーではなかった。うますぎるのだ。具だって多すぎるような気がする。あれはもっと安っぽい味がしたもので、そこがよかったのである。これを買う人は、もう一度あの安っぽいボンカレーが食いたいと思って買うのだろうに、これではがっかりだなあ。

【12月9日(土)】
タニグチリウイチさんの「裏日本工業新聞」(2000年12月9日)にも述べられているが、田中康夫長野県知事の所信表明演説があちこちで揶揄されているのはなんとも奇妙なことである。「パブリック・サーバント」がそんなにわかりにくいか? 「クリエイティブ・コンフリクト」が? はて、英語を“第二公用語”とやらにすることも考えているのは、どこの国だったっけ? 「田中康夫の演説もわからんとは、わからんほうが悪い。さすがは長野県会議員、田舎者揃いである」くらいのことを書くマスコミがあってもよさそうなものだ。率直な話、べつに田中康夫が駆使する類の言葉など、ふつうのサラリーマンが日常的に目にするビジネス雑誌などにだって、ごくふつうに使われているだろう。〈ハーバード・ビジネス・レビュー〉とは言わんが、ヤスオちゃんの言うこともわからんようでは、〈週刊ダイヤモンド〉やら〈週刊東洋経済〉やらも読めんだろう。ひょっとすると、〈週刊宝石〉だって読めないのではないか? その程度の人々を県議会に飼っていたのでは長野県は世間に置いてゆかれてしまうので、わかりにくいわかりにくいと自分の不勉強とボキャブラリーの貧困を棚に上げて威張っている議員がいたら、長野県民は遠慮なく選挙で落とすようにしたほうがよい。
 よいか、長野県の県会議員、わからんわからんと無知なやつのほうが開き直って威張るな。子供の教育に悪いわ。最近の子供や若者には妙にそういうやつが多いが、おまえらみたいな大人の真似をしているのではないか? 県民が選んだ知事が自分の知らんことを言うたら、ああ、よい勉強の機会じゃと思うて、手前で辞書のひとつも引け。「現代用語の基礎知識」「イミダス」「知恵蔵」もあるぞ。インターネットでも調べられるぞ。なに? そんなものは使えん? そうじゃろう、そうじゃろうと思うた、なにしろ長野県じゃからな。なに? 和製英語はわからん。どこが和製英語じゃ、自分で海外のサイトを調べてみよ。なに? 英語など読めん? そうじゃろう、そうじゃろうと思うた、なにしろ長野県じゃからな。だったら、人の言葉遣いの揚げ足取りをするでないぞ。そもそも、田中康夫の言うことがわかる人たちが彼を知事に選んだのとちがうのか? そういうふうに考えてみたこともないのか? つまり、そういうことだ。なに? どういうことかわからん? いままでおれが書いてきたことにヒントがあるのだが、やっぱりわからんかったか? じゃあ、はっきり言ってやろう。要するに、田中康夫は、農村のじいちゃん・ばあちゃんをターゲットに据えた言葉ではなく、現代の都会の勤め人に通じる言葉でしゃべっておるのだ。そして、もはや後者のほうが強い時代になっておるということなのだ。どうやら県会議員諸君は、田中康夫を度し難い理想主義者のお坊ちゃんであるかのように思っているようだが、それはちゃんちゃらおかしいぞ。田中康夫のほうが、諸君を数段凌ぐプラグマティストであり、ストラテジストである。そんなことも、まだわかっていなかったのか? なに? プラグマティストとストラテジストがわからん? 自分で調べろ、自分で。

【12月8日(金)】
「高野史緒公式サイト」がプレオープンしているのを知り、さっそく見にゆく。めでたいめでたい。それにしても見れば見るほど不思議な経歴の持ち主である。来世紀の本オープンで、このサイトがどのような姿を現わすのか楽しみだ。なにやら近寄り難げな才媛のイメージが強いのだが、「バラエティーでもイケる」キャラであることはSFにはバレているんである。

【12月7日(木)】
《ご恵贈御礼》まことにありがとうございます。

『エリ・エリ』
(平谷美樹、角川春樹事務所)
『DOMESDAY ドームズデイ』
(浦浜圭一郎、ハルキ・ノベルズ)

 『エリ・エリ』は第一回小松左京賞受賞作品、『DOMESDAY ドームズデイ』は同賞佳作である。またもやと言おうかなんと言おうか、平谷氏は一九六○年生まれ、浦浜氏は一九六三年生まれ、SF作家の平均年齢はいくら新人が現われても下がらないという経験則が強化される結果となった。ほんまに、あそこいらへん生まれの人間は、なんか悪いもんでも食うて育ったんか?
 面白いことに、『エリ・エリ』の腰巻を読むとなんとなく『神への長い道』『さよならジュピター』を連想し、『DOMESDAY ドームズデイ』のアオリを読むと、もろに『首都消失』を連想する。いや、べつに小説のアイディアなんてものは、似ているものどころか、仮にまったく同じものがいくつあったとしても、まったくかまわないのだ。それが“どう”書かれているかが楽しみだからこそ、何冊読もうが人は小説に飽きないのである(飽きる人もおるかもしれんが)。

【12月6日(水)】
「ゴジラ名鑑」バンダイ/企画協力・造型・彩色監修:酒井ゆうじ)なる玩具菓子をコンビニで発見、例によって思わず一個買ってしまう。おれとしては初代ゴジラが欲しかったのだが、すでにその店にはなかったため、しかたなく「モスラ対ゴジラ」にした。なかなかよくできている。これで三百円なら安い。
 ゴジラもいいのだが、このシリーズでリアルな造型のメガギラスが出ないかなあ。おれはそんなに怪獣に詳しいわけではないが、トンボの怪獣ってのはおれの記憶ではいままでになかったので(「いや、ある」と思い当たる方は、ぜひご教示ください)、『ゴジラ X メガギラス G消滅作戦』には期待しているのだ。どうでもいいけどこのタイトル、怪獣が闘ってる横でデューク東郷が銃を構えてる構図が目に浮かぶよなあ。

【12月5日(火)】
▼ビデオ店爆破少年の言葉が、やたらマスコミに取り上げられている。「人を壊したかった」か。陳腐だ。いかにもツクリモノという感じがする。非凡を気取った陳腐ほど胸のむかつくものはない。ほんとうに壊れている犯罪者であれば多少の興味も湧くのだが、弱い頭でひねくり出した凡庸きわまりない甘えん坊の言葉など、すぐに忘れ去られることであろう。甘えん坊犯罪の少年少女どもには、もう少し文学的な台詞を期待するものである。「月曜日が嫌いだから」ってのは、もう古典だからダメだぜ。

【12月4日(月)】
▼さあ、今年もやってまいりました、唄う経済学者マイソフさんの恒例投稿『アニソン縛り紅白歌合戦』である。早いもので、今年で第四回を数える([第一回]1998年9月16日[第二回]1998年12月16日[第三回]1999年12月4日)。毎年、間歇日記にネタを提供してくださり、まことにありがとうございます、マイソフさん。
 今年もマイソフさんのサイトに詳しい「鑑賞の手引き」が用意されているので、そちらを参照しながら、それぞれの歌手がそれぞれの曲を唄っている姿をできるだけリアルに思い浮かべていただきたい。
 ブラウザの幅を少し広めに取って、では、行ってみようかあ――

第四回「アニソン縛り紅白歌合戦」(出場順)
慎吾ママパタパタママ
[ひらけ!ポンキッキ]
ポケモンはらはらリレー
[ポケットモンスター]
こぶ茶バンド
Kiroro予感
[めぞん一刻]
誰よりも遠くへ
[トム・ソーヤの冒険]
V6
安達祐実アタックNo.1
[アタックNo.1]
巨人の星
[巨人の星]
山本譲二
レベッカ夢冒険
[アニメ三銃士]
BRAVE LOVE,TIGA
[ウルトラマンティガ]
水木一郎
国府田マリ子タッチ
[タッチ]
侍ジャイアンツ
[侍ジャイアンツ]
山寺宏一
リンドバーグバカッポでGO!
[クレヨンしんちゃん]
がんばれロボコン
[がんばれ!!ロボコン]
冠二郎
広末涼子プリンセス・ムーン
[美少女戦士セーラームーン]
ビッケは小さなバイキング
[小さなバイキング ビッケ]
山本まさゆき
ドリーミングモスラの歌
[モスラ]
ぼくらのマジンガーZ
[マジンガーZ]
遠藤正明
松澤由美リボンのマーチ
[リボンの騎士]
未来に向かって
[鉄腕アトム(リメイク版)]
タケカワユキヒデ
サーカス<マリオネーションメドレー>
きかんしゃトーマス〜
ネコジャラ市の11人〜
サンダーバード
<コーラスメドレー>
マイティジャックの歌〜
ジャイアントロボ〜
恐怖の町
TRF
モーニング娘。ハートを磨くっきゃない
[飛べ!イサミ]
キン肉マン Go Fight!
[キン肉マン]
Kinki Kids
Olivia Newton-JohnTake Me Home, Country Roads
[耳をすませば]
BLUE
[カウボーイ・ビバップ]
Stevie Wonder
宇多田ヒカルAngel Night
〜天使のいる場所〜

[シティーハンター]
愛を取りもどせ
[北斗の拳]
堀内孝雄
谷村新司
太田裕美ありがとう
[カードキャプターさくら・
封印されたカード]
アンパンマンマーチ
[それゆけ!アンパンマン]
田中星児
モダンチョキチョキズおじゃ魔女カーニバル
[おじゃ魔女どれみ]
ガッチャマンの歌
[科学忍者隊ガッチャマン]
SMAP
池澤春菜愛は流れる
[超時空要塞マクロス]
かえってくるライダー
[仮面ライダー]
森進一
DREAMS COME TRUE奇跡の海
[ロードス島戦記・英雄騎士伝]
いつか星の海で
[勇者王ガオガイガー]
槙原敬之
由紀さおり・安田祥子花咲く乙女
[サクラ大戦]
宇宙刑事ギャバン
[宇宙刑事ギャバン]
織田裕二
松田聖子ラムのバラード
[うる星やつら オンリー・ユー]
バーニング ラブ
[超獣機神ダンクーガ]
ウルフルズ
和田アキ子時には昔の話を
[紅の豚]
アトムの子
[ジュブナイル]
武田鉄矢
安室奈美恵Eternal Wind
[機動戦士ガンダムF91]
Z・刻をこえて
[機動戦士Zガンダム]
郷ひろみ
島倉千代子スカーレット
[妖しのセレス]
眠れマッハバロン
[スーパーロボット・
マッハバロン]
さだまさし
八代亜紀魂のルフラン
[新世紀エヴァンゲリオン・
シト新生]
青い地球
[銀河鉄道999]
北島三郎
東京混声合唱団coro di dea 女神達の歌声
[ああっ女神さまっ 劇場版]
平和の祈り
[ゴジラ(初代無印)]
米良美一
小林幸子指輪
[エスカフローネ]
哀・戦士
[機動戦士ガンダムII 哀戦士編]
矢沢永吉

 なんというか、回を重ねるごとにマニアックになってくるような気がする。『「どんなマニアが見ても、知らない世界が少しはある」プログラムになるよう努力しました』とのことだから、当然かもしれない。いまに全部唄えるのは、さいとうよしこさんだけになってしまうかもしれないが、なあに、かまうものか。
 TRF「ジャイアントロボ」かあ、聴いてみたいなあ。宇多田ヒカル「Angel Night 〜天使のいる場所〜」もすばらしい。今年注目すべきは、池澤春菜の初登場である。谷田貝和男さんもさぞやお喜びであろう。
 今年もプリントアウトして、あるいは、PDAに保存して、年末年始のカラオケ・パーティーに活用していただきたい。

【12月3日(日)】
▼ネタにしようと思っていたら、喜多哲士さんの日記(2000年12月2日)に先に書かれてしまった。「京阪のったら、おけいはん。」という、京阪電車のものすごいコピーのことである。「いったいほんまにどういう意味なんか誰か教えてくれーっ」って、おれに問われても困る。たしかに、以前から何度か関西の広告について考察(?)しているが(1997年6月1日1999年7月2日7月6日など)、べつに研究しているわけじゃないからなあ。
 やっぱり、今度のやつばかりは、ほんとうに田中啓文さんがバイトで書いているんじゃないでしょうか、喜多さん?

【12月2日(土)】
《ご恵贈御礼》まことにありがとうございます。

SFバカ本 宇宙チャーハン篇』
岬兄悟大原まり子編/谷甲州、岡崎弘明森奈津子、岬兄悟、村田基、牧野修、高井信、岡本賢一高瀬美恵館淳一/メディアファクトリー)
『SFバカ本 黄金スパム篇』
岬兄悟大原まり子編/安達瑶矢崎存美、大場惑、岡崎弘明藤水名子、東野司、友成純一、岬兄悟、小室みつ子withうにょーくん/メディアファクトリー)

 SFバカ本の復活である。「宇宙チャーハン篇」の岬兄悟氏のあとがきが痛快だ。「ゾンビのごとく復活してくるしぶといアンソロジー……。すっかり埋められて表面の土をバンバンと踏み固められても、とある満月の夜、まずは右手だけが土からボコッと出、ペンキが滴るようなおどろおどろしいタイトルのロゴと安っぽいバックミュージックとともに復活する『SFバカ本』です」
 宇宙チャーハン篇の発売が遅れたためか、いきなり両手が土からボコボコッと出ることになったが、これまたじつに豪華な顔ぶれ。館淳一の登場にはどなたも驚きであろう。どんな作品か楽しみである。一度テーマしばりで、マジに『SMバカ本』を作ってもいいかもしれないぞ。いつも“作家リンク集”のようになってしまう『SFバカ本』のご紹介だが、今回は十八歳未満のよい子の読者にはお薦めしにくいサイトがふたつほどあるので、全部クリックしてみたりしないように(と書いておけば、きっと全部クリックするだろう)。

【12月1日(金)】
▼今月の「今月の言葉」は少々わかりにくいかもしれない。“魚弱の頭”なんてのは、おれが作った言葉だからだ。まあ、文字どおり“魚のように弱い頭脳”といった意味のつもりなので、字面で感じ取ってください。じつは、「否を隠すなら、森、野中」ってのも考えていたのだが、とうとう野中さんが降りてしまったためボツにした。そりゃあ、アホらしくてやってられんわな。以前にも言ったように、おれは野中広務なるキャラクターが生理的に嫌いなのだが、たしかにあのおやじは偉いやつにはちがいない。よくぞここまで耐えたよ、ほんと。


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