趣旨
景観法が全面施行されてもうすぐ4年が経とうとしている。新たに文化的景観や歴史まちづくり法も動きだした。これまで景観というと高さや色、様式など建築物の意匠、材料などを景観課題とされてきたが、各地での主体的な計画づくりの経験をとおして、景観を考えることがまちづくりや地域づくりであることが理解されるようになってきたことに注目したい。
景観はまちや地域のすがたである。しかし、これを構成要素に分解して評価しても、なかなか全体像の魅力や不具合を表現できないと感じている人も多いと思う。景観まちづくりでは、日常の生活の中で感じるまち実感を景観によって伝えることが、まちの認識を共有していくときの手がかりとなる。そうした景観のとらえ方のひとつが、「景観のまとまり」であり、そのデザインを考えることである。
これは、かつては地域に蓄積されてきた当たり前の情報であった地形・風土と呼応する暮らしのかたちや、地域の歴史のなかで形成されてきた道や街区・敷地のかたちなどが、今の生活空間とどうつながっているのかを理解することでもあり、そこから景観を読み解くことである。また、仕事や生活による建て替えや地域の変化が良い方向に向かうにはどうすれば良いのかを考える視点でもある。それはまた、今各地で試みられている文化的景観や歴史景観まちづくりにおける景観認識の基本でもある。
そこで、今回は2つの景観まちづくりについて報告した。
1.「景観のまとまり」から地域景観をデザインする:大阪大学 小浦久子
景観を計画することでまちを考える。それぞれの計画づくりを通して地域の景観価値を地域で共有するとともに、景観計画に書かれる方針と景観形成基準によって地域外に対して景観価値を発信する。そうすることにより、変化と地域らしさをつなぐ。景観法はこれを法的に支援することが期待されるが、今のところは、それぞれの自治体に工夫が求められる。では、どうすれば良いのか。その端緒として「まとまりの景観デザイン」を示した。2.歴史景観まちづくりに景観計画を活かす:彦根市 深谷 覚
彦根市は平成6年に彦根市都市景観基本計画を定め、16年6月には景観法に移行した。そこでは住民の理解と賛同を得ながら歴史的景観の特徴を踏まえ城下町としての景観を形成していくことへの拘りがある。それは歴まち法の活用にも引き継がれている。彦根市の城下町景観への果敢な挑戦を紹介していただいた。セミナー委員 小浦久子