「復讐者」の意味。 3人の復讐の女神としての母なるデーメーテールの添え名。エリーニュスは、母権制の法律を侵害する人をすべて罰した。恐ろしい復讐者という面を見せるときは、この女神は、黒ウマの頭にヘビの冠をかぶった悪夢Nightmareとして登場した[1]。 Demeter. ; Furies.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)
エリーニュスは、太母神デーメーテールの添え名。三相一体にして、おのおのの名は、アーレークトー、ティーシポネー、メガイラである。イヌの頭、コウモリの翼、ヘビの頭髪をしている。
例のウーラノスの血のしたたりから生まれでたエリーニュスたちは、じつは三様に姿をかえる女神そのひとのことなのである。つまり、麦畑や果樹園のみのりを豊かにする目的で王が生贄にされているあいだに、この女神につかえる巫女たちは、おそろしい形相のゴルゴーンの仮面をつけて、神をけがす訪問者たちを追いはらったものらしい。ウーラノスの男根を海のなかに投げこんだのは、それによって魚類をますます繁殖させるという意味を寓するのだろうと思われる。神話作者たちが三人の復讐の姉妹エリーニュスたちのことをつたえているのは、のちに出現するゼウスにふたたびおなじ鎌をふるってクロノスを去勢してはならないと警告を発しているようにも解されるけれども、もともと彼女たちの役割は、母親だけか、あるいは炉の女神の庇護をねがう者に加えられた損傷にたいしてしかえしをすることであって、父親に加えられた損傷に復讐することではなかった。(グレイヴズ、p.60)
彼女らは地下の冥界の底なるタルタロスに住み、犠牲には黒い羊とネーパリNephalia(水、蜜、ミルクの混合物)が捧げられた。(『ギリシア・ローマ神話辞典』)
この復讐の三女神をもっと上品にしたものが、つまりトネリコのニンフである。トネリコの木は、もともと雨乞いの儀式に用いられ、聖王ウーラノスがそれにささげられた。スカンディナヴィアでは、トネリコはありとあらゆる魔法を行う樹木とされ、たとえば運命をつかさどる三人の女神ノルンたちはこの木の下で正義の裁きをとり行ったが、それは主神オーディンが自分こそ人類の父であると主張したときに、この木を魔法の馬としたからであった。ギリシアでもリビアでも、魔術によって最初に雨を降らせたのは女性だったにちがいない。(グレイヴズ、p.60)