プロフェッショナルの味

写真 今回は、メーカーの職人さんにお聞きしたことを含めて、京都のソース事情に触れてみようと思います。 メーカーが、職人と共に一様ではない季節を経験し、長年にわたって語り伝えられるノウハウは、やがて“ここはこだわる”といった信念となってソース造りに生かされます。
写真はソースの原材料の一部で、玉ねぎやにんじんのペースト状にされたものです。メーカーさんに「野菜もすべて京都産にこだわったソースは如何でしょう?」 とお尋ねしましたところ、「広い意味で安定した商品をお届けすることが大切だと考えている。」と返答くださいました。テレビ番組で 『究極のソース造りにチャレンジ!』といった一夜限りの企画ならまだしも、数十年といったスパンで営業をされる店舗さん、ごひいきくださるお客さんにとって、 高価格化や原材料のばらつき(野菜の甘みや熟し加減・入荷量が安定しないもの等々)に起因する味のばらつきはメーカーとして扱い難いものいうことです。

有機野菜にこだわったソース造り

JASマーク 近年、様々な方面に見受けられる健康指向とは別に、以前から有機野菜にこだわったソース造りに取り組んでおられるメーカーが在ります。 スーパーなどで「有機○○を使用」と書かれた商品はたくさん存在しますが、いずれの商品も、販売に至るまでのハードルの高さは相当なものであったと思われます。 なぜ、そう思うのかを記しますと


〓 下記は本格的にソースを造る以前の《 原材料の段階 》でのお話です 〓

消費者が一目でオーガニック(有機栽培)農産物であるかどうかを見分けられるようにつけられるのが、こちらのオーガニック(有機栽培)JASマークです。 これを表示できる基本的な条件として、


■ 農薬や化学肥料は原則として使用しないこと。


■ 種まきまたは植え付けの時点からさかのぼり2年以上(多年生植物にあっては、最初の収穫前3年以上)、禁止されている農薬や化学肥料を使用していない水田や畑で栽培されていること。 単にその年だけが無農薬・無化学肥料による生産であってもその農産物はオーガニック(有機栽培)としては認められないのです。


■ 農産物の生産者は、以上の要件を満たし、生産から出荷までの生産工程管理・各付数量などの記録を作成し、その証拠書類(伝票など)は3年以上保持すること。


個人的にいくらがんばっても、隣のほ場からの農薬や化学肥料の飛散・混入があったのでは、オーガニック(有機栽培)農産物とはいえないのです。 関心のない方々には目にも留まらない表示かも知れませんが、オーガニック○○、有機○○と表記するにあたっては、原材料の段階で、すでに想像を超えた苦労があるのです。

ソース造りの日々

仕込み中のソース 釜で炊き上がったソースは、(写真は1.8L×1500本分)熟成期間を経るために仕込み場から部屋を移動させます。その際にポンプを利用することが 多いのですが、 釜からの汲み上げにポンプを利用せず、手作業で丁寧に汲み上げるメーカーがあります。ポンプを利用する時の圧力が、ソースを傷つけ、 風味を損なうからだそうです。

写真はウスターソースで、 よく見ると表面にうっすらと膜のようなものが張っています。 点々と浮かんで見えるのはトウガラシで、膜はそのトウガラシ の油分に由来します。このトウガラシの油分ひとつを見ても、毎回分量は異なり味に影響するのです。 前述のポンプの話にしましても、 トウガラシの油の話にしましてもそうですが、実に書ききれない程多くの事が相互に関係して、ソースメーカーの味は成立しているのです。

〓 最後に、ソース造りの職人として40年以上の方のお話から 〓


「 この仕事に就いて何年にもなりますが、現在でも常に完璧なソースというものはありません。自問の日々です。」


「 メーカーには各種ソースに関するレシピがありますが、何々を○グラムという風に数値だけ 合せれば良いかといいますと必ずしもそうではないということです。 香辛料の保存状態や火の入れ具合、天候による微妙な影響・・・  毎回数え切れない細かな注意点があり、どのポイントも味に影響します。」


「 言わば、長年培った経験に基づく日々のソース造りであると言わせていただきましょうか。一般の方からすれば同じに見えるソースでも、職人の目線では微妙に 異なるのです。」


甘くも辛くも感じられる京都のソース事情・・・ 職人さんの言葉には、経験と自信に裏づけされた、揺るぎない信念が感じられませんか?