出版ニュース連載コラム(全24回)2002年1月〜2003年12月 

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    「ブックストリート:書店」第03回 2002/02/中旬号

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 オンライン書店界の現状は、ごく少数の大型サイトが莫大な経費をかけて競っている
総合部門と、多数の極小サイトがごちゃごちゃと存在するスキマ部門の二極に完全にわ
かれています。ネット上の「和書新刊」という世界には、中央も地方もありませんから、
地べたのリアル書店界のように、県で一番とか町で一番というような中間形態はありえ
ません。そのあたりでただひとつ有望そうなのは、最寄りの書店やコンビニなどで受け
取り可能な、送料不要のサイトですが、いまのところそれほど繁盛しているようではあ
りません。しかし、宅配との相性がよくない、単身者や共働き家庭などには便利なシス
テムと思えますから、都市部ではこれから伸びる余地があるでしょう。
 大型サイトの競争は、まったく人ごとですから、見物していてもなかなか面白いもの
ですが、どうやら紀伊国屋、ブックサービス、アマゾンの三強体制が固まりつつあるよ
うです。再販制度の廃止でもない限り、しばらくは大きな変動はなさそうな気がします
が、なにしろ外野のいうことですからあまりあてにはなりません。
 極小サイトについてはスキマというよりも、専門サイトというほうがカッコはいいか
もしれませんが、専門書店というのは古書店でないと不可能な仕事です。いかなる分野
であっても、専門というからには、和書と洋書のそれぞれ新本と古本、それに加えてパ
ンフやチラシや肉筆物、さらにはグッズ類まで扱わねば成立しません。したがって新刊
書店がネットで本を売ろうとすると、大型書店と専門書店のスキマを狙うしかないわけ
です。
 二年ほど前、ごく気軽に仮オープンした、うちの店のサイトはもちろん典型的なスキ
マ狙いですが、版元ドット・コムの沢辺センセに「(前略)ウェブサイトといってもデー
タベースも何もない。ただの商品目録の羅列みたいな、一番原始的な、本当に素人が作っ
たというウェブサイトだ。(中略)。なにやら立派なシステムが必要なのではなくて、三
月書房のあのボロボロのウェブサイトでも、その書店のムード、イロ、営業方針を反映
しているものであればインターネットを活かすことができるんだと思う。(後略)」と評
されたとおりのお粗末なものです。それでも不思議なことに、伸び率こそ落ちつつあり
ますが、まだいまのところ売上は右肩上がりを続けています。とはいえ現状は、一ヶ月
に100件強の販売が成立して、その合計金額が五〇万円強というところですから、た
いして自慢できるようなものではありませんが、経費といえば荷造り用資材と送料のサ
ービス分が少々だけですから、まちがいなく黒字です。
 いま、うちのサイトでよく売れるているのは、大型総合サイトでは買いにくい本ばか
りです。たとえば短歌関係や人智学関係は自主刊行物が多く、ネット以前から通販でも
よく売れていました。ネットでも最初はそのあたりから通販をはじめたのですが、現在
ではそれらよりも、「最近消えた出版社の本」とか、「他店ではあまり見かけない本」
が人気を集めています。消えた出版社の代表は、前回でも紹介したペヨトル工房と小沢
書店ですが、ほかにリブロポート、トレヴィル、博品社、京都書院などの本がよく売れ
ています。また、他店であまり見かけない本は、猫々堂の吉本隆明資料集やまんだらけ
出版部の直販品のような非流通本が中心ですが、黒色戦線社とか幻堂などのように、地
方小扱いで流通はしているものの、わざわざ在庫している書店が少ない出版社の本もよ
く売れています。
 地べたの店ではスキマ狙いの本が売れるとはいっても、せいぜい全体の一割か二割く
らいでしかありません。しかしネットではスキマ本以外はまず売れませんから、個々の
スキマ本の売上は、ネットと地べたで五分五分か、むしろネットのほうが多いくらいに
なっています。そのため以前だと数冊しか売れそうになくて躊躇していたような本でも、
五冊一〇冊とまとまった冊数を仕入れられるようになりました。そのおかげで、地べた
の店の棚も以前より充実してきた感があります。これはサイトの仮オープン時には、まっ
たく予期していなかった、ありがたい相乗効果でした。今後も何が専門ということでな
しに、おいしそうなスキマを見つけることに専念したいと考えています。
     [2002/02/20記  (c)SISIDO,Tatuo])
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