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今年から「日本書籍総目録」は印刷物としては刊行されなくなって、CD−ROM版
のみが「出版年鑑」に付属するかたちで出版されています。しかし、これも最新版が書
協のホームページ(Books.or.jp)で逐次更新されつつ無料公開されていますから、書店
にとっては、もはや必需品ではなくなってしまいました。しかし、1970年代末の刊
行以来、この「日本書籍総目録」がわれわれ書店にとって、いかに有用な道具であった
かは、いくら強調してもしすぎではないでしょう。
いま思えばこの70年代というのは、出版業界にも大きな変化が起きた時代でした。
出版点数の増加に伴って数百坪以上の大型書店が珍しくなくなり、コミックなどの大量
生産大量販売も目立つようになりましたが、その一方では地方小出版流通センターの発
足や、宅配便の急成長があって、限定された読者のための、多品種少量販売の可能性も
また拡大しました。そしてこの「総目録」は客注を中心とする多品種少量販売のために
は、必要欠くべからざる道具として、以前から待ち望まれていたものでした。
思い出すのもうんざりしますが、この「総目録」が誕生するまでは、出版物を検索し
ようと思えば、不十分な分野別図書目録が少々と、各出版社の図書目録だけが頼りでし
た。さらに調べる必要がある場合には、図書館に行って過去の出版年鑑や書誌目録類を
引っ繰り返してみるしかなく、苦労してリストアップした書籍も、在庫があるかどうか
はいちいち出版社に問い合わせてみないとわかりませんでした。FAXはまだ普及して
いませんでしたし、市外通話は電々公社の独占時代で莫大な電話代がかかりましたから、
もっぱら郵便で問い合わせをしていたものです。それでも何とかなっていたのは、年間
の出版点数が60年代は約1万点超、70年代始めでもせいぜい2万点超にすぎなかっ
たからでしょう。
うちの店も「総目録」が刊行されるとすぐに購入して使いまくったものですが、とく
に著者別の索引は過去の埋もれた本を掘り起こすのに絶大な威力があり、店の棚の充実
にもたいへんに役にたちました。このころは出版社にもまだ余裕があったのか、50年
代の本が旧定価のままで残っていることも少なくなく、安くて珍しい本をいろいろ見つ
け、お客に喜ばれつつ売っていた良き記憶があります。
しかしこの「総目録」を手放しでありがっていたのは、せいぜい最初の10年くらい
のものだったでしょう。検索が画期的に便利になったとはいえ、著者名と書名の50音
順のみで、キーワード検索は不可能でした。それに在庫状況はあくまでも発行の前年末
現在のものですから、最短でも半年の遅れがありました。これらの問題は取次店のオン
ライン検索システムの普及によって、技術的にはほぼ解決したのですが、費用の点で導
入が不可能だったわれわれ小書店と、可能だった大書店との情報格差が決定的になって
しまいました。このように時代遅れになりつつあった「総目録」を補うために、うちの
店では電子ブックの「本の探偵」を併用していましたが、これで取り戻せた差はごくわ
ずかなものでした。
この情けない情報格差を、あっという間に、それもただ同然でとっぱらってくれたの
が、90年代末のインターネットの爆発的な普及であったことはいうまでもありません。
うちの店でもADSLの常時接続によって、費用の心配をすることなく、気が済むまで
検索できるようになっています。現在、検索には主として日販の「本やタウン」を、毎
日の新刊チェックには大阪屋の「ごんた堂」を利用していますが、どちらも軽くて早く
て便利なことは、無料で使用しているのが申し訳ないくらいのものです。あとは出版社
の在庫状況や重版予定が、リアルタイムでわかるようになればいいのですが、その問題
も書店向けの受注サイトを開設した出版社に関してはすでに解決されています。
この受注サイトは小学館グループや角川グループ、そして講談社なども独自に開設し
ておられますが、とくにこれから発展しそうなのが、文藝春秋や新潮社などが参加して
いるブック・オーダー・ネットです。ここには筑摩書房や朝日新聞社も参加を表明して
いますが、今後さらに参加出版社が増加するようなら、いずれは出版流通の世界を大き
く変えることになるでしょう。この問題についてはいずれ稿を改めて考えてみたいと思
います。
[2002/06/20記 (c)SISIDO,Tatuo]
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