出版ニュース連載コラム(全24回)2002年1月〜2003年12月 

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   「ブックストリート:書店」第06回 2002/06/中旬号

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 われわれ出版業界は、ブックオフなどのいわゆる「新古本店」を目の敵にしているよ
うですが、あまりにも内向きの一方的な意見ばかりのような気がしてなりません。「万
引き問題」を別にすれば、あれだけ消費者に支持され発展している業態を、こちらの都
合ばかりで非難していても、消費者の理解は得られないでしょう。
 まずはじめに確認しておく必要があることは、いかに店舗の規模が大きく、その主力
商品が刊行から間がないものに片寄ってはいても、法律上は従来の古書店と何ら変わり
がないということです。そもそも、新刊書店と古書店は対立関係にはなく、補完関係と
して長年にわたって共存してきました。消費者は新本よりも割安な古本を買ったり、高
価な新刊書を買うために蔵書の一部を売り払ったりして、限りある書籍購入費をやりく
りしてきました。また、絶版や品切れで新本を購入できない場合は、古書を探すしかな
いことはいうまでもありません。
 しかし1980年代に入ったころから、新刊書店と古書店のこの補完関係にほころび
が目立ち始めました。これは出版点数が大幅に増加したことと、新刊書の価格上昇率が
諸物価に比べて低かったことが主因です。この状況に、新刊書店業界では店舗面積を大
々的に拡張することによって対応しましたが、古書店業界では主として専門書店化する
ことによって対応されました。専門書店では稀覯本や文献資料、あるいはマニアがつい
ている趣味的な本以外はほとんど扱わなくなり、専門化することができなかった「街の
古本屋」さんの大部分は廃業されました。その結果、行き場がなくなった膨大な一般書
の古本の受け皿として発生したのが「新古本店」であり、これは必然的なことだったと
いえるでしょう。
 ようするに、「新古本店」とは、ブックオフの社長がどこかで語っていたように、再
販制と委託制によって、新刊書が過剰生産されているからこそ成り立っている業態です。
それゆえに、「新古本店」を批判することは、そのまま裏返せば新刊業界の現状批判に
直結するということを忘れてはなりません。それにリサイクルとか資源保護という意味
においても、故紙回収業者が引き取ってくれないような本や雑誌を、ただ同然とはいえ
ども引き取ってくれる存在を消費者が歓迎していることは間違いありません。
 「新古本店」のおかげでコミックなどの新刊本の売上が落ちているといわれています
が、もしそういう因果関係が確かだとしても、これはゲームソフトの中古販売に対する
最近の最高裁の判例によるまでもなく許容すべきことです。コピー本とかネットでの無
断配布は違法ですし、「漫画喫茶」も明らかに問題ですが、古物商の許可を受けた業者
が、法に則って古本を売買することに問題があるわけはなく、この取引になんらかの制
限を望むことは、消費者の理解を絶対に得られないでしょう。とくに、「新古本店」の
最有力な顧客層である青少年消費者は、小学生のころから、ゲームソフト屋や中古CD
店での売買に習熟していて、それ以前の世代よりも、はるかに「賢い」消費者であり、
彼らがこれからの消費者の主流になることだけは忘れてはなりません。
 「万引き問題」についていうならば、万引きはいうまでもなく犯罪行為であり、盗品
と知りつつ買い入れるならばさらに重大な犯罪行為であることはいうまでもありません。
しかし、一部の論調に見られるように、万引き品の買い入れがなければ経営が成り立た
ないかのごときもの言いはどうでしょうか。「新古本店」を“故買屋”呼ばわりしたり、
“万引き幇助”罪だとか言う前に、まず取り放題の様相がある多くの新刊書店の現状の
方をなんとかしないと、それこそ“万引き誘発”罪といわれかねません。もちろん書店
の側に、店員を増やしたり、万引き防止機器を導入したり、警備員を雇ったりする費用
がないことはわかりきっていますが、それはあくまでも業界内の事情による内輪だけの
同意に過ぎず、世間一般の消費者に堂々と主張できるようなことではありません。出版
業界においては、「万引き」の被害は書店だけが被る一方で、取次や出版社にとっては
それも売上になるという相反する条件があって、なかなか本格的な万引き対策がとれま
せんでした。しかし、定価を値上げしてでも、業界全体で公平に費用を負担して、抜本
的な対策をとらないかぎりは、消費者に対してはもちろん、「新古本店」に対しても、
大きな口がたたけないのではないでしょうか。
                                       [2002/05/20記  (c)SISIDO,Tatuo]
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