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日本国の経済は破綻寸前といわれつつ、政府はただただ先送りを繰り返しているよう
にしか見えません。健保や年金や消費税等の負担増だけは確実のようですが、その増収
分はさらなる先送り政策に注ぎ込まれるだけでしょう。国債の発行残高は増える一方で
すが、その返済にはハイパーインフレに期待するしかないといわれています。まさに
「閉塞」状況というしかありませんが、それでもわが出版業界は「再販制」のおかげで、
他業界に比べるとデフレにはやや抵抗力があるようですから、これでもまだましなほう
なのかもしれません。この「再販制」は値引き競争による消耗戦を封じているばかりで
はなく、在庫商品の帳簿上の価値が減少するのも防いでいます。もし「再販制」がなく
なり、在庫商品を時価評価することになれば、潜在している不良債権が一挙に表面化し
て、多くの書店や出版社が破綻してしまうことでしょう。
うちの店は昨年も何とかほぼ前年並みの売り上げを何とか確保できたようでした。五
〇年間お世話になった鈴木書店が一昨年暮れに破綻し、当初はどうなることかと心配し
ましたが、一部の出版社との取引こそ不便にはなったものの、全体としてはさほどダメ
ージを受けずにすみました。これは日販の流通体制がここ数年で目立って改善されたこ
とと、インターネットの発達で書誌類の検索や、出版社への発注が手軽にできるように
なってきたこと、そしてまったく期待していなかったネット通販が妙に好調なことなど
のおかげです。
ひとつ問題なのが書籍の返品率の異常な低下です。常備抜きだと前年までは20%強
だったのが12%台にまで下がってしまいました。意識して減らそうと努力したわけで
はまったくありませんから、これはどう考えても低すぎます。なぜなら、こんなに低い
ということは、売れるかどうかはわからないけれど、一度は仕入れてみるべきだった本
の仕入れが減っていて、販売機会をみすみす逃している可能性が高いからです。がんばっ
てあと5%位は返品率が上がるような仕入れをすれば、きっと売り上げも少しは増える
に違いありません。しかし、このように返品率が下がったのは、鈴木書店が消えたから
だけではなくて、日販の京都支店と西日本センターの店売がなくなり、現物を見てから
仕入れることができなくなったことも大きいようですから、そう簡単には増やせそうに
ありません。
店売で現物を目にすると、ついつい衝動買いならぬ衝動仕入れをしてしまいますが、
そのおかげで新たな売れ筋を発見できることもまれではありません。出版社や取次から
の情報や書評類やネット検索にだけ頼って仕入れていると、どうしても現物を見なくて
もわかるような本しか仕入れないことになりがちです。さりとて現在は辞退しているパ
ターン配本を受け入れると、どうしようもない見当違いの本ばかり入荷して、おそらく
その分は9割方返品することになってしまうでしょう。世間で言われているような30
%とか40%とかの返品率は異常ですが、新刊は返品条件付きがふつうなのですから、
ある程度は大胆に仕入れるようにしないと、品揃えが保守的になってしまって、縮小再
生産に陥るおそれがあります。標語風にいうならば「仕入れは大胆に、返品は細心に」
が重要なポイントなのですが、返品率を上げるためにはどうすればよかろうかというの
が今年の課題です。
それでも前年並みの売り上げを確保できたのは、ここ数年急速に増加しつつある、直
仕入れが順調に伸びて10%を遙かに越えるまでになっているからです。参考までに昨
年の出版社別の総売上冊数の上位10社(カッコ内は一昨年の順位)を載せておきます
が、「正常ルート」からははずれている「消えた出版社」が大健闘していることがおわ
かりいただけるでしょう。その他の直仕入れも順調に増加しています。そのあたりのこ
とについては、うちの店のホームページを覗いていただけばおわかりいただけるはずで
す。
01(01)岩波書店
02(02)筑摩書房
03(03)講談社
04(07)小沢書店
05(05)新潮社
06(04)ペヨトル工房
07(06)平凡社
08(08)中央公論新社
09(09)河出書房
10(−−)京都書院
[2003/01/21記 (c)SISIDO,Tatuo]
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