京都 伏見稲荷大社の門前で売られる伏見人形や大津絵に見る民衆の文化
伏見人形と大津絵 〔土人形と泥絵の具〕
伏見人形
〜 素朴な民衆の文化 〜
むかしは、お寺や神社に参拝することが庶民の娯楽のひとつでした。そんななか、数十件もの人形屋が並び、稲荷詣のお土産として
伏見人形 は売られてきました。日本最古の土人形で、全国にある土人形の原型といわれています。
深草人形、稲荷人形とも呼ばれ、門前で江戸時代の始め頃からつくられてきました。個々のいわれも数多く、興味深いものです。
饅頭食い
子供が二つに割った饅頭を両手に持った立像。
あまり仲良くない両親のもと「お父さんかお母さんのどっちが好き?」 と問い詰められた際、
饅頭を二つに割ってどちらが美味しいかと逆に問いかけたという話をもとにつくられたものです。
成田屋人形
歌舞伎十八番物の「助六」「矢の根」「暫」の三種が一組となっているもので、七代目 市川団十郎がひさしぶりに江戸へ帰るのが叶ったことから
つくられたものだそうです。
今年(平成16年)の海老蔵の襲名披露に際しては、記念に伏見人形で百体ほど造り、配られることを関係者の方がお話し下さいました。
ちょろけん
古くは、京都の町に毎年正月登場した人気者「ちょろ」
門付け(間口に立って音曲を奏したり、舞を舞ってお金などをもらって歩くこと)からつくられたものです。
大津絵
あくまでも個人的な印象ですが、伏見人形を見た時に大津絵が浮かびました。江戸時代に近江の国 (滋賀県)大津の宿場町で 旅人相手に売られた民画なのですが、大谷絵 、追分絵(元禄時代初期から、東海道と伏見街道の分岐点に あたる現在の大津市追分町)とも呼ばれ、色もおおよそ決まった数で描かれており、流れる様な線で描かれているのが特徴的と言えます。 ひとくちに大津絵といっても 仏画、風刺画、武者絵、美人画、鳥獣画 などがあるようです。
槍持奴
大津絵十種のひとつ。 道中安全の護符です。
大名行列の先頭を威勢よく槍を振って歩く姿が描かれており、大名の威厳を借りて威張っていることを意味しています。
提灯と釣鐘
天秤棒に、提灯と釣鐘を下げているのですが・・・
よく見ると重いはずの釣鐘が上になっており、軽いはずの提灯と逆さまに描かれています。
本来、重要視すべきことを軽んじてはいないか? ものごとの筋道が反対になった世の中の様子を風刺したものです。
雷公の太鼓釣り
大津絵十種のひとつ。雷除けに効く護符です。
怖いイメージの雷が、太鼓を落としてそれを釣り上げようとしているこっけいな姿を描いたものです。
大津絵の特徴のひとつに「雷」と「鬼」の区別がないことが挙げられます。