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5月になって
新緑の五月,涼しい日は次第に少なくなり暑さを感じる季節となってきた。今年,5月5日の京都深草の藤森祭りを見る機会があった。
昔の賑やかさはなくなって来ており.時代の移り変わりを感じる思いである。
子供の頃,表の街道が広く感じていたのが,全国的に新しい広い道路が作られるようになってから,昔のままの道路幅では確かに狭い。
祭りの催しものが通る街道は自動車は一方通行に制限されている。
他で見る京都の三大祭りが次第に盛大になるにつれて,地域の祭りは昔と変わりないか,或いは縮小傾向にあるようで.,仕方のないことであろう。
住民達の氏子意識の少なくなってきているのも時代の流れであろう。
一昨年は,藤森神社境内で行われている駈け馬行事を見物した。これは昔と全く変わりない盛大さを感じた。
京都 藤森神社 駈馬神事(1) (2)(動画) 昭和11年の駈け馬及び武者行列・神輿(動画)
昭和11年に撮影されている駈け馬 武者行列 神輿は大変盛大で有ることが映像を通しても想像出来る。
大和街道(師団街道・筋違橋通り)の道路がまだ舗装されていない頃,駈け馬は神社境内でなく.街道筋で催されていたと親から聞いている。
だが映像の駈け馬では町並みの家屋が映っていないので駈け馬はこの時の昭和11年には既に境内で行われていた様子である。
藤森神社祭りにとって,大変貴重な映像であろう。神社社殿の左上方に掲げられていた額入りの祭りの写真に叔父の稚児姿とそれに付き添う若い頃の父の姿,
その写真入りの額ががなくなってしまっており大変残念である。
以下は-インタ-ネットよりの引用-
藤森神社(公式ホームへーシ゛)(ふじのもりじんじゃ)は、京都市伏見区にある神社である。旧社格は府社。
5月5日に行われる駆馬神事や、菖蒲の節句の発祥地として名高い。6月から7月にかけて紫陽花園が公開され、3,500株にもおよぶ紫陽花が見もの。
本殿(中座)に主祭神・素盞鳴命と別雷命・日本武命・応神天皇・神功皇后・武内宿禰・仁徳天皇、
東殿(東座)に天武天皇・崇道尽敬皇帝(舎人親王)、
西殿(西座)に崇道天皇(早良親王)・伊予親王・井上内親王を祀る。
創建年代や祭神には諸説ある。社伝では、神功皇后3年(203年)、三韓征伐から凱旋した神功皇后が、
山城国・深草の里の藤森に纛旗(とうき、いくさ旗)を立て、兵具を納め、塚を作り、祭祀を行ったのが当社の発祥であるとしている。
-この考え方には歴史学的には矛盾を認める-
当初の祭神は、現在本殿に祀られる7座であった。藤森の地は現在の伏見稲荷大社の社地にあった。
その地に稲荷神が祀られることになったために、当社は現在地に遷座した。
そのため、伏見稲荷大社周辺の住民は現在でも藤森神社の氏子である。
なお、現在地は元は真幡寸神社(現 城南宮)の社地であり、この際に真幡寸神社も現在地(現 城南宮)に遷座した。
東殿は、天平宝字3年(759年)に藤尾の地(藤尾は現在の伏見稲荷の地である)に崇道尽敬皇帝(舎人親王)を祀る神社として創建されたもので、
元は藤尾社と称していた。永享10年(1438年)に当社に合祀された。
西殿は、延暦19年(800年)に早良親王を祀る神社として深草塚本の地に創建され、文明2年(1470年)に当社に合祀された。
深草塚本の地に小さな祠が現在も残っている。
早良親王は生前当社を崇敬していた。陸奥で反乱が起こったとき、早良親王は征討将軍となり当社に詣でて戦勝を祈願した。
その出陣の日が5月5日で、これが現在の駆馬神事の元である。
端午の節句- 五月五日の藤森神社から起因する菖蒲の節句の発祥説話も歴史的には認められないし駈け馬神事の発祥の説話も歴史的に疑問。
だが説話として大変理に合った話である。
重要文化財
駆馬や菖蒲→尚武・勝負の連想、武神が多く祀られていること、また明治時代から第二次世界大戦終了まで周辺が軍用地であったことから、
馬と武運の神社として信仰を集めた。
都名所図会 藤社のやしろ ○注意セキュリティの警告の所で「いいえ」を押さないと画像は出ないようです
現在は馬と勝負事の神社として競馬関係者や競馬ファンにとってなじみの神社である。
また舎人親王を祀ることから学問、特に受験での勝運をもたらす神社とされる。
神宮の森は東隣にある京都教育大学の豊かな樹木群に連なっており、一体化した森のようになっている。
以上藤森神社のことを書いてきたが,国内の政局は鳩山内閣が倒れ菅内閣に移り,九州の宮崎県での口蹄疫の感染は拡大してきて,再燃してきている。
世界情勢はイラク アフガンのことも余り変化はないようで北朝鮮情勢は緊迫しているが,あまり報道されることが少ない。
ギリシャ経済の3割が税収を生まないヤミとされる
前政権が隠していた巨額の財政赤字がたたって、
欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に
年5兆円ほどの支援を仰ぐはめになった
平成22年5月1日の天声人語よりの引用
ギリシャの名物に、肉を串で焼いたスブラキがある。
20年ほど前、昼下がりのアテネでスブラキ屋をのぞくと、店の子どもがひと串つまんでいた。
エーゲ海を渡る風のような、まったりしたいい景色だった
▼坊やのおやつは、税法でいう自家消費にあたる。
かの国でも売り上げとみなされるはずだが、黙々と串を焼くおやじさんに記帳の気配はなかった。
第一そんな杓子(しゃくし)定規は、おおらかな南欧の空気にそぐわない
▼だが、のんきなことも言っていられなくなった。
なにしろ、ギリシャ経済の3割が税収を生まないヤミとされる。
前政権が隠していた巨額の財政赤字がたたって、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に年5兆円ほどの支援を仰ぐはめになった
▼労働者の25%が公務員という巨大政府の下、国庫もおおらかで、入り口は甘く出口は緩い。
IMFが福祉の切り下げや増税をむげに迫れば、再び街頭が荒れよう。
されど市場は待ってくれない。
ユーロを使う国々は一蓮托生(いちれんたくしょう)だから、一国の信用不安はたちまち国境を越え、欧州の経済を撃つ
▼ギリシャ神話には、色んな怪物が出てくる。
甘美な歌で船乗りを惑わせ、難破させるのは、女の顔を持つ鳥「セイレン」。
警報に使うサイレンの語源である。
ユーロという巨船の上を、鳥女の群れが乱舞している
▼わが空に鳴り響くサイレンも、半端な音ではない。
ギリシャは消費税にあたる税率を19%から21%に上げたばかりだが、日本は5%を続ける。
ユーロ圏でなくてよかったと思うようでは、すでに難破コースで
多くのギリシャのの国債が外国人 ギリシャ以外の人たちで買い占められているからこのような状態に至ったとも
叉ギリシャ人は日本人のように勤勉な民族でな,政府が浪費するにいたりこのような状態になったとの説もある。
少なくとも借金を抱える日本国としてこのような状態にならないことを願う。
京都には名のある庭が数多(あまた)ある
平成22年5月2日の天声人語よりの引用
京都には名のある庭が数多(あまた)ある。
その京に暮らした詩人の天野忠が語ったそうだ。
「庭の良し悪(あ)しは、厠(かわや)の小窓からのぞき見すると、よお分かります。
庭が油断してますさかい」。
文学者の杉本秀太郎さんが著書『火用心(ひのようじん)』で回想している
▼たしかにどの庭も、人目を浴びる方向には体裁をつけている。
だが裏手からは素(す)の顔が見える。
油断しているから本性が表れる。
薄っぺらな造りか、本物の庭か。
詩人は庭へのまなざしを、人間観察に重ね合わせていたのだろう
▼英国のブラウン首相も、思わぬ「厠の小窓」から本性が割れたようだ。
選挙の遊説中、支持者の女性と移民問題で立ち話をした。
笑顔で応じたが、車に乗ってドアを閉めるや「頑迷な女だ」「あんなのと話させるな」。
毒づいたのを、外し忘れたピンマイクに拾われた
▼もともと口下手で愛想はよくない。
それゆえに誠実なイメージもあったが、国民は「正体見たり。
よお分かりました」といったところだろう。
「ブラウンの終わり」と報じた新聞もあるそうだ
▼この国で騎士道精神は尊い。
だが女性は、笑顔で別れた直後に、背後から一太刀浴びた思いだったろう。
「選挙中に政治家が犯した英国史上最悪の失言」と言う識者がいるのも頷(うなず)ける
▼自ら率いる労働党、それに保守党に加え、選挙では自由民主党に異例の勢いがある。
労働党は目下、一番の風下にあえいでいる。
伝統的な二大政党制が崩れるなら、失言は「歴史的」の冠を戴(いただ)くことになろう。
そのとき首相が恨むべきは、ピンマイクではなく己である。
何処で失言が暴露されるかわからない。天野忠が語ったそうだ。
「庭の良し悪(あ)しは、厠(かわや)の小窓からのぞき見すると、よお分かります。
庭が油断してますさかい」。油断は禁物だ。
沖縄には異なる「戦後」が流れていた
沖縄に基地を押しつけているのは米軍なのか
日本政府なのか
首相はあす沖縄入りするが、積年の悲願にどう応えるのだろうか
平成22年5月3日の天声人語よりの引用
沖縄本島の北端に辺戸(へど)岬はある。
3年前に他界した沖縄の作家船越義彰(ぎしょう)さんが、「辺戸岬にて」という詩を書いたのは54年前のことだ。
米軍占領下の沖縄では「島ぐるみ闘争」と呼ばれる反基地運動がうねっていた
▼だが声は届かない。
〈ニッポンの島影は手をのばせば届くところに浮かびながら/実に遠い手ごたえのない位置で無表情だ。
/画然と断ち切られた境界、海にも断層があるのか。
/北緯二八度線を超えて去来する風と雲の自由に/島は羨望(せんぼう)の眼をあげる〉
▼この年、経済白書は「もはや戦後ではない」とうたった。
本土には憲法9条に守られた平和もあった。
だが沖縄には異なる「戦後」が流れていた。
島の叫びがニッポンに届かぬ焦燥を、船越さんは言葉にとどめた
▼「辺戸岬にて」は長い詩だ。
その一言一句は、半世紀後のいまも本土の「無表情」を突いてくる。
沖縄に基地を押しつけているのは米軍なのか。
日本政府なのか。
それとも私たちなのか。
鳩山首相だけが苦悶(くもん)すればすむ話ではない
▼とはいえ首相にとっては、いよいよ5月の暦がめくられた。
普天間の決着を「必ず五月(さつき)晴れにしたい」と言うが、「五月闇」という季語もある。
陰暦5月の梅雨のころ、星も月も雲に閉ざされた深い闇のことである
▼10年ほど前に船越さんに会ったときを思い出す。
「詩を書いた当時の一番の羨望は平和憲法でした」と言い、「いまだに沖縄はカヤの外」だと嘆いていた。
首相はあす沖縄入りするが、積年の悲願にどう応えるのだろうか。
魔法の杖(つえ)はありそうもないが。
沖縄県の歴史
沖縄戦
沖縄基地問題(動画)
東京の小平市立小平第三小でタイムカプセルが開いた
開校100周年の1980年に校庭に埋めた
「あの頃」が掘り出され、大同窓会である。
平成22年5月4日の天声人語よりの引用
松ヤニなどが固まった琥珀(こはく)には、まれに虫を閉じ込めたものがある。
そんな写真集を繰りつつ、2匹のアリが連なる一枚に出会った。
後ろのが前の尻をくわえている。
数千万年の昔、樹脂に足を取られた仲間を救おうとして巻き添えになったらしい
▼抜け出そうと足を切るカトンボ、交尾中のハエなど、音もなく垂れる粘液に捕まった虫は多い。
「その時」を止めて伝える化石は天然の保管材。
見つけた時の感激は大きかろう
▼おととい、東京の小平市立小平第三小でタイムカプセルが開いた。
開校100周年の1980年に校庭に埋めた「あの頃」が掘り出され、大同窓会である。
同じ校歌を熱唱する親子に、流れた時を思った
▼作文には、おはじきやあやとりが「私たちの遊び」と紹介されていた。
息が長いのはドラえもんで、皆が描いている。
長くは残らないと案じたか、「テレビでやってる人気マンガです」との注釈もある
▼実行委員長の武俣(たけまた)建太さん(41)は「30年先など想像もできず、まさにドラえもんの世界でした」という。
武俣さんら6年生は林間学校の思い出を版画にした。
パジャマの女子3人が布団に寝転び、写真に納まる画があった。
作者は、案内状の届かぬ世界に去ったという。
歳月は時に悲しい
▼大阪万博の後、同じ中身のカプセル2個が埋められた。
一つは毎世紀末に開けては戻し、一つは万博の5千年後まで触らない。
それはそれで夢だが、通常の「賞味期限」はまあ50年、やはり当事者が開けてこそだと思った。
埋もれたままの琥珀は、何も語らない。
いつまでもタイムカプセルが開くことの出来る日本であってほしい
そもそも沖縄で安保を説く前に、
この島の重荷を米国に説くのが先ではないか
その上で、駐留米軍の見直しについて
話し合うべきではないのか
平成22年5月6日の天声人語よりの引用
井上靖が5月の曖昧(あいまい)さを随筆に書いている。
〈春の百花を咲き誇った饗宴(きょうえん)は終(おわ)ろうとし、
夏の烈(はげ)しい光線はまだ訪れて来ません……私は、春でも夏でもない、
どっちつかずのこの短い季節が好きです〉。
大作家の感性は、中ぶらりんを中庸の妙と受け止めた
▼どっちつかずの短い季節――。
今の鳩山首相には痛い言葉だろう。
春でも夏でもないこの時期に、普天間問題の期限を切ったのはご自身である。
あと4週。迷走の果てが失望では、政治責任という「烈しい光線」にさらされる
▼最低でも県外のはずが、遅すぎる訪問で「最低」にも及びませんとわびた首相。
県内移設に反対する9万人集会の後である。
次は「県外」を頼む徳之島の首長に会うという。
こちらも島を挙げての抗議の後だ
▼後手ばかりで、成算があるとは思えない。
どう動いても、手は尽くしたという言い訳が透ける。
そもそも沖縄で安保を説く前に、この島の重荷を米国に説くのが先ではないか。
その上で、駐留米軍の見直しについて話し合うべきではないのか
▼こんな時に本音を言い合うための「同盟」であろう。
能天気な八方美人は、八方ふさがりや八方破れにつながる。
曖昧に味があるのは四季の移ろいであって、外交のどっちつかずは危険この上ない
▼こどもの日は母に感謝する日でもある。
当然、首相も思いを新たにしよう。
命がけと言うなら、沖縄と徳之島の子どもたちのためにかけてほしい。
ゆめゆめ米国の代理人として、あてもなく南の島を訪ね歩くことなかれ。
それでは子どもの使いである。
長年に渡り一挙に解決できない歴史が刷り込まれてきている。
徐々にでも沖縄の人達が満足して暮らせる沖縄に向かってほしい。
日本はアメリカの半植民地であり沖縄はどう見ても自由にならない所からしてもまだ植民地である。
戦争が勃発すれば地球破滅型の大戦争しか考えられない。
アメリカ国民の中でも沖縄基地反対を叫んでいる人達がいるこを知り,アメリカの民主主義を感ずる
2月の小欄にて34歳で乳がんに倒れた女性を書いた
遺志である「樹木葬」の適地を探し歩き、
やっと地元に見つけましたと、ご両親のお便りにある
平成22年5月7日の天声人語よりの引用
近所のハナミズキは連休中に花の極みを迎えた。
街路樹には白が多いが、たまに薄紅の花をつける木を見る。
立夏を過ぎて緑まぶしい季節。
生まれくる白い命とすれ違い、記憶の中へと帰る薄紅のそれがある
▼2月の小欄にて34歳で乳がんに倒れた女性を書いた。
遺志である「樹木葬」の適地を探し歩き、やっと地元に見つけましたと、ご両親のお便りにある。
茨城県内で営まれた埋葬祭に参列した
▼どうした縁か、故人の姓名は漢字4字とも草木にかかわる。
ふさわしい新緑の中に50人ほどが集まった。
木を植える穴に、痛いほど白い遺骨。
夫に続いて皆が土を入れていく。
もうすぐ2歳の長男もシャベルを握ったが、あとは土いじりに興じていた
▼墓標の木を囲むのは、故人が望んだローズマリーだ。
南欧原産で地中海を望む丘に生えるからか、学名にあるロスマリヌスは「海のしずく」の意味という。
葉は香料になり、ほぼ四季を通して淡青の花をつける。花言葉は〈追憶〉と聞いた
▼人を思うと書いて、偲(しの)ぶ。
娘であり妻であり、母である人の面影は、可憐(かれん)な花や涼しげな香りが呼び戻すだろう。
彼女は宝飾デザイナーとして、乳がんと闘う「ピンクリボン運動」のピンバッジにも生きた証しを残した
▼若い人は若いまま、記憶の中で生きていく。
心から消える時が本当の死ともいう。
使った命を確かめる写真と、使い残した命を受け継ぐ木。
ともに愛(いと)しい人を消さぬ知恵である。
なるほど、漢字の縁と緑は双子のよう。
一面識もない方を、これほど近くに感じたことはない。
最近では変わった墓を見かけるようになってきている。
有事に問われるのは大小より強弱、そしてリーダーシップらしい。
平成22年5月8日の天声人語よりの引用
安心を与える大きな政府か、活力を生む小さなそれか。
国家像を語るのに避けて通れぬ設問だが、有事に問われるのは大小より強弱、そしてリーダーシップらしい。
そう教える出来事が続く
▼国の破産を防ぐため、ギリシャのパパンドレウ首相は全人格をかけて国民に我慢を説く役回りだ。
自国通貨が暴落して済んだ頃と違い、混乱はユーロを介して世界に飛び火する。
火元責任は大きい
▼ユーロ危機も追い風としたか、英国の総選挙で、一貫して欧州統合に冷ややかだった保守党が第1党に返り咲いた。
ただ、2党間の交代は「前にダメだった党」に託すこと。
有権者は過半数を与えなかった。
43歳のキャメロン党首に首相への目算はあるか
▼はるかに重苦しい決断を迫られそうなのは、韓国の李明博大統領だ。
黄海で哨戒艦が沈んだ原因が、魚雷攻撃である疑いが出てきた。
韓国の船を狙う国はいくつもない。
46人の殉職は、熱い心と冷めた頭の両方を大統領に求めている
▼イラクにアフガンと、米国は万年有事。
中国との二極時代を意識しながらも、オバマ大統領は核軍縮の長い道のりに踏み出した。
そこに、未曽有の海洋汚染とされるメキシコ湾の原油流出である。
神は越えられる試練しか与えないはずだが……
▼普天間は、米国にすれば数ある懸案の、小さめの一つだろう。
自らの言動でそれを大ごとにしてしまったわが首相。
どんな有事もリーダーの資質を試すが、「ひとり有事」とは情けない。
地球大乱の気配がにわかに漂う中、この人物に国を任せる間の悪さを思う。
世界中に拘わりすぎているアメリカが変に感ずる
そのアメリカに振り回されている日本も変である。
これが日米友好深化にになっているのかどうか大変疑問である。
夜空に浮かぶ月の生い立ちには諸説ある
きょうは母の日
平成22年5月9日の天声人語よりの引用
夜空に浮かぶ月の生い立ちには諸説ある。
地球と一緒に生まれた双子説。
他の星が地球に衝突してできた巨大衝突説。
別の所にあった月が地球の引力につかまった捕獲説……。
だが詩人まど・みちおさんの「説」は、ちょっと変わっている
▼「太陽と地球」という詩はこう始まる。
〈まだ 若かったころのこと/太陽は 気がつきました/わが子 地球について/ひとつだけ どうしても/知ることのできないことが あるのを〉
▼〈それは 地球の夜です/地球の夜に/どうか安らかな眠りがありますように/
どうか幸せな夢があふれますように/祈りをこめて 太陽は/地球の そばに/月を つかわしました〉。
地球の夜を見守るために、月はやさしい光を与えられたのだという。
100歳の詩人の軽やかな想像である
▼わが子である地球の寝顔を、夜ごとに月に聞く。
まどさんの描く太陽は父親よりも母親のイメージだ。
父が「背中」で語るなら、母は「まなざし」で包む。
きょうは母の日。
感謝とは、まなざしを送り返すことに他ならない
▼天に星あれば、地には花と言うべきか。
きのう、花屋の軒先は道までカーネーションがあふれていた。
寒さで生育が遅れたが、連休の好天で取り戻したそうだ。
母なる太陽から地球のお母さんたちへの、心づくしかもしれない
▼〈母さんと呼ばれ続けて母になる〉。
教育・心理カウンセラー富田富士也さんが、胸にしみる川柳を月刊誌に寄せていた。
何万遍となく呼ばせてもらったその人に、さて、きょうはどんな感謝を届けようか。
誰にとっても母は懐かしく尊く感ずるのが普通の社会だったが。
年明けから晩春の折々に咲く、
二十四種の花「二十四番花信風(にじゅうしばんかしんふう)」のたよりを
乗せて吹く風を言う。中国伝来の風雅な呼び名である
平成22年5月10日の天声人語よりの引用
立夏を過ぎ、風は「光る」から「薫る」になった。
風の名にも色々あるが、「二十四番花信風(にじゅうしばんかしんふう)」をご存じだろうか。
年明けから晩春の折々に咲く、二十四種の花のたよりを乗せて吹く風を言う。
中国伝来の風雅な呼び名である
▼その風はまず、梅の香をもたらす。
次には椿(つばき)や水仙、沈丁花(じんちょうげ)。
立春のころには辛夷(こぶし)、さらには梨花(りか)などと続く。
そして春の終わりには牡丹(ぼたん)の知らせを運んでくる。
その牡丹前線は、桜を追って東北あたりに入ったらしい。
今年は遅れ気味ですと、風ならぬ読者の女性からたよりを頂いた
▼東京はしばらく前が盛りで、名所の寺で眼福にあずかった。
ほぐれかけた蕾(つぼみ)も、盛りをすぎてゆらりと崩れた大輪も趣がある。
だが、何と言っても咲き極まった艶美(えんび)にはほれぼれする。
気品と富貴を備えた姿は「花の王」の名にふさわしい
▼〈牡丹花(か)は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ〉。
木下利玄の一首は、絶頂にぴたりと静止した美を見事にとらえている。
白も紅もいいが、紫黒(しこく)の花には神秘が匂(にお)う。
底の知れぬ深みをたたえて、陽光をはじいていた
▼花と言えば牡丹をさした中国では、唐の都の長安で大流行したそうだ。
名所はどこも大勢が繰り出した。
にぎわう光景を、大詩人の白居易は〈花開き花落つ二十日(にじゅうにち) 一城の人皆狂えるがごとし〉と歌っている
▼唐の皇帝玄宗は、その咲き姿を、寵愛(ちょうあい)した楊貴妃にたとえたと伝えられる。
傾国の花と言うべきか。
〈散りてのちおもかげに立つ牡丹かな〉蕪村。
この牡丹とは花か。
それとも人だろうか
中国では花と言えば牡丹を指すようである。
この頃に咲き誇る花だが
奈良長谷寺の牡丹(動画)は有名である。
捕鯨の町、和歌山県太地(たいじ)町の住民から、
全国平均の4倍の水銀が検出された
平成22年5月11日の天声人語よりの引用
ご先祖様にとって、浅瀬に迷い込んだ寄鯨(よりくじら)は浜の恵みだったらしい。
捕鯨が広まる江戸時代には料理や保存の技法も豊かになった。
天保年間の指南書「鯨肉調味方」は、約70の部位についてうまい食べ方を紹介している。
『鯨取り絵物語』(中園成生〈しげお〉・安永浩著、弦書房)に現代語訳がある
▼例えば吹腸(ふきわた)、すなわち肺は〈薄く切ったものに熱い湯をかけた後、三杯酢をつけて〉などと記す。
新鮮な鯨が揚がる地では、内臓まで完食していた。
この生物との因縁、浅からぬものを感じる
▼捕鯨の町、和歌山県太地(たいじ)町の住民から、全国平均の4倍の水銀が検出された。
国立水俣病総合研究センターが全町民の3割の毛髪を調べたという。
鯨やイルカを最近食べた人は濃度も高めだった
▼海中の水銀は、プランクトンから小魚へ、小魚を餌とする大きな魚へと濃縮されていく。
クジラやイルカには、魚の何倍もため込む種類がいる。
町民に中毒症状はないというが、世界保健機関(WHO)の安全基準を超えた人が43人いた
▼鯨やイルカを食べる習慣と水銀の「腐れ縁」が、大がかりな疫学調査で確かめられた形だ。
鯨は食物連鎖の一大ターミナル。
その先にある人間という終着駅には、滋養も毒も流れ着く。
この限りで、反捕鯨団体の警告には理がある
▼古式捕鯨の技が紀州太地で生まれて400年あまり。
風土病を疑わせる記録はなく、恐らくは許容範囲の食べ方なのだろう。
だが、用心のため調査を続けてほしい。
体を賭してまで食すべき美味などない。
もちろん、守るべき食文化も。
戦後の食糧難の時に鯨肉をよく食べた記憶がある。
だが現在は鯨肉は見ない。
水銀が濃厚に検出されるとは驚きである。
民主党は元体操選手や落語家、女優、歌手などを担ぐ。
自民党も元プロ野球の堀内恒夫さんらを立て
バラエティー番組ができそうな顔ぶれである
平成22年5月12日の天声人語よりの引用
「地球を覆うほどの愛で頑張りたい」。
満面の笑みで、これを照れずに言える人は少ない。
そこらを買われたか、柔道の谷亮子さんが民主党から参院選に出馬する。
「ついで」にできるはずがない五輪と国政の掛け持ち。
どちらに打ち込む人も心穏やかではあるまい
▼民主党は元体操選手や落語家、女優、歌手などを担ぐ。
自民党も元プロ野球の堀内恒夫さんらを立て、読売巨人軍の後輩中畑清さんは「たちあがれ日本」から出るという
▼バラエティー番組ができそうな顔ぶれである。
一つ道で技や芸を磨き、名を遂げた皆さんは、己の経験を世のためにと願うのだろう。
ただ、その手だてが講演や執筆ではなく、議員バッジでなければならぬ理由を知りたい
▼自民を見限り、民主に裏切られた数千万人が票を握りしめてさまよう夏。
谷さんの横の小沢幹事長が「百万、千万の味方を得たような」と語ったのは、もしや票数の話か。
ご本人の志がどうあれ、比例区の著名人は得票かさ上げの定石とされている
▼各界を見渡せば、谷さんのように何かを託したくなる好人物がいる。
しかし今ほど、政治家にプロの意識と手腕が必要な時はない。
国を立て直す情熱を政策に練り上げ、国民に説く知と技である。
さわやかな笑顔はオマケでいい
▼政界は解体修理の途にある。
有権者もひと皮むける好機なのに、またぞろ笑顔や知名度が決め手という選挙では痛い。
政権選択やマニフェストが鍛えたかに見えた政治も、たるむ時は早い。
とびきりのオマケを前に、「なんだかなあ」と考え込む。
知名度だけで候補を立てるとは国民を愚弄した話である。
東北新幹線が12月に青森市まで延びる。
平成22年5月13日の天声人語よりの引用
東京と青森を鉄路が結んだのは明治半ば、一昼夜の道程だった。
昭和の初め、東京帝大に入る太宰治は「文士になって女を描きたい」と残し、津軽を後にした。
幾多の青い志が同じ路(みち)をたどる
▼〈東京へ行きたい/と思いながら/自分の心臓の部分にそっと手をあててみるとその最初の動悸(どうき)なのか/
青森駅構内の機関車が一斉に汽笛をならす音なのか/ひどくけたたましい音がする〉。
寺山修司の詩「李庚順」の一節だ
▼ボクサーに憧(あこが)れた寺山だが、パンチではなく俳句の腕を携えて上京、早大に入った。
昭和末には、級友の紙吹雪が舞う青森駅を、日大に入る舞の海秀平さんが発(た)つ。
父に「ひと花咲かせてくる」。
夜行列車に揺られつつ、土俵への決意を新たにしたはずだ
▼東北新幹線が12月に青森市まで延びる。
来春から東京―新青森を走る新車両の名が「はやぶさ」と決まった。
2年後には国内最速の時速320キロで運転する。
上京する若者が闘志を燃やし、覚悟を決める旅も、とうとう3時間5分にまで縮まる
▼愛称の公募には、約15万件が寄せられた。
首位は、廃止された東北初の特急「はつかり」の襲名。
東京―熊本間を昨春まで走った寝台特急と同じ「はやぶさ」は7位だったが、
速さを売るなら初雁(はつかり)より隼(はやぶさ)だろうと、JR他社の快諾を得て命名された
▼新幹線は青函トンネルを抜け、2015年度には新函館(仮称)に至るという。
〈上野発の夜行列車おりた時から/青森駅は雪の中〉。
北国が近づくほどに、昭和の名曲「津軽海峡・冬景色」(動画)の寂寞(せきばく)がまた遠くなる。
東北新幹線が青森までさらに北海道にまでつながるのは2015年までかかるようだ。
将棋の元名人で、現役55年を誇る加藤一二三(ひふみ)さん(70)には、
ものごとへの「こだわり」を語る伝説が多い
平成22年5月14日の天声人語よりの引用
将棋の元名人で、現役55年を誇る加藤一二三(ひふみ)さん(70)には、ものごとへの「こだわり」を語る伝説が多い。
盤上では居飛車に棒銀、対局中のネクタイは長いがシャツの袖は短め、
暖房は静かな電気ストーブで、出前は昼夜ともうな重と決めている
▼タイトル戦を指す旅館で、音が気になると庭の人工滝を止めさせた話は有名だ。
その九段にして、こだわりの一手が通らぬこともある。
加藤さんが東京地裁立川支部に204万円の支払いを命じられた
▼争いの舞台は、棋士が住む庭つき集合住宅。
加藤さんは長らく玄関先や庭で、多い時には約20匹の野良猫に餌を与えてきた。
増やさぬ努力はしたものの、フンや鳴き声に悩む住民たちが裁判に訴え、餌やり中止と慰謝料の判決が下った
▼「迷惑」は加藤さんの鼻や耳にも届いていたろうが、「動物愛護だ」と一歩も引かなかった。
裁判所に禁じ手と断じられ、控訴するそうだ。
5年前の公式戦で反則をとがめられて以来の〈待った〉である
▼住居ひしめく大都市では、餌づけで野良猫が居着いたといったもめごとが絶えない。
飼い猫と野良猫の間に、皆でかわいがる「地域猫」がいる。
フンの処理や不妊手術まで、近隣で責任を分かち合う工夫だ
▼腹ぺこの子猫がにゃーと鳴けば、誰しもぐっとくる。かといって、
勝手に地域猫を始められても困るし、人になれた猫は虐待の的にもなりやすい。
判決文に「一代限りの命を尊重しながら、
時間をかけて野良猫の総数を減らしていく必要がある」とあった。
「捨てないで」と受け止めたい。
ご近所迷惑と常識的な行動 将棋名人とは別の次元のことのようだ。
詩人の谷川俊太郎さんが、
東京新聞で無名性へのあこがれを語っていた
言葉の巨人は名より作品を語り継いでほしいと願う。
平成22年5月15日の天声人語よりの引用
都心を歩くと、しばしば正体不明の大行列に出くわす。
先日も原宿で、女性ばかり数百人が並んでいた。
整理にあたる男女が首から下げた札が妙だった。
〈関係者〉である。
スタッフというのは何度か見たが、これは初めてだ
▼記者なら避けたい言い回しの一つに、「関係者によると」がある。
情報源を示すのにこれほど曖昧(あいまい)な表現はない。
行列にあれこれ指図する〈関係者〉も、どう関係しているのやら分からない。
どこかの店が雇うのだろうが、権限はあっても責任のない、便利な肩書にみえる
▼コンビニやファストフード店では普通、アルバイトは名札をつける。
言動にはおのずと責任が伴い、客も安心できる。
安全運転のため、車にドライバー名を掲げる宅配業者も多い
▼むろん「名無し」だから無責任とは限らない。
詩人の谷川俊太郎さんが、東京新聞で無名性へのあこがれを語っていた。
「万葉集でも『読み人知らず』なんてのが、たくさんあるわけじゃないですか。
ああいうふうに残っていくのが一番いい」
▼例として挙げたのは〈空をこえて/ラララ星のかなた〉で始まるテレビアニメ「鉄腕アトム」の主題歌だ。
〈科学の子〉が鮮烈なこの詞、谷川さんの作と知る人は博識の部類に入る
▼言葉の巨人は、名より作品を語り継いでほしいと願う。
広く長く口ずさまれた末に、「これ誰だっけ」と言われる幸せである。
黙々と良品を世に送る職人が味わうような、まじり気のない喜びであろう。
責任論を突き抜けて、有名を超える無名。
その高みを、小欄も目ざしたい。
谷川俊太郎が手塚治の「火の鳥」(動画)を脚色しているので見てみたがSFの世界のことで現実と余りにもかけ離れ
頭が混乱して何を教えようとしているかがわからない。
子供達に悪い影響を与えないかが心配だ。漫画家,詩人などは無責任をのぞんで゜いるのか。
いまは沖縄市になった旧コザ市は、面積の6割を米軍基地が占め、
島の縮図と言われた
その市長を4期16年つとめた大山朝常(ちょうじょう)さんの思い出を
平成22年5月16日の天声人語よりの引用
いまは沖縄市になった旧コザ市は、面積の6割を米軍基地が占め、島の縮図と言われた。
その市長を4期16年つとめた大山朝常(ちょうじょう)さんの思い出を1月の小欄に書いた。
本土復帰の日だったきのう、晩年の著書『沖縄独立宣言』を読み返してみた
▼副題には「ヤマト(日本)は帰るべき祖国ではなかった」とある。
大山さんは復帰運動を熱心に担った。
しかし悲願の復帰後、待っていたのは失望だった。
基地は残り、米軍がらみの犯罪や事故は後を絶たない。
「どこまで沖縄人を踏みつけにすれば気がすむのか」。
執筆のとき95歳だった故人の筆は激しい
▼米軍は戦後、島に君臨した。
住民の土地を「銃剣とブルドーザー」で奪い、政治に介入し、凶悪な犯罪もうやむやに葬った。
積もりに積もった怒りが爆発したのが、復帰前の「コザ暴動」である
▼5千人ともいう市民が、70台を超す米兵らの車や基地施設を焼き払った。
市長の大山さんは鎮圧に協力すべき立場だった。
だが民衆の怒りは痛いほどわかった。
身を裂かれる思いで、夜空を焦がす炎をにらみつけていたそうだ
▼「押しつけ憲法とか言ってますがね、沖縄はその憲法、押しつけてももらえなかった」と生前によく言っていた。
復帰の前も後も沖縄を米側に差し出すことで、本土は平和と繁栄をうたいあげてきた。
失望と不信が九十翁に「独立」を言わせたのだった
▼日米が相携える国益を言うなら、その「国」の中に、今こそしかと沖縄を抱き寄せるべきである。
首相の「愚直」になお一筋の期待をつなぐ価値はありや。
防人の詩(動画)
魚食熱の高まる中、南の海に台湾や中国の巻き網漁船が増えつつある。
平成22年5月17日の天声人語よりの引用
〈目には青葉山ほととぎす初鰹(がつお)〉。
江戸の俳人素堂(そどう)の名高い一句は「名人が危うきに遊んだ句」なのだという。
俳句には季語が入るが、普通は一句に一語で、二つあれば「季重なり」と言う。
初心者がうっかり誤ることが多い
▼ところが素堂のは「青葉」「ほととぎす」「初鰹」と三重奏である。
青葉を季語と見るかは異説もあるようだが、破格には違いない。
素人の作なら「俳句を知らんな」と一蹴(いっしゅう)されそうな句が、世に知られ、初夏の味を引き立てる絶妙の薬味になってきた
▼その名句に胃袋の鳴る季節だが、日本近海のカツオは近年どうも不漁らしい。
去年は前年の6割に落ち込んだ。
今年は持ち直しぎみだが、型は小さいという。
わけを探れば、やはり乱獲の二文字がちらつくようだ
▼カツオはこの時期、黒潮にのって北上してくる。
ところが魚食熱の高まる中、南の海に台湾や中国の巻き網漁船が増えつつある。
上流で取れば、いきおい下流の魚影は薄くなる。
それが原因ではないかと見られている
▼カツオよお前もか、と嘆く向きもおられよう。
「命の湧(わ)く海」と言うけれど、豊饒(ほうじょう)は無限ではない。
人はすでに海をかなり追いつめているという。
生み出す命が追いつかない。
このままでは、今世紀の半ばには海が空っぽになると警告する学者もいる
▼〈まな板に小判一枚初鰹〉其角(きかく)。
江戸の昔、初鰹はべらぼうな値を呼んだ。
そこまではいかずとも、不漁のゆえか、近年カツオの卸値は上昇気味らしい。
マグロの轍(てつ)を踏ませない早めの一手が、この魚にも必要ではないか。
メタボが注目されるようになり肉食より魚類が世界的に見直されてきて,海での漁獲が増え
海での乱獲か注目されだしてきている。
魚の養殖が 工場が注目されてもよいのではないのかと思えるようになった。
暁と宵の明星とは、ご存じの金星である
女神ビーナスの名を戴(いただ)くその星へ、
日本初の探査機「あかつき」が、予定では今朝打ち上げられる
平成22年5月18日の天声人語よりの引用
一夜を過ごした男女の迎える夜明けを、情感たっぷりに「後(きぬ)朝(ぎぬ)」と言う。
〈明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな〉と王朝時代の歌人はうたった。
恨めしさは洋の東西を問わないとみえ、古代ギリシャにはこんな詩があるそうだ
▼〈恋に仇(あだ)なす暁の明星よ、何とてかくも早やばやとわが臥床(ふしど)を見おろすことぞ……
美しきおん身の光も、わが上にはつらくつらく落つれば〉
(野尻抱影著『星三百六十五夜』)。
夜明けを告げて光る明星への恨み節は、ロマンチックで生々しい
▼暁と宵の明星とは、ご存じの金星である。
なにしろ明るく、らんらんと輝く。
太陽と月に次ぐ3番目で、最も明るいときは地上に影ができるという。
女神ビーナスの名を戴(いただ)くその星へ、日本初の探査機「あかつき」が、予定では今朝打ち上げられる
▼優美な名と裏腹に、金星の素顔は灼熱(しゃくねつ)と荒涼だ。
大気は二酸化炭素がほとんどで、地表は400度を超える。
濃硫酸の厚い雲に覆われ暴風が吹き荒れる。
もとは地球に似た「双子星」ながら、まるで違う道をたどった
▼もっとも、その雲が太陽光を8割がた跳ね返すのが、明るい理由の一つという。
恋に仇なす敵(かたき)役の存在感も、恐ろしい雲によるところが大きいらしい
▼古代ギリシャにはこんな詩もある。
〈夕星(ゆうずつ)よ 光をもたらす暁が散らせしものを
そなたはみなつれ戻す 羊をかえし 山羊(やぎ)をかえし 母のもとに子をつれかえす〉(北嶋美雪訳)。
夕星は宵の明星のこと。
朝の怨歌(えんか)と夕の牧歌を思いつつ、探査の旅に期待を寄せる。
宇宙への探査が続けられ,将来的には移り住む時代がくるのか,資源を求めるようになると空へのロマンはしぼむことになる。
口蹄疫(こうていえき)が発生した
宮崎県内の処分対象は、きのう現在で豚や牛など
11万8千頭に膨らんだ
国内では過去最悪の流行である
平成22年5月19日の天声人語よりの引用
「殺人事件が起きたような雰囲気だった。
殺された牛を思うと涙も出なかった」。
畜産農家の主人の悲痛が、9年前の小紙宮崎版に載っている。
その前年に宮崎県と北海道で口蹄疫(こうていえき)が発生した。
1年をへて出来事を振り返った記事である
▼「情けなくて。手塩にかけた牛がなぜ」「子牛はわが子と同じ。
可愛くてね」。
深夜も眠れず、焼酎をあおる日が続いた。
妻は家に引きこもったそうだ。
金銭もさることながら、精神的な痛手が大きかった。
それでも全体の被害はまだましだった。
740頭を処分しただけで流行を封じた
▼今回は燎原(りょうげん)の火を思わせる。
宮崎県内の処分対象は、きのう現在で豚や牛など11万8千頭に膨らんだ。
国内では過去最悪の流行である。
感染はついに、「宮崎牛」ブランドを支える種牛の管理施設にも及び、屋台骨を揺さぶっている
▼種牛はブランドの象徴でもある。
中でも「安平(やすひら)」という老牛は誉れ高く、冷凍精液が盗まれる事件も起きたほどだ。
20万頭の子を世に出し、悠々の余生を送っていたが、感染が危ぶまれ処分されるという。
悲憤、いかばかりだろう
▼口蹄疫は感染力が強い。
01年には英国で大流行し、600万頭が処分された。
人間を侵すウイルスは「人類最悪の敵」とも言われる。
人には感染しないとはいえ、このウイルスもやはり最悪の敵に変わりはない
▼市場へ送り出す朝だろうか。
〈ふり向く牛ふり向かぬ牛どちらをも送りて友はしばし動かず〉と先月の朝日歌壇にあった。
農家の丹精と落胆を思えば、対策の遅滞はもう許されない。
宮崎県の突然の口蹄疫の感染で驚いている。世界的に流行した新型インフルエンザも突然で
突然な出来事が続発している。
今回は日本だけの発症で宮崎県だけに現在は限られているようだ。
その「鬱」など196文字が新しく常用漢字に加えられる
文化審議会の分科会で答申案が承認された
平成22年5月20日の天声人語よりの引用
物書きには筆禍、話し手には舌禍があるが、「文字禍」とでも言うべきものもある。
中国清朝の雍正帝の時代、官吏登用の試験に、「維民所止」について述べよという問題が出た。
「維(こ)れ民の止(とどま)る所」、つまり人民が安住できる所の意味だという
▼これが禍をまねいた。
「維」の字は皇帝の「雍」の頭をはね、「止」も「正」の首をはねたと見られたのだという。
作問者は捕らえられて獄死、子も処刑されたそうだ。
作家の陳舜臣さんの随筆に教えられた
▼ひと塊の直線と曲線が様々な意味をもたらす。
漢字とは濃密な文字である。
漢字研究に生涯をささげた白川静さんは、漢字を一種の映像だと言っていた。
俳人の富安風生にも一句あったのを思い出す。
〈黴(かび)といふ字の鬱々と字画かな〉
▼その「鬱」など196文字が新しく常用漢字に加えられる。
文化審議会の分科会で答申案が承認された。
難しげな字が多いのは、「書く」から「打つ」時代になったためという。
わが身を省みて、恥ずかしながらパソコン任せの字が結構ある
▼賛否の割れた「俺」は入り、「鷹」はもれた。
熱心に要望した東京都三鷹市の清原慶子市長は「結果を“鷹揚”に受けとめる気にはなれません」と無念を語る。
常用とはさしずめ、漢字界の一軍選手といったところか
▼だが今回は暗いイメージの字が多いそうだ。
萎怨苛潰傲塞斬嫉呪妬罵蔑闇瘍辣……フライパンに放り込んで炒めたらどんな味がするのだろう。
一軍入りは世相の反映とも言われる。
一覧表を眺めつつ、虹や爽の存在感大きかれと願う。
常用漢字が追加されて,日本語では漢字が命のように思う。
漢字の国中国台湾へ行ってもなんとなく漢字だと意味が理解できる。
韓国は同じ漢字圏なのにどうして難しいハングル語が作られたのか残念。
世界的に同一文字を使って,相互に理解し易くなれば世界中がもっと親しくなると思うのに。
戦争のない平和が一番だ。
鳩山さんは立派な消しゴムをお持ちらしい。
沖縄の普天間飛行場移設をめぐり、
「最低でも県外」は臆面(おくめん)もなく消えた。
平成22年5月21日の天声人語よりの引用
手元の英和辞書には見あたらないが、「ペンシル・スケジュール」という言葉を米国の知人に聞いたことがある。
鉛筆書きの予定、つまり、取り消しても恨みっこなしの予定のことだという
▼「金曜の5時は?」「ちょっと流動的だなあ」「ではペンシル・スケジュールで」といった具合らしい。
多忙な人は重宝するだろう。
とはいえ世の中、書き捨てご免の鉛筆書きが通らない約束もある。
政治家の、それも首相の言となれば、その筆頭のはずである
▼だが鳩山さんは立派な消しゴムをお持ちらしい。
沖縄の普天間飛行場移設をめぐり、「最低でも県外」は臆面(おくめん)もなく消えた。
辺野古の海の埋め立てを「自然への冒涜(ぼうとく)」だと力んだ言葉も消えかかっている。
普天間は甘言にまみれ、迷走のあげく元の木阿弥(もくあみ)に戻りつつある
▼米国へのメンツだろう、「5月末」だけは断固ペン書きらしい。
「5月」がどれほど大事なのか。
大事なのは「沖縄の負担軽減」ではないのか。
政権の正体見たり、の人は少なくあるまい
▼米国通の文筆家だった植草甚一が、かの国で買った巨大な消しゴムの話を書いていた。
羊羹(ようかん)2本分ほどあり「FOR BIG MISTAKES(フォー・ビッグ・ミステークス=大きな誤りに)」と印刷があったそうだ。
首相に進呈できないものか。
ただし消してほしいのは「5月」の方である
▼普天間だけでなく、民主党はマニフェストにも色々と鉛筆書きがあったようだ。
あれやこれやで、内閣を不支持とする民意の消しゴムは巨大化する。
政権交代がビッグミステークに終わってはやりきれない。
此れだけコロコロと所信が変わるようならば内閣が変わっても当然である。
今日は「国際生物多様性の日」でもある。
生物多様性と聞けば難しげだが
つまりは地球上の「命のにぎわい」を言う
平成22年5月22日の天声人語よりの引用
転居した集合住宅にツバメが巣をかけたという話が、東京で読んだ声欄にあった。
抱卵を見守り、新住所に「つばめ荘」と書き加えたいものだと、投稿者は心やさしい。
今年も燕尾服(えんびふく)姿が薫風をよぎる季節になった
▼その軽やかな曲芸飛行を、仏の作家ルナールはこう表した。
「一本の直線を引き、その最後にコンマを打ったと思うと、そこで急に行を変える」「途方もなく大きな括弧を描いて、
私の住んでいる家をその中に入れてしまう」(岸田国士〈くにお〉訳)。
名高い『博物誌』の作家が没して、今日で100年になる
▼蟻(あり)から鯨まで、あまたの生き物を、簡潔で軽妙な短章にスケッチした。
「蝶(ちょう)/二つ折りの恋文が、花の番地を捜している」「蛇/長すぎる」――稀有(けう)の観察者による一冊に、
自然界への目を開かれた方もおられよう
▼その命日に重なるように、今日は「国際生物多様性の日」でもある。
生物多様性と聞けば難しげだが、つまりは地球上の「命のにぎわい」を言う。
約3千万種ともいう生き物が、この星に散らばっている
▼それぞれが人知を超えて結びつき、作用し合って、
豊かな生態系がある。だが今、年に4万もの種が絶滅しているとされる。
人類の「君臨」によるところが大きい。
一人勝ちを省みて未来を考える日としたい
▼米国の動物園に「最も危険な動物」という展示があると聞いた。
オリの中に鏡があって見物人が映る。
つまり人間である。
ルナールなら何と書くだろう。
「人間/威張って懲りない新参者」。
他の生き物を代弁してなら、さしずめこうか。
人間が一番危険な動物には賛成である。他の動物をも一緒に破滅するような武器を持ち勝手に
地球を破滅に至らす可能性が充分にある。
一面に自然に放置すれば絶滅するような動物を助ける力もある。
「積木(つみき)劇場」なる舞台を東京都八王子市で見た
約50人の幼児が、ヒノキの間伐材で作った積み木3万個を好きに積んでいく
平成22年5月23日の天声人語よりの引用
そういう年頃の子が身近にいないせいか、積み木というものに久しく触れていない。
百貨店のおもちゃ売り場をのぞいて、結構な値段に驚いた。
長く買ってもいないから、こちらの感覚が何十年か前のままらしい
▼思いを形にする木片は、時に意地悪だ。
積み方が甘いと崩れ、ボタン一つでリセットとはいかない。
子どもたちは両手で挫折や辛抱を知り、ひらめきに出会う。これを大勢でやるとどうなるか
▼「積木(つみき)劇場」なる舞台を東京都八王子市で見た。
約50人の幼児が、ヒノキの間伐材で作った積み木3万個を好きに積んでいく。
立方体など3種だけで、何かの形にするには工夫が要る。
高さを欲張って崩したり、人のをうっかり壊したり。気配りや役割分担が自然に生まれるのが面白い
▼1時間後、赤じゅうたんの上に小さな街ができた。
背丈ほどの塔もある。
街を大道具に見立てて、女性4人組のXUXU(しゅしゅ)がアカペラで何曲か歌った。
声の積み木である。最後に子どもたちが舞台に戻り、街を抱きしめながら崩した
▼進行役の荻野雅之さん(62)は山梨県で家具工房を営む傍ら、積み木の体験イベントを各地で開いている。
「集団の中で思わぬ化学反応が起こり、おのずと生きる力が身につく。
歌との組み合わせは初めてだが、作品が誰かの役に立つ喜びを知ってくれたと思う」
▼ゲームのように得点や勝ち負けがあるわけではない。
楽しむには、木と語らう心の余白が必要だろう。
無口な木片を手に取り、己のゆとりを試してみるのもいい。
この遊び、大人にも使い道がある。
子供の頃積み木で遊んだ記憶がある。互いに相手の積み木を壊して喧嘩したこともあったか。
陸と海がユネスコの世界自然遺産に登録されて間もなく5年
北海道の知床半島を訪れた
平成22年5月24日の天声人語よりの引用
雪解けの羅臼岳(らうすだけ)は白黒の肌をさらし、アイヌ民族がレプンカムイ(沖の神)とあがめるシャチを思わせた。
陸と海がユネスコの世界自然遺産に登録されて間もなく5年。
北海道の知床半島を訪れた
▼遺産地域に入るやいなや、エゾシカの群れ、キタキツネ、ヒグマに出会った。
青空ながら、知床連山からの吹き下ろしがクマイザサの群生をもてあそぶ。
ダケカンバやトドマツのくすんだ森に、薄紅を散らしてエゾヤマザクラ、白はキタコブシ。
待ちこがれた春である
▼一角で、地元斜里(しゃり)高校の1年生が植樹をしていた。
引率の植木玲一教諭(43)が語る。
「豊かな自然を当たり前と思っている生徒に、それを真剣に残そうとする大人たちの姿を見せておきたい」
▼斜里町が植樹を始めたのは33年前だ。
広く寄金を募り、開拓者が手放した農地を森に戻す運動は、乱開発の防波堤となった。
町長を5期務めた午来昌(ごらい・さかえ)さん(73)は「世界遺産は出発点。
住民は誇りを持ってこの地を守ってほしい」という
▼状況は甘くない。
アイヌの守護神シマフクロウは残り約120羽とされる。
巨体が収まる大木が消え、餌の魚はコンクリに阻まれ川を上れない。
一方で、急増するエゾシカは木々を食い荒らす。
ひとたび崩れた生態系は厄介だ
▼希望もある。
知床の価値と苦闘を知って、全国から生物や環境の専門家が参じ、午来さんらが作った知床財団を拠点に奔走している。
財団のサポーター(賛助会員)になろうと思う。
一つ一つの遺産を磨くことが、ひいては地球と人間を救う。ひとごとではない。
知床(世界遺産)
知床(画像)
知床旅情(動画)
悪魔のささやき」などと言うが、「道具」が悪事を誘うこともある
この「悪事を行う道具」とは、忠誠心あつい家来のことだ
平成22年5月25日の天声人語よりの引用
悪魔のささやき」などと言うが、「道具」が悪事を誘うこともある。
シェークスピアの人間観察はさすがに鋭い。
史劇の「ジョン王」で、「人間は、悪事をおこなうための道具を目にすると、
つい悪事をおこないたくなるものだ」と王に言わせている(小田島雄志訳)
▼この「悪事を行う道具」とは、忠誠心あつい家来のことだ。
そんな家臣がいるばかりに、王は甥(おい)の死を望む気持ちを募らせ、ほのめかす。
家来は王の心の内を忖度(そんたく)して甥に凶刃を向ける。
先の言葉は王の後悔である
▼北朝鮮による韓国の哨戒艦沈没の場合、「道具」とは潜水艦艇や魚雷であろう。
「ジョン王」のように、独裁者の心中を忖度する者が指図したのかもしれない。
お決まりの忠誠心競争である。
異様な国の異様な行動で朝鮮半島は緊張が高まっている
▼韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領はきのう、南北関係をほぼ途絶させる厳しい姿勢を表明した。
軍事挑発には自衛権を発動させるといい、国民に「覚悟」を求める内容という。
勃発(ぼっぱつ)から60年の朝鮮戦争が、今も休戦中にすぎない現実をあらためて思う
▼許されぬ暴挙を、金正日(キム・ジョンイル)総書記が悔いたか、喜んだかは知らない。
いずれにせよ、この国の小児性を思えば、核やミサイルがいかに危険な「道具」かは明らかだ。
しかも自国民を飢えさせながらの兵器開発である
▼「ジョン王」は中世英国に実在した人物で、史上最も悪評の高い王の一人とされている。
かわって現代に悪評とどろく「金王朝」である。
各国の協調と包囲網にゆめゆめ揺るぎがあってはなるまい。
何時ものことだが,トップは傷つかず家来が責めを負い再び悪事は繰り返されることが多い。
「新卒切り」とでも言うべき実態が目立っているのだという
多めに採用し、後から適当に切る魂胆としか思えない企業もあると聞く
平成22年5月26日の天声人語よりの引用
大阪の長尾幹也さんは、朝日歌壇によく職場を詠んだ歌を寄せる。
〈リストラに幾人を切り捨てしのち彫像のごと我はひび割る〉。
11年前、この一首が目に留まり、話を聞きに訪ねたことがある。
営業の部長としての実際の体験だった
▼〈解雇せむ社員四名を決めかねて秋の休日笑うなく過ぐ〉。
通告に臨むと、口は渇き、足は震えた。
「申し訳ない」「力になれなかった」と繰り返していた。
告げられた一人は泣いた。
長尾さんも泣いてしまったそうだ
▼昔の取材を思い出しながら、一昨日の教育面の記事を読んだ。
内定学生や新入社員に理不尽を言い、上司が罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせて追い詰め、辞めさせる。
「新卒切り」とでも言うべき実態が目立っているのだという
▼人間味はかけらもない。
初日から怒鳴られたある社員は、3日目から連日反省文を書かされた。
9日目に上司が「もうしんどいやろ?」。
「頑張れます」と言うと、「給料もらって居座るのか」と退職届を渡したという。
こんな会社があるのかと暗然となる
▼多めに採用し、後から適当に切る魂胆としか思えない企業もあると聞く。
泣いてクビを切れば心がある、とは言うまい。
だが人は今、いよいよ自分たち人間を貶(おとし)めつつあるのではないか。
せめて人を「モノ」としないモラルが企業人には欲しい
▼〈切る側より切られん側に移行しぬ社歴三十年まことシンプル〉。
11年たった長尾さんの最近の作だ。
ほっとして、どこか悟った風が吹いてくる。
「新卒切り」に血道を上げる上司たちは、これをどう読むことか。
多めに採用して後に採用されてから首切りされるのはたまらない。特にこの不景気の時は気の毒なことだ。
自らを「楽団の指揮者」にたとえる鳩山首相である
難曲ならぬ難局をどうさばくのだろう
沖縄への謝罪行脚で疲れ果てたところへ
社民党の福島党首との不協和音がけたたましい
平成22年5月27日の天声人語よりの引用
聴くのは楽しいが、ストラビンスキーの「春の祭典」は指揮者には難曲中の難曲らしい。
故岩城宏之さんは豪州での本番の舞台で、演奏が途中で止まる大失態を演じてしまった
▼曲は不協和音が連続して複雑だ。
岩城さんによれば、疲れ果てたラストに最大の難所が来るという。
そこで指揮棒を振り間違えて演奏は「崩壊」した。
音の消えた会場は凍りつき、体がガクガク震えた。
途中からやり直したが、恥じ入るほかはなかったそうだ
▼さて、自らを「楽団の指揮者」にたとえる鳩山首相である。
難曲ならぬ難局をどうさばくのだろう。
沖縄への謝罪行脚で疲れ果てたところへ、社民党の福島党首との不協和音がけたたましい。
棒さばき次第では連立は終止符と相成る
▼社民党にとっては、普天間の県外移設は党是に等しい。
旗をおろせば支持者を裏切る。
だが政権を抜ければ、参院選を前に「その他大勢」に埋没してしまう。
損と得を計りながらの、それゆえ高らかな、党首のパフォーマンスでもあろう
▼首相の棒さばきは就任当初から覚束(おぼつか)なく、普天間問題でも閣僚が勝手な音を出してきた。
いっときは「腹案」なる新曲が注目されたが、ここに来て楽譜すらなかったことが露呈した。
もはや聴衆からお金を取れる演奏とは言い難い
▼首相は3月の党首討論で、県外移設を「命がけで」と力を込めた。
「いのちを守る内閣」の「命がけ」はかくも軽かった。
同じ言葉を一昨日、福島さんも沖縄で言った。
沖縄が期待をつなぐこちらの「命がけ」の軽重も、遠からず明らかになる。
社民党の福島党首をして沖縄担当大臣にしアメリカと交渉してもらっても上手くはいかなかっただろうか。
その国技に何度目の汚点だろう。
ここ数年、リンチまがいの力士死亡、度重なる大麻事件、
元横綱朝青龍の暴行騒動と続き、
今度は暴力団との黒い関係である
平成22年5月28日の天声人語よりの引用
「国技」の二文字には、どこか背筋の伸びる響きがある。
相撲を国技と呼ぶ習わしは、明治の末に「両国国技館」が開館して広まったらしい。
その命名は難産だったといい、やれ相撲館だ武道館だと議論百出した
▼そうするうち、ある親方が言った「国技館」に、命名の委員長だった板垣退助が飛びついたという。
華々しく開館したものの、「国技という新熟語も妙だが、角力(すもう)ばかりが国技でもあるまい」と書く新聞もあったそうだ。
以上のことは、作家半藤一利さんの著作に教えられた
▼その国技に何度目の汚点だろう。
ここ数年、リンチまがいの力士死亡、度重なる大麻事件、元横綱朝青龍の暴行騒動と続き、先ごろは野球賭博の疑いを週刊誌が報じた。
何度もため息をつかせて、今度は暴力団との黒い関係である
▼土俵を囲む上席を暴力団幹部らに都合していたという。
一般には買えない席で、テレビ中継では正面に映る。
延べ約50人がここから、刑務所で観戦する組長らに「顔」を見せていたらしい。
現役親方2人が処分を受けた
▼「大師は弘法に奪わる」と古い諺(ことわざ)に言う。
大師はもともと高僧の称号だが、ただ「大師」とだけ言えば空海(弘法大師)をさす、という意味だ。
明治の国技館から1世紀、「国技」と言われて思うのはまず相撲である
▼「国技は相撲に奪わる」とでも言うべきか。
だが、こうも黒星続きでは、日本古来の他の武道に申し訳が立つまい。
黒い関係は浅くないと聞く。
断ち切るまでは「国技」を名乗るのを禁じたいものだ。
それが一番、薬になろう。
相撲の国技返上の事件が続発している。日本の美しさが失われるのは嘆かわしいことである。
米国生まれの新型情報端末「iPad」が、鳴り物入りで売り出された
中でもネットで買って読む「電子書籍」への関心は高い
平成22年5月29日の天声人語よりの引用
旅に出る鞄(かばん)に一冊の本をしのばせる。
だが、巡る先々の楽しさに気もそぞろとなり、なかなか活字に集中できない。
〈本の栞(しおり)少し動かし旅終る〉。
近江砂人(おうみさじん)の川柳は、誰にも覚えがあろう一コマを切り取って微笑を誘う
▼先の小紙俳壇には、日原正彦さんの〈春風が十頁(ページ)ほど拾ひ読み〉があった。
読みかけを風がめくる。
夏の木陰にはミステリーもいいが、春風には恋愛短編集が似合いそうだ。
だが栞にせよ風にせよ、紙の書物ならではの光景が、やがては過去の感傷に遠のくかもしれない
▼米国生まれの新型情報端末「iPad」が、鳴り物入りで売り出された。
週刊誌大ながら様々な機能や可能性を満載している。
中でもネットで買って読む「電子書籍」への関心は高い。
先行する米国では「紙の本はもう買わない」という人が増えているそうだ
▼品ぞろえが充実すれば、これ一台で行く先々が「書斎」になる。
読書革命ともいえるが、旅の鞄に一冊だけをしのばせるのも捨てがたい。
書店の棚からお供の一冊を選ぶのも、本好きの楽しみのひとつである
▼今後は「電子」の猛攻に「紙」がたじろぐ図となろうか。
とはいえ書物そのものにこだわる人は少なくない。
詩人の堀口大学が、「僕は殺すと云(い)われても、万葉集や古今集を革の装幀(そうてい)に仕立てる気にはなれない」と
述べていたのを思い出す
▼内容と外見が調和してこそ名著、という感覚だろう。
いわゆる愛書家である。
仕事柄、わが紙への愛着もひとしおだが、選択肢が増えたのを歓迎したい。
食わず嫌いはひとまずおいて。
時代も変わり読書のスタイルも変わってきて,一層の事読んで聞かして欲しい
鳩山政権は本気で米国と談判するかにみえたが
平成22年5月30日の天声人語よりの引用
連立与党を動物に例えたことがある。
議席を目方に見立て、民主党はクマ、あとはスピッツとチワワである。
「小型犬にも独自の鳴き声があり、クマの背で黙してはいられまい」と。
スピッツ愛好家から「そんなに吠(ほ)えない」と怒られたものだ
▼郵政「再」見直しではチワワの声がクマを動かしたが、普天間問題で鳴き続けたスピッツは振り落とされた。
筋を通した党首をクビにされ、社民党が政権にとどまる理由はなかろう
▼鳩山政権は本気で米国と談判するかにみえた。
それが迷走の果てに、日本の安全と沖縄の安全を天秤(てんびん)にかける論法となり、日米合意に辺野古の名がねじ込まれた。
普天間の危険を残したまま、怒る地元を「米国と本土」がなだめる構図は、沖縄が日本でないかのようだ
▼北朝鮮の仕業とみられる韓国艦の沈没事件も、同盟重視の背景とされた。
だが、沖縄に海兵隊がいてもいなくても北は暴走するのかもしれない。
抑止力なるものの現実をしっかり検証し、安保論議を深める好機だろう
▼経済評論家の勝間和代さんが、紙上で〈クライマックスとエンディングが記憶を作る〉という万能の法則を紹介していた。
人間関係もビジネスも映画のように、山場とラストを心すべしというわけだ
▼盛り上がらぬまま「完」の字が出そうな鳩山政権。
民意による政変という珠玉の筋書きがあったのに、このままでは、首相はそれを台無しにした大根として記憶に刻まれよう。
民主党はトップの器を含め、滑り出しでつまずいた理由をとことん突き詰め、出直すしかない。
鳩山政権の交代劇は沖縄問題か お金の問題か自民党時代から続いている問題だ。
5月の言葉から
平成22年5月30日の天声人語よりの引用
戦雲たれる朝鮮半島、政治への幻滅と財政難、再びの株安に畜産危機。
歴史の常で、国難はリーダーの力量にお構いなく降りかかる。
前向きのまなざしがなおさら恋しい5月の言葉から
▼武庫川女子大の藤本勇二講師は、小学校で食育を手がけた経験をもとに宮崎県の口蹄疫(こうていえき)を語る。
「私たちは命という食べ物をいただく。
畜産農家、流通に携わる人、食べ残しの行方など、せめて食べ物の向こうに関心を持つきっかけにしてほしい」
▼がん患者の記を集めた情報誌「メッセンジャー」の編集長、杉浦貴之さん(38)は、自らのがん体験から発行を思い立った。
「患者は絶望の中で希望を探している。
一人一人の力や希望の光は小さくても、たくさんあれば見つけやすい」
▼「奇跡的に、こんな素晴らしい時代の日本に生まれたわけですから、すべて体験してやろうという気持ち」。
テレビに演劇、執筆と間口が広い落語家春風亭昇太さん(50)である
▼98歳で亡くなった俳優北林谷栄さんを、映画評論家の佐藤忠男氏は神話的と評す。
「世の中が浮ついていても、おばあさんの周りは落ち着いている……かつての日本映画には、
主役でなくても独自の世界を持つ、そんな人物の居場所がたくさんあった」
▼日本通のジョン・ダワー米MIT教授(71)が教職を退く。
占領期を描いた著「敗北を抱きしめて」について「戦争直後、多くの日本人が様々なレベルで粘り強さと明るさを発揮し、
軍事に頼らない平和をつくろうとした姿を描きたかった」。
粘りと明るさ。今求められる二つである。
湖東三山の百済寺
久しぶり百済寺を訪れてみた。京都から名神高速道を使うと比較的に近い。八日市インタ-から出て約15分位の所にある。
寺院は山の麓から少し上った所にある。以前にも訪れたことがある。目加田村から慶長年間に移された(目賀田城内に在ったものか?)
目加田佛-百済寺の公式サイト一番上段の阿弥陀如来像-が在ると知り訪れたがその時は秘仏で拝観できなかった。
そこで住職に頼み,その写真をいただ゜いたことがある。その時の印象が庭が大変美しく壮大だったのでもう一度訪れてみた。
それに今回は何百坊の寺院が建っていたので,その瓦片が見つかるかも知れないとの思いで訪れた。
庭は大変美しくて変わりはなかつたが,瓦片fはやっと小さなものを見つけることが出来たぐらいて終わった。
赤色に変色した甕の一部をも見た。織田信長により焼き討ちに遭った為のものかと考える。
東寺や奈良の興福寺には布目瓦(画像)が沢山落ちていて,瓦片を拾うような人は誰もいない。拾ってきた瓦片を集め楽しんでいる。
三井寺では土器片も見つけたことがある。三井寺以前のもののようである。京都歴史資料館で見る縄文土器と同じで
これは縄文土器の破片をみつけたと思っている。かなり古い頃から人が住んでいたようで,三井寺以前に大伴氏の寺院があったのは確かなようだ。
百済寺の本堂はかなり急な階段の坂を登らないといけない。急な坂の他になだらかな道も作られている。
そこを登り,帰りは階段で下りる。訪れる人は少なかった。
百済寺庭園(動画)
百済寺(ひゃくさいじ)は、滋賀県東近江市にある天台宗の寺院。山号を釈迦山と称する。本尊は十一面観音、
開基(創立者)は聖徳太子とされる。金剛輪寺、西明寺とともに「湖東三山」の1つとして知られる。
琵琶湖の東、鈴鹿山脈の西山腹に位置する。
寺伝によれば、推古天皇14年(606年)、聖徳太子の建立という。
聖徳太子は当時来朝していた高麗(高句麗)の僧・恵慈(えじ)とともにこの地に至った時、山中に不思議な光を見た。
その光の元を訪ねて行くと、それは霊木の杉であった。
太子はその杉を、根が付いた立ち木のまま刻んで十一面観音の像を作り、像を囲むように堂を建てた。
これが百済寺の始まりであるといい、百済の龍雲寺にならって寺を建てたので百済寺と号したという。
百済寺の史料上の初見は11世紀の寛治3年(1089年)であり、聖徳太子創建との伝承がどこまで史実を反映したものかは不明であるが、
百済寺という寺号から見て、この寺は渡来系氏族の氏寺として開創された可能性が高い。
平安時代には、近江国の多くの寺院と同様、比叡山延暦寺の勢力下に入り、天台宗の寺院となっている。
平安時代から中世にかけて、かなりの規模をもった寺院だったようだが、明応7年(1498年)の火災で全焼し、
その数年後の文亀3年(1503年)の兵火でも焼け、この2回の火災で創建以来の建物ばかりでなく、仏像、寺宝、記録類なども大方焼けてしまった。
さらに天正元年(1573年)には織田信長の焼き討ちに遭い、またも全焼している。
当時、この地に勢力をもっていた佐々木氏の一族六角氏は、観音寺城の支城である鯰江城(なまずえじょう)を百済寺の近くに築いていた。
信長は自分と敵対していた佐々木氏に味方するものとして、百済寺を焼き討ちした。本堂をはじめ現在の建物は近世以降の再興である。
山門(赤門)を入り参道を進むと途中左側に本坊の喜見院があり、そこから石段を上ったところに仁王門、さらに上ったところに本堂が建つ。
喜見院はかつては仁王門下の右方にあったが、昭和15年(1940年)に現在地に移転している。
参道両側には石垣を築いた僧坊跡があり、かつては多くの建物が軒をつらねていた。境内は国の史跡に指定されている。
本堂は、入母屋造、檜皮(ひわだ)葺き。江戸時代初期、慶安3年(1650年)の再興である。
中世以来の密教仏堂の形式を残しつつ細部には近世的特質の現われた建築で、2004年に重要文化財に指定されている。
元来の本堂は現在地の裏手にあり、規模も大きかった。また、旧本堂の右方(南)には五重塔が建っていた。