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新しい年になって




平成24年1月,新しい年になったからといって,急に世の中の情勢が変わるものでもない。

正月になると子供の頃,何か新しくなった気持ちになったものだが,新年の家庭内の行事が行わないので

神棚や井戸端に鏡餅を飾り,その神さんに灯明を上げ 「おくど(画像)」さんの鏡餅に灯明を上げることもない。 

叉仏壇に灯明をあげることなく,普段と全く同じ生活の延長に正月がある。鏡餅(画像)

正月になると辺りの風景が何か新鮮に映り,新しい年が始まったと言った気持ちになった。

そして氏神神社であった藤森神社にお参りし,それからお稲荷さんにも参拝したものだ。

お稲荷さんには正月を通じ何回も通った。大勢の参拝客に囲まれ参道の店を見て周るのが楽しかった。

店が表参道にも出ていたが、 この間自動車で前を通りかかると表参道の半分が新しい駐車場に変わっていた。

着物姿や新調の洋服を着た人たちが街道筋を稲荷神社参拝の為にゾロゾロ歩いている姿をみかけたものだ。

正月の間は 遊び仲間と双六 カルタ取り トランプなどに一日中興じたものである。

今はそのようなことなく,テレビを見 インタ-ネットをしたりしての正月を過ごしている。

景気低迷の中,円高を利用して海外で正月を過ごす人も多くなって来ているようだ。

EU連合(欧州連合加盟国)の国境を境している国々が一つのヨーロッパの国を目指しての理想の第一歩だったのが,

ギリシャを始めとしての経済的破綻でもってユーロ通貨は下落して経済危機に陥っている。

ドイツのショイブレ財務相は、ユーロ圏では2年前に比べギリシャの破綻に対する備えができているが、

直も引き続き最善を尽くす必要があると発言している。

叉同財務相は、公共テレビのZDFから「ギリシャが破綻してもユーロ圏は存続できるか」と質問されたのに対して

「2年前に比べれば備えができている。だが、ギリシャを支援するためあらゆる措置を講じる必要がある」と答えている。

また、緊縮策が不公正だと感じているギリシャ国民には同情するが、ギリシャは長年に渡って身分不相応な暮らしをしてきたため、

競争力を取り戻す必要があると話している。

世界的な不景気はとどまることなく 日本も同様,野田首相は閣議決定して消費税導入しようとしているが,世論は賛成が40パーセント

反対が45パーセントと報道されている。

世論では政治家や 官僚の無駄使いを徹底的に行う事にこ対しては国民の意見は一致しているようだ。

日本がギリシャのようにならないことだけを願うばかりである。

天皇陛下が冠動脈狭窄でもってバイバス手術を受けられるようである。バイバス手術は一般的に広く行われている。

カテ−テルで冠動脈を広げると再び狭窄が起きるので手術に踏み切られたものと思う。

高血圧や心労 運動不足 メタボでもおきるようだが,前立腺がんに対するホルモン投与が何らかの影響も考えられる。

秋篠宮がマスコミ報道で発言されていたように,天皇も高齢になれば人間として隠居される事が一番妥当な考え方だと思う。

高齢になられても皇室の行事が近臣達,宮内庁職員によって,強制されているように思えて,お気の毒なことだと感じている。

御陵の近くの閑静な所に大きな屋敷(宮内庁官舎)に住まいしている宮内庁職員が御陵を管理している様子を見.るにつけ,

天皇制を利用しての宮内庁職員の役得をしているのではないかと思えた。

財源不足が叫ばれている中,国有地を売却すれば直ぐにでも何兆円もの財源が生むのではないかと空想している。

我々の子供の頃は貧しくとも「生めよ増やせよ」の政府の方針でもって,大勢の兵隊達が強制的に消耗品の如く戦死していった。

「天皇陛下万歳」を叫びながら死んだとされている。

大伴 蘇我に始まり平安時代には藤原氏によって;歴代の天皇が利用され続けてきた。

その後もずーと天皇を利用してきた人たちの歴史が日本で続いて来たのではないかと思える。

世界情勢としてはアラブの報道が少なくなってきているので,アメリカ軍の撤退が順調に行われているものと思う。

アメリカでは長い長い大統領選挙が続いている。民主党ではオバマ氏にきまっているが共和党は誰に決まるのかは判っていない。

選挙の最中で -以下インタネット引用-

米大統領選の共和党候補指名争いは、保守強硬派サントラム元上院議員が全米の世論調査で穏健派ロムニー前マサチューセッツ州知事にほぼ並び、

勢いづいている。

次の戦いは28日のミシガン、アリゾナ両州。特にロムニー氏にとってミシガンは地元だ。

ここで敗北すればロムニー氏は苦しい立場に追い込まれる。

一時は独走態勢に入りつつあったロムニー氏だが、7日のミネソタ、コロラド、ミズーリ各州でサントラム氏にまさかの「全敗」を喫し、潮目が変わった。

13日から14日にかけてCNNやニューヨーク・タイムズ紙などが発表した世論調査では、

全米の支持率でサントラム氏とロムニー氏が2、3ポイント差で1位、2位を分け合った。

ミシガンでは、政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」集計の世論調査平均値(10−14日)で1位サントラム氏が2位ロムニー氏に8・2ポイントの差をつけた。

ミシガンはロムニー氏にとって落とせない場所だ。

アメリカの動向が日本は勿論のこと世界の情勢に対し,大きな影響を及ぼしていることは間違いない事でアメリカ大統領選挙の動向には目を放すことは出来ない。

沖縄の問題も沖縄と日本の関係よりも,アメリカに対しての日本・沖縄の関係であるのがアメリカの半植民地下に日本が置かれているので

沖縄はもとより歴代の内閣は苦慮し続けてきている。

ブッシュ時代の小泉内閣の時のような典型的な隷属関係にないから,日本はころころと政権が交代してきている。

それらの反動として,日本国内でのヒットラ-のような強権政治の出現を恐れる。

第二次大戦の戦後影響はアメリカ軍の海外駐留数を見ればわかる。目に見えない米ソ冷戦は今も続いていると考えて良いのではなかろうか。?

アメリカ軍

ロシア連邦軍

このような現状を解消するには強力な国際連合のもと米 英 ロシア 中国などのが参加したような国連軍になってほしいものである。

普通の人間が普通に考えらるような世の中のままに,推移していないのが現在の社会状勢のように思えてくる。





伏見稲荷神社2011年初詣(動画)



Happy New Year 2012(動画)


2012 The Year of the Dragons(動画)


春の海(Haru No Umi) 宮城道雄(動画)






雑煮は心に根ざした食べ物である





平成24年1月1日の天声人語よりの引用


雑煮は心に根ざした食べ物である。

土地土地、家々に流儀があって、こればかりは他家や他郷のでは駄目という人が、このご時世にも多い。

自慢しあうことはあっても、よそをまねて作る話はあまり聞かない

▼俳優で演出家だった芥川比呂志に雑煮の随筆がある。

芥川家では具が野菜だけの質素な仕立てが受け継がれてきた。

一時鶏肉を入れてみたが、すぐにやめたという。

「野菜だけのほうが、正月の朝が、静かに落ち着くのであった」。

一椀(ひとわん)への愛着、おいそれとは捨てられない


▼年あらたまる淑気のなか、「わが家の雑煮」に一族再会をかみしめる方もおられよう。

人が往(い)き来してむつまじくするゆえに正月を睦月(むつき)と呼ぶそうだ。

水入らずの団欒(だんらん)を、外の寒さが引き立てる

▼かつて津々浦々に、その地ならではの雑煮を生む風土と暮らしがあった。

だが戦後の日本は、多彩で懐の深い「地方」を踏み台に、都市中心の繁栄を築いてきた。

災厄が呼びさました悔恨の一つだろう

▼青森出身の寺山修司が言っていた。

「今日では、標準語は政治経済を語ることばになってしまった。

人生を語るのには、もう方言しか残っていない」と

思えば過疎地に原発を林立させてきたのも「標準語で語られる政治と経済」ではなかったか

▼そして今、「グローバル化」という世界標準語が、妖怪のように地球を席巻する。

栄華と便利は幸せと同義ではなかった。

それを知って、さあどの方向へ歩むのか?

 辰(たつ)年の空から小さき問いが聞こえてくる。




雑煮を正月に何故祝うのかの歴史が余り知らない。

子供の頃の記憶では男が赤の箱膳て゜女は黒膳で御頭つきのサトイモが入っていて将来に頭になるようにとの

願いが込められていたようだ。白味噌仕立てであった。








太平洋にあって大西洋にないものの一つに、日付変更線がある。






平成24年1月3日の天声人語よりの引用


太平洋にあって大西洋にないものの一つに、日付変更線がある。

南洋の島国サモアが先日、自国の標準時を変更線の東から西側の時間帯に移した。

地図では、サモアの西を通っていた変更線が東に引き直される

▼近くの豪州やニュージーランドと丸一日近い時差があり、ビジネスに不便だったそうだ。

観光の売り物「日付が最も遅く変わる国」が「早く変わる国」に。

昨年12月29日の翌日を31日にしたというから、この国には2011年の12月30日がなかったことになる

▼世に「消せる日」があるとは知らなかった。


3月に消したい日が一つある古いカレンダーは、その仕事を終えた。

真新しい暦を前に思うのは、1日どころか貴重な何年かが欠落したような、わが政治の歳月だ

▼1年前の小欄で、永田町の冬景色を嘆いて書いた。

「内からでも外からでもいい。

『国起こし』の雷鳴がこれほど待たれる正月はない」と。

雷はとどろくべき所をまるで間違え、政権は内向きの争いに明け暮れる

▼年頭に記者会見するリーダーは、ここ7年で7人目だ。


民主党のマニフェストは総崩れ、首相が消費増税を決意すると、党内で「選挙怖し」の反対署名や離党の動きが続いた。

情けない有り様である

▼それでも、日本を諦めるわけにはいかない。

太平洋にあって大西洋にないものの中で、私たちを乗せた列島に代わりはない。

ならば国の将来を政治家に丸投げせず、とりわけ若い人は声を上げよう。

松の内に書くのも何だが、神頼みはいけない。



思うように行かないのが政治だと考えるのが普通になってきているようだ。







「どじょう演説」の野田首相にも似た味がある。
いつもはのらりくらり、慎重を旨としながら、ここ一発の意地は侮れない。
きのうの年頭記者会見も一点突破の趣だった







平成24年1月5日の天声人語よりの引用


どじょうを飼う知人がいる。

名前は「どーちゃん」。

おとなしくて、台風が接近すると底砂に隠れてしまう。

そのくせ、すきを見て水槽を飛び出す瞬発力を備えているそうだ。

臆病だが機敏、というのが飼い主殿の観察である

▼「どじょう演説」の野田首相にも似た味がある。

いつもはのらりくらり、慎重を旨としながら、ここ一発の意地は侮れない。

きのうの年頭記者会見も一点突破の趣だった


▼抑揚を欠いた受け答えの中で、こと消費増税だけは「先送りできない」と重ねて力を込めた。

ついには高校で教わったチャーチルの言葉を引いて、「ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップ」ときた。

水槽を飛び出す覚悟とみえる

▼党内基盤が万全でない首相が不退転を口にし、なにやらキナ臭い年明けである。

小沢元代表は「決起」のタイミングを計っている風だし、自民党は「日本の存亡をかけた政治決戦の年」と大きく出るらしい。

「維新」を叫ぶ大阪市長らも国政への参戦をにおわす


▼世界も選挙の年。

オバマ大統領が再選を目ざす米国では、共和党が挑戦者選びに入った。


ロシアやフランス、韓国でも大統領選がある。

国を過(あやま)つ者は必ず民意に反撃される。

投票にせよ、蜂起にせよ

▼中東のように命をかけず、為政者を選び直せる幸せを思う。

リーダーならずとも、いつも以上に立派なことを言うのが年頭の常だが、その言葉が軽すぎ、何人もの首相が選挙を待たず去った。

「ネバーギブアップ」の重さ、しかと見極めたい。



きのうの年頭記者会見も一点突破の消費税増税

理解できるが納得行く政治改革 政治の無駄を徹底的に省いてほしいものだ。







警察に出頭したオウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)は
教祖との写真を5年前に捨てたという。







平成24年1月6日の天声人語よりの引用


好き合った人の手紙や写真を裏庭で燃やす。

古い映画などにある「絶縁の儀式」は、新たな出発を示す場面でもある。

恋文も庭も希少の昨今、メールやデジカメ画像を消しても絵になるまい

▼警察に出頭したオウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)は、教祖との写真を5年前に捨てたという。

法廷での情けない態度に気持ちが離れ、捨ててすっきりしたと弁護士に語っている

▼容疑者は17年前の拉致事件で、運転手を務めたとされる。


拉致計画は知らず、「そこまでするか」と教団への不信が芽生えたそうだ。

逃亡の果ての再出発、不自由と引き換えに得ようとしたものは何か。

自己弁護の山から、カルト集団の真実を探し出す作業が待つ

▼特別手配され、ポスターや等身大パネルで知られた顔と長身である。

その男が大みそかの深夜、皇居お堀端にそびえる警視庁に赴く。

サスペンス風だが、その先はコントになる


▼警備の機動隊員は冗談と思い、近くの丸の内署を紹介した。

署員も半信半疑で、本人に「ほら、背も高いでしょ」と言わせている。

警察は猛省だ。

オウム裁判がすべて終わったからといって、胸中の手配写真を燃やしてはいけない

▼警官を「説得」してまで名乗り出た容疑者である。

決別してこそ話せる過去も、その覚悟もあろう。

それをどれだけ引き出せるかに捜査当局の名誉回復がかかるが、真実は「出頭」してくれない。

サーチライトでも照らせない。

短いロウソク一本で心の暗闇に分け入り、迎えに行くだけだ。




これまでに信じ込ませることの出来る麻原彰晃とはどんなじんぶつだったのか。

人間に取り信じるとは恐ろしいものである。

自然に本人が信ずる場合と信じ込まされる場合がある。多分大方は後者の方だろうと思う。







胃潰瘍(かいよう)を患う夏目漱石は、療養先の伊豆修善寺でひどい吐血に見舞われる。
生死の境をさまよった後の一句が生々しい

きょう、無病息災を願いつつ味わう七草粥は、年末年始に酷使した胃腸に優しい






平成24年1月7日の天声人語よりの引用


43歳の晩夏だった。

胃潰瘍(かいよう)を患う夏目漱石は、療養先の伊豆修善寺でひどい吐血に見舞われる。

生死の境をさまよった後の一句が生々しい。

〈腸(はらわた)に春滴(したた)るや粥(かゆ)の味〉。

大病のつらさを押しのけて、生きる喜びが鮮烈だ

▼絶食の末に許された粥は、歓喜のうちにのどを抜け、食道を震わせて下り、腸(はらわた)に春を届けた。

五体に染みたことだろう。現に、病床の漱石は食べることばかり夢想していたらしい。

「夜は朝食を思い、朝は昼飯を思い、昼は夕飯を思う」と、当時の日記にある

▼病中病後のシンボルだった「おかゆ」も、いまや堂々の健康食だ。

なにせ消化がよくて減量にも向く。

レシピ本がいくつも出回り、元気な人はさらなる充実を求めて食す

▼きょう、無病息災を願いつつ味わう七草粥は、年末年始に酷使した胃腸に優しい。

過食を省みる一服となる。


刻み込む春の七草のうち、台所のなじみはスズナにスズシロ、すなわち蕪(かぶ)と大根あたり。

家なら一草で構わない


▼洋食や中華が油絵なら、和食は水彩、粥は水墨画となろうか。

飯粒はふやけ、具は質素、総じて薄味ゆえに、控えめな美味を受け止めるには「備え」が要る。

禅寺で供される朝粥の旨(うま)さは、ゆとりの中の欠乏感、平らかな心と無縁ではない

▼文豪に生を思い出させたのは変哲もない白粥だろうが、死を免れた安堵(あんど)と空腹が何よりの具だった。

病の心配がない向きは、一食抜いて七草粥を試すのもいい。

元気と平穏がほしい年、淡いが深い滋味で、この寒をしのぎたい。




七草粥は忘年会や正月に暴飲暴食した胃に負担を軽減するために始まったものかもしれない。







画題にする植物の組み合わせで「双清(そうせい)」といえば、梅と水仙をさす





平成24年1月8日の天声人語よりの引用


画題にする植物の組み合わせで「双清(そうせい)」といえば、梅と水仙をさす。

どちらも人を励ますように、寒さの中へ清らかに花を開く。

梅はまだ早いが、かれんに咲く水仙の一抱えを、福井の読者から送っていただいた

▼福井の越前海岸は水仙の名所で知られる。

正月花として家々にも活(い)けられたことだろう。


すらりと伸びた葉の緑。

花の白と、その中心を占める黄色は、燭台(しょくだい)に載ったともしびを思わせる。

雪中でも香るが、少し部屋が暖まると、ほどけたように匂いはじめる

▼英国の自然詩人ワーズワースの名高い水仙の詩が浮かぶ。

〈谷また丘の上高く漂う雲のごと/われひとりさ迷い行けば/折しも見出(みい)でたる一群の/

黄金色に輝やく水仙の花/湖の畔(ほとり)、木立の下に/微風に翻(ひるが)えりつつ、はた、躍りつつ……〉(田部重治訳)

▼うたわれているのはラッパ水仙だという。

冬枯れの寂しい山野にいち早く開く水仙は、かの地でも希望と喜びをもたらす花として親しまれたそうだ。

日本でも「早春」の一語を真っ先に胸に呼び込む花だろう

▼〈燕(つばめ)も来ぬに水仙花/大寒(おおさむ)こさむ三月の/風にもめげぬ凜々(りり)しさよ〉はシェークスピアの戯曲「冬物語」から抜粋した上田敏の名訳詩。

洋の東西で、寒さにひきしまる咲き姿に、清と凜(りん)のイメージがよく似合う

▼列島は寒の入りをくぐったばかり。

これからが冬物語の本番になる。

ぱちりと開いた花をのぞき込んで、早春までの距離を思う。

近からず、されど遠からじ――花の精の声をどこからか聞く。




梅と水仙が双清と言うのか判らない。両者とも清らかな感じは受ける。

一般に墨竹と白梅は簡潔に描かれ、品のよい清らかさが漂うことから「双清」と称される

双清の組み合わせも色々とあるものか。?








若者への小言は、言われた者がいつしか言う年齢になり
有史以来のたすきリレーが連綿と続いてきた
その節目ともいえるきょう、成人の日である





平成24年1月9日の天声人語よりの引用


ユーモアというより毒舌の類(たぐ)いだが、高齢の方は怒らずにお読みください。

「いまどきの若い者は、と怒るのは年寄りの必須の健康法の一部で、これで大いに血行がよくなる」。

米国の文筆家の言として『《医》をめぐる言葉の辞典』という本にある

▼もっとも、かのソクラテスも若者の無礼に嘆息していたというから、賢愚とは関係がなさそうだ。

若者への小言は、言われた者がいつしか言う年齢になり、有史以来のたすきリレーが連綿と続いてきた

▼わが高校時代の天声人語を読んでみても、随分な言われようだ。


「歩く鍛錬が少ないから体中の筋肉がゆるみ、電車の中でだらんと足を投げ出す」

「学校と自宅という線を結んだ受験勉強以外に手ごたえのある現実が乏しい」

▼まだまだある。

「大時代的な大志は少なくなったが、志まで薄れて『先は見えているんだ』などと分かった風なことをいう」――。

40年近くも前なのに、今朝の記事から抜いてきたようだ。

これは悲劇なのか、喜劇というべきか

▼人はだれも受け身の形で生まれ、与えられた生を自分の人生として引き受ける。

そんな思春期の葛藤をこえ、大人として「身」に「心」を添わせて歩んでゆく。

その節目ともいえるきょう、成人の日である

▼被災地で、各地で、祝いの催しがあろう。

万の繰り言は人の世の常として、若者の存在そのものが何より素晴らしい。

時代はきびしいが折れぬ心を持ってほしい。

小欄を含む先行世代の「健康法」を蹴散らして行くほどに。



新成人の推移は暫減してきているようである。








せいぜい数週間で終わる裁判員裁判では、100日は異例の長丁場を意味する





平成24年1月10日の天声人語よりの引用


「お食(く)い初(ぞ)め」なる風習がある。

赤ん坊が先々ひもじい思いをしないよう、大人と同じものを口に運ぶ儀式で、百日(ももか)の祝いともいう。

育ちぶりや、親の心労のほどで、生後の100日は長くも短くもなろう

▼裁判の100日にも、長短の別がある。

公職選挙法の「百日裁判」は、選挙違反の判決を議員任期の浅いうちに下すべく、迅速な審理を促すルールだ。

逆に、せいぜい数週間で終わる裁判員裁判では、100日は異例の長丁場を意味する

▼本日さいたま地裁で始まる連続不審死事件の裁判では、裁判員の任期がまさに空前の100日と定められた。

裁判員6人と補充要員は4月半ばの判決まで、50回ほど裁判所に通うことになる

▼首都圏で男性3人を殺害した罪に問われた女性被告(37)は、そもそも人を殺(あや)めたと認めていない。

「自殺を装うために練炭を買った」といった間接証拠が多いせいか、証人は延べ63人を数える。

裁判員は精勤の上、殺人については「極刑か無罪か」の判断を迫られる公算が大きい

▼かほどの拘束と重圧は、人生の想定外に違いない。

日当では償えない苦行に、勤め人であろうがなかろうが、尻込みしたいのは分かる。

裁判員の候補330人からは辞退が続き、選任の抽選に残ったのは1割ほどだった

▼ともあれ万人注視の法廷になる。


検察官が糾弾する「悪の所業」と、被告と弁護人が語る全く別のストーリーを「素人の感覚」はどう消化するのか。

この100日、裁判員と一緒に悩んでみようと思う。



裁判官も人間である 裁判制度の制度そのものがよくても裁判官が判決を下せばそれで全てである。

裁判官も神でなく人間であることに問題が何時までも発生しそうである。








今、日本で最も知られた宅地かもしれない
小沢一郎氏の資金管理団体が買った、東京都世田谷区の土地である。







平成24年1月11日の天声人語よりの引用


今、日本で最も知られた宅地かもしれない。

小沢一郎氏の資金管理団体が買った、東京都世田谷区の土地である。


氏の政治資金が取りざたされるたび、現場リポートや空撮でここが映される。

きのう訪ねると生け垣の新芽が乱れて伸び、〈兵(つわもの)どもが……〉の趣だった

▼秘書たちの寮のための土地だという。

2004年秋、小沢氏は「俺が用立てよう」と、秘書だった石川知裕衆院議員に購入資金4億円を渡した。

これに争いはないが、出どころの説明は二転三転する


▼献金、融資、個人資産。

石川氏も「小沢先生が長い人生で蓄えたお金、としか答えようがない」と歯切れが悪かった。

この金の虚偽記載をめぐる裁判で、小沢氏が被告席から最終回答を試みた。


「親から相続した財産と、印税や議員報酬」だと

▼金銭感覚の違いはあろうが、平均的な生涯所得を超える大金だ。

出納の記憶があいまいなはずはない。いち早く国会で説明しておけば、強制起訴の屈辱もなかったろうに

▼小沢氏は「私の関心は天下国家の話」とも答えた。

政界再編に備えた資金であり、選挙上手の秘書団である。

大乱の気配が漂い始めた矢先に、金と人を生かすための土地を〈夢の跡〉にされてたまるか。

そんな心境だろうか

▼春に無罪となり、首相から被告人になった師の逆を行くつもりかもしれない。

今度こそ最後のご奉公と。

何度目の勝負か知らないが、壊し屋と呼ばれた人物を軸に転がり続ける政治は空しい。

手入れが行き届かない住宅地のように





選挙に資金を多くつぎ込める人はそれだけの資金を集められる能力が必要だ。常識的に誰もが最大限力を尽くしても限界がある。

小沢さんは自民党時代からも各政党を経て民主党になっても,常識的に考えれば反社会的な事をしない限り不可能と考える。

秘書に責任を擦り付けるのは歴代の代議士がしていることである。司法の世界は裏献金をして仕事がもらえたという人がいるのに変な世界だ。







昭和の昔、戸外の通信手段といえば数に限りのある公衆電話である。






平成24年1月12日の天声人語よりの引用


誘拐サスペンスの名作に、黒澤明監督の「天国と地獄」がある。

身代金の指図をするため、犯人が会社役員宅に電話を入れる。

硬貨の投入音、続いて「昼日中(ひなか)にカーテン閉め切って何やってんだ」。

録音を聞いた刑事たちは、高台の豪邸を見通せる電話ボックスを絞り込み、包囲網を狭めていく

▼モノクロで描かれる知恵比べは、携帯電話では成立しない。

昭和の昔、戸外の通信手段といえば数に限りのある公衆電話である。

私事になるが、合否の報告も、上司からの怒声も「公衆」だった

▼1960年代の普及期に出た『赤電話・青電話』(金光昭著)に大意こんな一節がある。

「赤電話は用事があって探したものだが、昨今は赤電話を見ると用事を思い出す」。


思いつきの用件やおしゃべりは、携帯メールが引き継いだ

▼個人端末があまねく行き渡り、人の数だけ電話が歩いているような世である。

あらゆる喜怒哀楽に介在し、85年に93万台を超えた公衆電話は4分の1に減った。

店先の赤はとうに消え、なじみの緑も間引きが急だ

▼しかし公衆電話には、災害時につながりやすい利点があるらしい。

携帯サービスがダウンした大震災では、帰宅難民が並んだ。

そこでNTTは、春から設置場所をホームページで知らせるという

▼ウオーキングや散歩好きのために、公衆トイレを記した地図はよく見る。

同様の駆け込み寺として、街角の電話たちが頼もしく見えてくる。

古いやつにも使い道はあるんだと、公衆世代はつぶやいてみる。




公衆電話が見られなくなってきている。携帯電話 スマホン アイホンが普及してきた為だと考える








オウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)を匿(かくま)った斎藤明美(あけみ)容疑者(49)は、
転居のたびに名を変えたという







平成24年1月13日の天声人語よりの引用


京都の忍(しのぶ)は神戸で渚(なぎさ)になり、横浜でひろみに戻る。

小林旭さんの「昔の名前で出ています」は、ネオン川に漂う浮草の恋を歌って切ない。

いくつもの名を経た女性にも、帰るべき古里のように、本名が一つある

▼オウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)を匿(かくま)った斎藤明美(あけみ)容疑者(49)は、転居のたびに名を変えたという。

ともに東北を転々、たどり着いた大阪でも2回引っ越した。

生計を支えた女は、逃亡17年をいくつの名で生きたのか


▼住み込みで働いた仙台の料亭では山口今日子、最近まで勤めた東大阪の整骨院では吉川祥子だった。

子の字が気にかかる。前にも書いたが、女子の命名で「○○子」の独占を崩した先駆けこそ、「明美」なのだ

▼明治安田生命によると、1957(昭和32)年に10傑に登場、65年に首位になった。

斎藤容疑者が生まれたのはその間(あいだ)、「今風の名」として明美が輝いていた頃である。

二つの偽名を「子」にしたのは、ある種の埋没願望にも思える

▼出頭時の告白文にある。

「きょう私は17年ぶりに本名を名乗りました。偽りの人生は終わりにします」。

オウム事件の被害者や遺族には身勝手に映ろうが、改心に偽りなきを願う

▼彼女は自首する前、福島県の実家に電話し、「明るく美しい」名をくれた両親にわびたそうだ。

同じカルト集団に深入りした男を支えて連ねた、かりそめの日々。

その果てに、「昔の名」に戻って警察署までついて行く。

出来すぎにもみえる湿っぽさ、なんとも歌いようがない。





新宗教に一旦はまり込むとそこから脱出できないものか。恐ろしいまでの信仰心だと感ずる。

教祖と其の取り巻き連中は其の上で贅沢三昧気楽な生活をしている様子が推測される。

苦労しているのは信者達である。おカルトは怖い。









この日の内閣改造の吉凶も、天のみぞ知る
せめてもの華は、副総理の岡田克也氏だ






平成24年1月14日の天声人語よりの引用


確かに元日は日曜だった。

日曜で始まる月は13日が金曜日になるが、「13金」が不吉とは限らない。

「12木」や「14土」と同じくらい幸運、同程度に不運だろう。

この日の内閣改造の吉凶も、天のみぞ知る

▼〈鳴動をするには山が小さすぎ〉白川順一。

去年の改造を詠んだ川柳が、悲しくも引用できる。

問責された防衛相や消費者相は去った。

せめてもの華は、副総理の岡田克也氏だ。


野田首相は国会への備えを固めて、一体改革に突き進むらしい

▼小沢一郎氏に近い「失敗大臣」を外し、脱小沢の「愛すべき堅物」を迎える人事、民主党の経験則では凶だ。

小沢グループが黙っていようか。

他方、党内が荒れても「ネバーギブアップ、消費税はアップ」という首相の決意もはっきりした。

怨念と信念の激突である

▼増税には注文もあるが、首相の覚悟やよし。

数を握る小沢氏に気を使い、民主党は持てる力を党内融和に費やしてきた。

政権交代が色あせた一因だろう。

岡田氏の起用が、内向きを改める一歩になればいい

▼今度は野党の度量が試される。

政権党であってもなくても、眼前に山積みされた難題は急を要するものばかり。

いいかげん、壊すより創る、前に進む政治を見たい

▼ちなみに、4月と7月にも「13金」がある。

危機は春だ、いや夏だと解散政局の観測が飛び交うけれど、改革の道筋もつけずに信を問うては不毛な政争が続くだけだ。

権力抗争が政治に活力をもたらすという伝説はもはや、不吉な迷信のたぐいである。





現在自民党も民主党も変わりが見えなくなってきている。それて゛いて政権を維持したく協力しようとしていない。

何のための政治か 誰の為の政治かが判らなくなってきている。

権力闘争に終始しているようだ。政権奪取が政治の目的になってきている。世界的な流れか。

立派に野党として努めることの出来ない政党が,与党として勤められることが出来るか胸に刻んでほしいものだ。









どんど焼きのことを左義長(さぎちょう)と呼ぶ
飾りなどを持ち寄って燃やす小正月の火祭りで
きのうから今日にかけて行う所が多い







平成24年1月15日の天声人語よりの引用


どんど焼きのことを左義長(さぎちょう)と呼ぶ。

松飾りなどを持ち寄って燃やす小正月の火祭りで、きのうから今日にかけて行う所が多い。


句題としても好まれる。

俳句界の長老、金子兜太さんの一句が胸に浮かぶ。

〈左義長や武器という武器焼いてしまえ〉

▼南方で辛酸をなめた戦中派の、不戦への志が凝縮された近作は、多くの日本人の共感を呼ぼう。

だが平和国家の理念と裏腹に、武器をめぐる国内の事情がきな臭い。

年越しのどさくさに紛れて先月末、政府は武器の輸出を原則禁止する「武器輸出三原則」を大きく緩和した

▼戦後の日本は平和憲法を抱(いだ)き、不戦の歳月を刻んできた。


三原則はその看板の一つといえる。

なのに議論らしい議論もないままの、野田政権の面舵(おもかじ)いっぱいである

▼安全保障や国内の防衛産業に利点はあろう。

しかし三原則によって培われてきた「平和国家」のイメージと信頼は軽くない。

理念をうっちゃり、ひいては「死の商人」にもなりかねない、なし崩しへの一歩を素知らぬ顔で踏み出した。

自民党もこれほどは緩めなかった

▼谷川俊太郎さんの詩句を思い出す。

〈誰が殺すのか? 無名の兵士を 目に見えもしない国境の上で/誰が造るのか? 

冷(つめた)くなまぐさい銃を 子供を愛撫(あいぶ)するその手で〉。

言葉の一閃(いっせん)が、人の内なる「魔」を照らしだす

▼人同士が殺したり殺されたりしてきた歴史と決別をする。

その志を夢想と冷笑したくはない。

理念の首を絞めて殺す現実追随の政治こそ危うい。

民主党は大丈夫か。




武器があるから悲惨な戦争が起きる。まずあらゆる武器は焼き払ってほしい。武器商人が跋扈するようでは

政権担当能力者として失格だ。

武器に費やす費用を一般市民に与えればどれだけに豊かな生活ができることか。




いつもこの季節に東洋大学から届く「現代学生百人一首」が今年で25回になった






平成24年1月16日の天声人語よりの引用

 いさぎよい紅一点。

機械科で男子の中に女子一人それを覚悟で目指す夢あり〉と山口県の高校1年水津梨亜奈(すいづ・りあな)さんは詠んだ。

愛知の高3曽山真帆さんは〈駆け寄られ「せんせい、あのね」と言われたらさらに高まる保育士の夢〉とうたう

▼いつもこの季節に東洋大学から届く「現代学生百人一首」が今年で25回になった。

繊細に、粗削りに、過ぎゆく青春を三十一文字(みそひともじ)にとどめた応募は累計で100万首を超える

▼今回はやはり震災を詠む歌が目立つ。

被災地となった故郷を前にして震える母の肩を支える〉高2辻本有紀。

被災地にゆかりのない人も惨状に胸を痛めた。

顔知らぬ名前も知らぬ人達に生きててほしいと願った三月〉高2門脇優衣(ゆい)

▼そんな厳しい時代だが、若い感性はしなやかだ。

夏空に白くたなびくバスタオル遥(はる)かに見える雲と重なる〉高3高橋昂太郎。

飲みかけのラムネのビンを傾けるガラスのなかで揺れた夏空〉高1山内(さんない)志織

▼とはいえ頬杖をつくことも。

〈いつの間に大人と呼ばれる歳になりあたしはわたしに置いてかれてる〉大学2年結城舞子。

さびしいときには〈「おかん、おれ」意味なく電話してしまいテレカが尽きる寮のおきまり〉高2小見山智

▼もちろん人を恋う歌も多い。

〈会えるかな淡い期待をそっと抱きあの道今日も遠回りする〉高3十川栞(そがわ・しおり)。

小学生の部に〈雨を行く新幹線の窓ガラス走れ走れ雨つぶねずみ〉5年小林真夕(まゆ)。

情景が目に浮かぶ。

横に走るねずみ君たちを応援したくなる。




なかなかに五七五七七に収める文章は簡単そうでやってみようとすると難しいものだ。

いつまでも わかくいたいと くをつくる じぶんにむかい なさけない

読むのは簡単だが作ることは大変だと実感する。








東日本大震災は、犠牲者の数や被害規模で、戦後の自然災害史を塗り替えてしまった
3・11に「上書き」されることなく1・17が巡り来た







平成24年1月17日の天声人語よりの引用


東日本大震災は、犠牲者の数や被害規模で、戦後の自然災害史を塗り替えてしまった。

されど一つ一つの天災の、悲しみの記憶までは置き換えられない。

3・11に「上書き」されることなく1・17が巡り来た

▼17年になる。

それは、中継される津波と同じ歯がゆさだった。

白む空に立ち上る幾筋もの煙、横倒しの高速道路。

テレビで見入った惨状を忘れない。

異国で何もできない自分が悔しかった

▼阪神大震災に駆けつけたボランティアは、発生2カ月で100万人を数えた。

息の長い支援が要る東北でもこれまでに90万人以上が参加したが、厳冬を迎え、活動数は1日千人を切っている。

人手が要る作業が一服したこともあるようだ

▼ボランティア熱が冷めたわけではない。

東北で活動した学生445人に本紙が聞いたところ、再び行こうと思う人が95%に達し、87%が満足を得られたと振り返る。

被災者や仲間との出会いは大きい

▼調査に協力した阪大大学院の渥美公秀(ともひで)教授が言う。

「お客さんモードを脱し、被災者本位で自ら動き、本当に再訪する。

そうした社会をどうつくるかです」。

神戸からつないだ人助けの知恵は、上書きではなく、書き足していくよりない

▼阪神がボランティア元年なら、こんどは一つ進んだ新年にしたい。

消えた命や景色とともに、みちのくに集った無名の善意と教訓を語り継ごう。

季節が移れば、潮をかぶった田畑での援農もあろう。

受験や就活が首尾よく終わった皆さん、早春の東北はどうだろう。





自然の恐ろしさを3.11の東大震災で体験した。地震の恐ろしさ 津波の恐ろしさ さらには放射線被害の深刻さをまざまざと

見せつけられた気持ちでいる。もし昔のように何も伝達手段のない時代なら京都にいるだけでは実感は少ない。

貞観時代のような科学的に地震 津波の原理が判らない時代ならば神の恐ろしさを強めることになるだろう。

清和天皇が出家された気持ちも判る。摂関政治にも嫌気をもたれたのかもしれない。余りにも若い。









東京の乾燥注意報は33日連続、きょうもなら観測史上の3位に並ぶという






平成24年1月18日の天声人語よりの引用


季節外れをお許し願い、幸田文(こうだ・あや)の随筆を引く。

「多少の歩きにくさや、袖裾(そですそ)のよごれなどはあるにしても、

一年に一度の、梅雨(ばいう)期という大きなうるおいの中に、ずっぷりと身を漬けたいという気になる」

▼「青さも潤沢、水も潤沢な六月の旅が私は好き」とつづった和装の雨は、読むだけで心が潤う。

そうでもしたいほど、首都圏はカラカラだ。

東京の乾燥注意報は33日連続、きょうもなら観測史上の3位に並ぶという。

「ずっぷり」なんて欲はかくまい。

ぱらりとでも一雨ほしい

▼街路樹の枝に残る葉を軍手でもむと、たちまち茶色の粉になった。

「東京砂漠」の歌が浮かぶ。

これまた記録的な雪に覆われた日本海側、北海道の皆さんには悪いが、乾けば乾いたで不都合が多い

▼乾と寒の取り合わせは、火事にインフルエンザ、のどの痛み、肌荒れの災いを呼ぶ。

暖房の屋内はなお乾き、お年寄りは脱水症状がこわい。パソコンの敵、静電気も飛ぶ

▼気象庁によると、1月の東京の平均湿度は、21世紀の最初の10年間で45%だった。

前世紀の同じ期間は66%だから、乾いたものだ。

雑木林や田畑を潰し、地面をコンクリとアスファルトで固めた報いだろう。


温暖化と同じく、不都合の多くは身から出たさびである

▼今週末、太平洋側にもお湿りの予報が出ている。

枕詞(まくらことば)は「恵みの」でも、それに続くのは「にわか雨」かもしれない。

せいぜい心まで干からびぬよう、のどが喜ぶミルクティーでもすすり、気長に冬型の崩れを待つとする。



乾燥はインフルエンザ 火事などに悪い。自然界をコントロールする科学は地震 台風 大雨 津波 乾燥  猛暑を克服する科学は

まだまだ発達しないのだろうか。自然界の営みに対して人間は無力なのだろう。

超能力はありえない。







比例80減、小選挙区5減という民主党の減量プランは、大政党を利するお手盛りにみえる
面倒でも、一票が重すぎる選挙区をとことん統廃合すれば、格差の解消と減量の一石二鳥だろう







平成24年1月19日の天声人語よりの引用


アブラハムなる名を聞いて、「おなかの廻(まわ)りにポテンと脂肪のついた男」を想像したのは作家の向田邦子だ。

油とハムのコンビが肥満の悪友なのは疑いない。

好物のハムカツと泣く泣く絶交して減量を果たした当方、断言できる

▼偉そうに続けると、ダイエットの眼目はダラダラやらぬこと。

減量の先送りは大病につながる。

コラム的には都合のいいことに、国会と減量は英語で同じつづり(Diet)である。

「ダイエットのダイエット」を急ぎたい

▼比例80減、小選挙区5減という民主党の減量プランは、大政党を利するお手盛りにみえる。

面倒でも、一票が重すぎる選挙区をとことん統廃合すれば、格差の解消と減量の一石二鳥だろう。


一気が無理なら、消費増税のように段階を踏めばよい

▼定数減の節約効果は、1人につき年7千万円前後、85人で約60億円になる。

少々の歳費カットと同様、ハムカツの衣を薄くする程度の甘いダイエットではあるが、けじめの意味はある

▼本気で身を切るつもりなら、政党交付金が早かろう。

企業献金に代えるという触れ込みはどこへやら、共産以外の各党が献金を受けながら、議員数などに応じて年320億円を山分けしている。

これを1割削るだけで、議員40〜50人分の経費が浮く

▼もはや頭数(あたまかず)のためのバッジは要らない。

国民の幸せを考え、まともに働く議員のために定数を目いっぱい使う。

ここに、国会ばかりか政治の再生がかかる。

減量法を間違えると、この国は太ったまま終わる。



国政では地域選出だとどうしても大局的な観点が薄くなり 自己の利益が優先されることが多くなってくる。

こんな人がと思うような人が地域のために利益誘導に長けていれば選出される可能性が増えてくる。

一人しか選出されない選挙区だけではいけない。地域 党利に拘わらない人が選出できる仕組みは残すべきである。








関西電力の大飯(おおい)3、4号機について、原子力安全・保安院の吟味はどうやら「合格」らしい。
首相や地元が決断すれば、運転再開となる






平成24年1月20日の天声人語よりの引用


受験シーズンに合わせたように、原発のストレステスト(耐性評価)で初の判定が出た。

関西電力の大飯(おおい)3、4号機について、原子力安全・保安院の吟味はどうやら「合格」らしい。

首相や地元が決断すれば、運転再開となる


▼ただ、電力各社の「答案」には緩さも目立つ。

大飯の再稼働に反対する人々は経産省の専門家会合に押しかけ、激しく傍聴を求めた。

「甘い採点」への根深い不信ゆえだろう

▼国内の原発54基のうち49が点検や事故で止まっている。

残りも春までに検査に入り、とうとう全基が停止す
る。

再稼働がないまま猛暑を迎えたら、関西あたりはひどい電力不足だと、業界は思案顔だ

▼東京電力が発表した企業向けの大幅値上げも、原発が止まるとこんなにコストが上がる、との「意見広告」にみえる。

政府は家庭用の値上げも認めるようで、こちらは10%の攻防だとか。

停電と値上げで脅されている気になる

▼原則40年で廃炉とする法案は、20年までの延長を例外的に認めるそうだ。

これが「原則60年」になっては困る。

老朽旅客機の低空飛行にも似て、めでたい長寿ではない。

落ちたら終わりだから、会社にしてもこれ以上の経営リスクはあるまい

▼原発事故の災いは、核反応のごとく連鎖する。

汚染された砕石は新築マンションに化けて出た。


放射線が嫌われ、がれきの処理もはかどらない。

そんな日本で生き続ける幼い顔を思えば、10年でも長いのだ。

いささかの不便は甘受しても、原発との腐れ縁を絶ちたい。





原子力発電は人間の能力を超しての災害をもたらすので全廃すべきである。

太陽発電 地熱発電 風力発電 波発電などの自然力を生かした発電を勧めるべきである

蓄電機の進歩発達も電気供給に革命的な進歩をもたらすと思う。







歌の一部を墨書きした平安後期の土器片が、三重県明和(めいわ)町の斎宮(さいくう)跡(あと)で出土した
指先ほどの字で「ぬるをわか」、裏には「つねなら」。






平成24年1月21日の天声人語よりの引用

ひらがなはやさしい。

易しいだけでなく、優しい。

どの文字もアメ細工の曲線美、連ねればひと筆書きの甘露となって流れる。

平安時代の初期に生まれ、主に女性が用いたので女手(おんなで)とも呼ばれた

▼その47字を重複なしに並べた「いろは歌」は、平安から昭和の世に至るまで、手習いの友だった。

〈色は匂(にほ)へど散りぬるを〉と口ずさみ、「いろはにほへとちりぬるを」とつづる

▼歌の一部を墨書きした平安後期の土器片が、三重県明和(めいわ)町の斎宮(さいくう)跡(あと)で出土した。

指先ほどの字で「ぬるをわか」、裏には「つねなら」。


ひらがなで書かれた歌詞では、最古の確認例という。

本日より、斎宮歴史博物館で公開される

▼斎宮には、伊勢神宮に仕える皇女が代々起居した。

割れて見つかった素焼きの小皿は、女官の一人が「いろは」の練習に使った一枚とみられる。

紙が貴重な時代である。

捨てる前の器を流用したらしい

▼500人が働く斎宮に、女官は40人ほどいたと伝わる。

帝(みかど)の命(めい)により、京から赴任してくる皇女様。


教養を高めて、しっかり支えなきゃと、地元雇いの娘たちは「職場研修」に励んだに違いない。

〈我が世誰ぞ常ならむ〉をつぶやきながら、一心に筆を運ぶ垂れ髪を思う

▼先生は皇女その人かもしれない。

覚えたての字を、女官は身内に教えもしただろう。

和歌や日記の宮廷文化が、地方に広まる様が見えてくる。

ざらりとした土肌に淡く残る、たおやかな筆跡(ふであと)。

一人なぞって、浮世の憂さをしばし忘れた。

ひらがなはやさしい。



かな文字が古くから存在することを実証している。







冷たさは、寒さと似ているようで違い、指の先から伝わってくる
この国では、陽光に恵まれた冬晴れ地帯と雪国とが背中を合わせている





平成24年1月22日の天声人語よりの引用


「冷たい」という言葉は「爪が痛い」から来ているのだという。

国語学者の故・金田一春彦さんによれば、「爪」とは今の爪ではなく、昔は指先全体を言ったそうだ。

たしかに、冷たさは、寒さと似ているようで違い、指の先から伝わってくる

▼東京郊外に積もった雪は、きのうの朝には消えていた。


続く氷雨は冷たかったが、この程度の雪でニュースになるのが雪国に申し訳ない。

わずか数センチなど、豪雪の地ならちりが舞ったほどだろう

▼北海道の岩見沢市では先日、観測史上最高の194センチの積雪を記録した。

旭川市郊外では一昨日に零下30度を下回った。

季節は二十四節気の大寒を過ぎて、冬将軍の吐く息はいよいよ白い。

次の週も日本海側は雪の予報が連なっている

▼この国では、陽光に恵まれた冬晴れ地帯と雪国とが背中を合わせている。

たとえば上越国境を抜けるのに列車で1時間とかからない。

そのわずかな距離で、人々の暮らしも、雪を見る目も一変する

▼古典をひもといても、〈いざさらば雪見にころぶところまで〉と江戸の芭蕉は雪で童心に帰る。

片や雪国の一茶は「白いものがちらちらすれば、村人らは、悪いものが降る、寒いものが降ると口々にののしりあう」と雪を憎む。

〈雪ちるやおどけも言へぬ信濃空〉といった句も詠んだ


▼この意識の差は、今も根っこでは変わらないように思う。

冬のきびしさに磨かれた北国の民俗風土は美しいが、それとて暖地の感傷かもしれない。

どうか中庸の寒であってほしい。




日本列島は南北に細長いので暖かい所と寒い所との差が激しい。

 




米イーストマン・コダックの経営破綻(はたん)に、20世紀が遠ざかる思いの人は多かろう





平成24年1月23日の天声人語よりの引用


「泥と炎」と形容されたベトナムの戦場で、まず名をあげた日本人カメラマンは岡村昭彦だった。

実は写真は素人で、通信社と契約して赴任したときフィルムの詰め方を支局長に聞いたという逸話を残す。

だが活躍はめざましく、写真家の憧れだった米国のライフ誌を矢継ぎ早に飾った

▼同誌は岡村を「ロバート・キャパを継ぐ戦争写真家」と絶賛した。

本人いわく「フィルムの詰め方は知りませんでしたが、何にレンズを向けるべきかは知っていました」

――デジタルカメラ全盛のいま、こんな伝説はもう生まれない

米イーストマン・コダックの経営破綻(はたん)に、20世紀が遠ざかる思いの人は多かろう。

その歴史はフィルムカメラの歴史でもあった。

キャパも愛用していた。

人類初の月面も記録した。

あの黄色い箱のフィルムは、近代の栄光と悲惨をつぶさに目撃してきた

▼音声付きの映画フィルムも開発した。

アカデミー賞映画のほとんどは同社製で撮られたという。

皮肉なことに、フィルムの栄光を忘れ得ない経営によって、デジタル時代から取り残されていった

▼ホンダの創業者本田宗一郎が会社経営を「槍(やり)」にたとえていた。

突くよりも引くスピードが大切だ、と。

方向転換の決断の大切さとともに、ひとつの成功にいつまでも酔うなという教訓だろう

▼おごれる者は久しからず。

それを皮肉って、おごらずとても久しからず、とも言う。

強い者が生き残るのではない。

適応できた者が生き残る。

茨(いばら)の道をどの企業も歩んでいる。



明治創業のコダック社が経営破たんするとは驚きである。時代の移り変わりの大変なことが良く判る。








英国首相だったチャーチルはノーベル賞をもらっている
長大な「第二次大戦回顧録」で文学賞を射止めた
きょうはチャーチルの47回目の命日になる

野田首相が年頭の会見でチャーチルを引き合いにしたのも
いまの国難と不退転を重ね合わせてのことだろう。






平成24年1月24日の天声人語よりの引用


英国首相だったチャーチルはノーベル賞をもらっている。

政治家だから平和賞と思われがちだが、長大な「第二次大戦回顧録」で文学賞を射止めた。

国家存亡の非常時に首相に就任した1940年5月10日、深夜のベッドでの感慨をこう記している

▼「過ぎ去った人生のすべては、ただこの時、この試練のための準備にすぎなかったという気がした」。

ときに65歳。

戦端は開かれ、ヒトラーは欧州を席巻しつつあった。

命運の尽きかけた英国を、このリーダーの不退転の信念が救うのは歴史の示すところである

▼野田首相が年頭の会見でチャーチルを引き合いにしたのも、いまの国難と不退転を重ね合わせてのことだろう。

災害に加え、国の借金はとうに危険水域にある。社会保障は揺らぎ、このままでは日本は根腐れしかねない

▼野田さんの思いもチャーチルの就任時に引けは取るまい。

だが数々の演説で民衆を率いた名宰相と違い、胸に届くものが乏しい。

きょうからの通常国会、まずは施政方針演説で、どれだけ言葉を響かせられるだろうか

▼もっとも自民党にしても、「偽りの政権に終止符を」などと解散を叫ぶばかり。

国会は荒れ含みといい、貧寒ぶりに昨今は議会制民主主義そのものへの失望が膨らんでいる

▼きょうはチャーチルの47回目の命日になる。

享年90の辞世の言葉「もうすっかり、いやになったよ」は最後のユーモアでもあったろう。

同じ言葉が政治への嘆き節となって口にのぼる。

そんな日本ではやりきれない。



チャ−チルのような総理大臣が出現して欲しいと願うのだが。?




滋賀県大津市長に女性最年少で越(こし)直美さんが選ばれた
嘉田(かだ)由紀子さんが知事を務める滋賀は、
これで県と県都のトップに女性が立つ






平成24年1月25日の天声人語よりの引用


孔子と弟子たちの言行を記した「論語」には「女」という文字が19回登場するそうだ。

とはいっても、うち17回は「汝(なんじ)」の意味で使われ、女性という意味では2回しか出てこない。

その一つが、よく知られた「女子と小人(しょうじん)とは養い難し」だという

▼中国文学者の一海(いっかい)知義さんが故・加藤周一さんとの対談で述べていた。

天下国家は男の仕事、という意識だろう。

いわゆる儒教文化圏の日本で、議会や経営への女性参加が少ない遠因は、その辺と無縁ではなく思われる

▼女性の国会議員は増えてはいるが、衆院ではまだ11%しかいない。

お隣の韓国より低く世界で120位あたりにとどまっている。


そうした停滞に風を吹き込む朗報だろう。

滋賀県大津市長に女性最年少で越(こし)直美さんが選ばれた

▼女性首長の率は国会議員より寂しい。

知事は47人中3人、市長は787市でわずか15人。

嘉田(かだ)由紀子さんが知事を務める滋賀は、これで県と県都のトップに女性が立つ。

全国初の二人三脚となる

▼米国で学び、働いた越さんは「ガラスの天井」という言葉をご存じだろう。

女性の進出を阻む見えない障壁を言う。

米国でも、この天井に頭をぶつけて大勢が沈む。

障壁を青天井に変えていくパワーを、ここは期待したい

▼「鉄の女」と呼ばれたサッチャー元英首相が言ったそうだ。

「政治の世界では、言ってほしいことなら男性に、実行してほしいことなら女性に頼むことです」(『名言の森』から)。

さわやかな手腕を、存分に振るってほしい。


鉄の女」と呼ばれたサッチャー元英首相が言ったそうだ。

「政治の世界では、言ってほしいことなら男性に、実行してほしいことなら女性に頼むことです」と

女性への期待から大津市長になられたのだろうか。? 善政を願いたいものです。





その乾坤一擲(けんこんいってき)の消費増税は、
ここにきて、不人気がいっそう高じている
このままでは国が危ないと誰もが考えている。





平成24年1月26日の天声人語よりの引用


国や民族によらず、増税が喜ばれることはまずない。

こんな笑話がある。

ある国の果物店で筋骨隆々の若者がレモンをぎゅっと握り、見事にジュースをしぼって見せた。

若者はジムで体を鍛えていると自慢した

▼そこへ痩せたご老体が現れて、若者がつぶしたレモンをチョイと握った。

すると残った汁が滴(したた)り、最後の一滴までしぼり切ってしまった。

驚く面々に老人いわく。

「なに、むかし税の役人だったので」。

万国共通で笑いを取れるネタらしい

▼むろん税吏が悪者ではない。

税制は政治が決める。

きのうの川柳欄が、人気ドラマをもじって野田首相を「課税夫(かぜいふ)のノダ」と一刺(ひとさ)ししていた。

その乾坤一擲(けんこんいってき)の消費増税は、ここにきて、不人気がいっそう高じている

▼このままでは国が危ないと誰もが考えている。

なのに世論調査では賛成より反対が多い。


つまり土壌はあるのに支持が育たない。

政治への信頼が薄いためだろう。

新たな負担は真実「安心」の保証になるのだろうか、と

▼税率を10%にしても足りないと多くが感じている。

将来さらに税負担が増えて、レモンのようにしぼられる。

その可能性をリーダーの胸三寸に隠されては信頼からは遠い

▼おとといに続いて元英首相チャーチルに登場願えば、第2次大戦の苦闘の時にこう演説している。

「英国民は事態がいかに悪いかを知らされることの好きな唯一の国民である」。

むろんユーモアだが、国民に事実を説明する政治家の勇気を垣間見る。

ない物ねだりと思いたくない。









その火星から隕石(いんせき)が飛んできたという。
去年モロッコに落ちたのを国際隕石学会が調べ、そう見られると認定したそうだ







平成24年1月27日の天声人語よりの引用


太陽系の他の惑星で、地球人に一番なじみが深いのは火星ではないだろうか。

19世紀に英国の作家H・G・ウェルズは「宇宙戦争」を書いた。

地球を襲うタコのような火星人は、人類が思いめぐらす宇宙人の原型になってきた

▼火星には運河があるという、まことしやかな説もあった。

70年ほど前には、名優にして名監督のオーソン・ウェルズが一騒動起こした。

臨時ニュースのように仕立てた「火星人襲来」のラジオドラマで、事実と思った人々がパニックになったのはよく知られる

▼古来、あれこれと想像をかきたててくれた。

その火星から隕石(いんせき)が飛んできたという。

去年モロッコに落ちたのを国際隕石学会が調べ、そう見られると認定したそうだ


▼何かの物体が火星に衝突したはずみで飛び出し、長く宇宙をさまよった末に地球に来たらしい。

♪故郷(ふるさと)の星を離れて 汝(なれ)はそも空に幾歳(いくとせ)……。

唱歌「椰子(やし)の実」を替えて歌う天界一人旅である

▼そして、落ちたところは人の世。

すでに金の価格の10倍ほどで売買されたそうだ。

集められた破片は計7キロというから、単純計算すれば億の桁になる。

隕石は俗塵(ぞくじん)にまみれた気分か、それとも思わぬ価値に鼻高々だろうか

▼冴(さ)えわたる冬の空で、赤く光る火星が2年ぶりに地球に接近中だ。

その星をめざして米の探査機が飛んでいる。

月の裏に結集して侵略を目論(もくろ)む火星人はいなかったが、生命存在の可能性はあるそうだ。

「好奇心(キュリオシティ)」と名づけられた探査機。

さて何を見つけてくれるだろう。





火星の隕石(画像)








「あの女(ひと)」とは、最後まで避難を呼びかけた宮城県南三陸町の職員、遠藤未希さんのことだ
その遠藤さんが、埼玉県の道徳の副読本に載るそうだ
県が独自に作り、この4月から公立の小中高校で使われる







平成24年1月28日の天声人語よりの引用


東日本大震災のあと、数多くの言葉が紡がれてきた。

印象深かったひとつが、詩人高良(こうら)留美子さんの一作だ。

「その声はいまも」の冒頭を引く

▼〈あの女(ひと)は ひとり/わたしに立ち向かってきた/南三陸町役場の 防災マイクから/

その声はいまも響いている/わたしはあの女(ひと)を町ごと呑(の)みこんでしまったが/その声を消すことはできない〉。

津波を擬人化した「わたし」。

「あの女(ひと)」とは、最後まで避難を呼びかけた宮城県南三陸町の職員、遠藤未希さんのことだ

▼その遠藤さんが、埼玉県の道徳の副読本に載るそうだ。県が独自に作り、この4月から公立の小中高校で使われる。

その教材に「天使の声」と題して収録されるという


▼あの日、被災地では、それぞれの使命を果たそうとした人たちが尊い命を落とした。

警察官や消防署員、消防団員もいた。遠藤さんのいた防災対策庁舎では41人の町職員らが亡くなった。

個々の気高さを示しつつ、やはり痛恨のできごとには違いない


▼道徳にせよ報道にせよ、美談にとどまるなら死者は浮かばれまい。

高良さんの詩は、ひとりの女性への静かな敬意に満ち、人間が自然への畏怖(いふ)を忘れてきたことへの悔悟が流れている。

美談を超えていく言葉の勁(つよ)さがある

▼こう結ばれる。

〈わたしはあの女(ひと)の声を聞いている/その声のなかから/いのちが甦(よみがえ)るのを感じている/

わたしはあの女(ひと)の身体を呑みこんでしまったが/いまもその声は わたしの底に響いている〉。

鎮魂と新生の声が聞こえる。





町を救った南三陸町の防災無線遠藤未希さん(動画)







去年の貿易収支が31年ぶりの赤字と聞いて、一時代の終わりを思った。
原材料を買い、優れた製品にして稼ぐ




平成24年1月29日の天声人語よりの引用


名選手の去り際はそれぞれに味がある。

世界のホームラン王は「王貞治としてのバッティングができなくなった」と目を潤ませた。

その年も30号には届いたが、ファンの落胆は誰より本人が知っていた。

看板技の陰りは、選手生命さえ決する

▼去年の貿易収支が31年ぶりの赤字と聞いて、一時代の終わりを思った。

原材料を買い、優れた製品にして稼ぐ。

技術と品質で戦う輸出立国こそ日本の命脈なのに、お家芸が思うに任せない


▼前回の赤字は王さん引退の年、第2次石油危機の後だった。

エネルギーは鬼門だ。

去年は原発事故で火力用の燃料輸入が急増した。

輸入原油が通過するホルムズ海峡の緊張で、価格の先高感も強い

▼輸出はより厳しい。

震災による生産減は去年限りでも、円高で工場が外に逃げる。

頼みの中国市場は不安定、韓国の猛追で商品競争力とて絶対ではない。

海外からの利子や配当で赤字が埋まらなければ、外国に借金するほかない


▼「真っすぐが通用するうちに、次の変化球を覚えておけよ」。

西武のエースだった東尾修さんは、後輩の工藤公康投手にそう助言したという(『トップアスリート名語録』桑原晃弥(てるや)著)。

直球とカーブ主体だった工藤さんは球種を増やし、30年近く現役を通した

▼さて、輸出に代わるべき日本の「決め球」である。

円高に乗じて外国企業を買うのも一計だが、まずは空洞化を阻み、財政赤字を減らす守備固めを急ぎたい。

幸いにも、いや不幸にしてと言うべきか、国に引退はない。



貿易立国で生きてきた日本が貿易収支赤字は痛い。円高に加え中国 韓国などと競争を余儀なくされているようだ。







根菜の季節である
通年で出回るダイコンやニンジンも滋味を増す
サトイモ、カブ、レンコンあたりを乱切りにして炊けば
和洋中どんな味つけでもうまい





平成24年1月30日の天声人語よりの引用



先週の朝日俳壇に、清冷かつ揺るぎない句があった。

〈大根(だいこ)引く大地偽りなかりけり〉。

作者の枝澤聖文(えだざわ・きよふみ)さんが詠んだのは土の力だという。

丹精した畑は裏切らない。

手にする恵みの、何という白さ

▼根菜の季節である。

通年で出回るダイコンやニンジンも滋味を増す。

サトイモ、カブ、レンコンあたりを乱切りにして炊けば、和洋中どんな味つけでもうまい。


地中で肥える野菜たちのほっこりした土の匂いこそ、偽りなき大地の刻印だ

▼作家水上勉さんが随筆の中で、料理番組の板前さんに注文をつけている。

小芋の皮のむき方が厚すぎると。

「これでは芋が泣く。

というよりは……冬じゅう芋をあたためて、香りを育てていた土が泣くだろう」

▼ゴボウの芳香にしても、皮に近いほど深いという。

大地と「交感」してきた証しである。

そうした履歴もろとも食すのが、けんちん汁でも筑前煮でも、旬に対する礼儀のように思う

▼何にせよ、寒さに耐えたものには凜(りん)とした強さが宿る。

ふきのとうの苦みや、雪割草(ゆきわりそう)の若紫が五感に染みるのは、越冬の喜びと響き合うからだろう。

酷寒の先の安息を願い、心は凍(い)てつく被災地に飛ぶ。

仮の宿でも、鍋いっぱいの根菜が湯気を立てていようか

▼寒あれば暖があるように、天地がもたらすのは災いだけではない。

一周忌が営まれる頃には、南から柔らかな陽光が戻り、地の恵みを重ね着したタケノコが出る。

悲しみにひと区切りはないけれど、手を携えて前に進みたい。


まっさらの春が待つ。



冬の寒い時期は煮炊きしたもので身体を温めるのが一番だ。






春を待つ1月の言葉から





平成24年1月31日の天声人語よりの引用

 このあいだ年をまたいだと思ったら、早くも最初の月が尽きる。

視界は不良ながら、あたたかい火と灯と人に励まされて春を待つ1月の言葉から

▼明けて元旦、岩手県陸前高田市では多くの人が「奇跡の一本松」から昇る初日を見つめた。

高田松原を守る会の会長鈴木善久さんは「希望、勇気、励ましを与え続けてくれた一本松にありがとうと言いたい。

復興に向けてがんばれるいい年であってほしい」

▼3・11のあと初めて迎える1・17。

神戸の被災者金田真須美さん(52)は、宮城県石巻市の人たちとこの朝を迎えた。

3人の子を亡くした遠藤伸一さん(43)に「ほら、こうしてだんだん夜が明けてくるでしょう。

未来に向けて、どうか、新たな一歩を踏み出して」

▼オリンパスの不正を追及してきたマイケル・ウッドフォード元社長。

やるかたない思いを胸に英国へ帰って行った

▼2人の識者が似たような懸念を語っていた。まず半藤一利さん。

「日本人は実は右か左か二者択一が好きで、どちらかに大きく流れ、集団催眠にかかりやすい。

閉塞(へいそく)感が出てくると、強い者への待望論が生まれる」。

内橋克人さんは「(国民が)『うっぷん晴らし政治』の渇望を満たそうとすれば1930年代の政治が繰り返される」、と

▼歌壇に鈴木道明さんの〈元旦の旦という文字さながらに小笠原の海に初日昇りぬ〉。

水平線から陽(ひ)はまた昇る。


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