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4月になって
春は一年のでうちで一番良い季節である。冬の寒さから次第に,暖かさと希望を膨らませて春が眼の前に現れてくる感じを受ける。
辺り一面、桜が競うように咲き誇っているようだ。日本の春はやはり桜で、辺り一面が満開となる。
桜を見ないところがないくらい日本列島を覆い尽くしているような華やかな季節だ。
毎年、同じように桜を見てもいつまでも飽きない。
桜が日本の象徴とされる意味もよくわかる。
西行法師の有名な和歌「願わくは、花のもとにて春死なむ、その如月の望月の頃」と詠った気持ちがよく理解できる。
今年の4月13日 14日 15日と京都で12年ぶり日本内科学会が催された。
二日目のシンポジウムでシンポジストの一人、宗教家山折哲雄氏がこの西行法師の和歌を引用され断食してでも、
この桜の頃に死にたいものだと,現在の延命医療医学に対しても通ずるような鋭い批判を加えられた話をされたのが大変印象的である。、
その前のシンポジストに101歳になられた日野原重明先生の流暢な講演と対比して、現在の医学・医療の在り方を教示されたように感じた。
シンポジストとして医学会で宗教家が登壇される事は比較的珍しいことのように記憶している。
昼食には鮭のおにぎり一個とフルーツジュースが紙パック一箱 お茶一ビンを長い行列してもらい食べた。
全国の何千人もの内科医が同じ昼食を食べている。
以前はランチョンゼミナが有り薬屋が主催しての弁当を食べながらの講演会の催しは無くなっている。
又、学会発表でも、研究でのスポンサーの有無を知らせるスライドが最初に入るようになった。
時代とともに学会も改善方向に向かっているようだ。
メタボリック シンドロームが健康に悪いことが強く指摘される時代 内科医の会合として
粗食を実践教授されたことに考えさせられる所があった。
又医者は、やはり誰もが宗教心を持つことの必要性を常々感じ思っていたが、改め教えられた感じである。
日本の春の桜のこの季節は誰に取っても一番良い時期であることに変わりがないものと確信する。
現在の社会が余りにも科学が発達し過ぎ,本来あるべき人間性が失われつつあるように思えて仕方がない。
本末転倒したような文明・文化が発達し過ぎることに対し、危機感を感ずるような現象が見られるようになったと思える。
その一つの例として,米国で開発され:現在使用されている無人爆撃機が、米国内から操作を遠隔操作でもって出来て朝出勤し夕方には帰宅できる
爆撃は遠く離れた外国に対して出きるようになったことである。
一方、医学の世界ではそれを応用されてのことか、過疎地での病院へ、都会の大学病院から遠隔操作でもって手術ができるようになったことは
大変な業績だと思う。軍事技術と医学の技術の発達はは表裏一体したところがある。
軍事科学がが医科学を革命的に前進させると学生時代に従軍した経験ある教授から教わった事の記憶がある。
世界で核による戦争が勃発すれは、必ず人類滅亡に至ることは必定のことである。
核の拡散が世界中に次第に広がる中、それが現実味を帯びつつある。
核の平和的利用とされての原発は世界中に蔓延する中でアメリカでのスリーマイル島 ソ連でのチェルノブイリ
それに日本の福島での原発事故が人類にとり如何に深刻なもであるかを教えてくれた。
大戦後の核爆弾製造工場をなんとか利用し続けることができないかとの発想から、原子力発電が考え出されたてきたものと思う。
核爆弾が世界中で何千発もあると言われる中で゜ 核の平和利用の美名のもと原発製造が推進され続けてきた。
次期大戦は鉄砲を担ぎ戦った第二次大戦とは違った世の中に変わっていることを現在の政治家達は認識しているのだろうかと疑問を持つことがある。
第三次大戦は人類滅亡の戦争に至ることは間違いなしである。
現在、世界平和のた存在する国連がアメリカ国内に存在して,アメリカの意向を強く影響受ける限りに於いて、真の国連の働きはできないと感じている。
「核の平和利用」があり得ないことと同じように,「核による戦争抑止」もあり得ないし、世界の平和も又あり得ないことが徐々に明らかになってきている。
アメリカにオバマ大統領就任している間になんとか,人類が平和的共存できる糸口が見つけ出せればと願っている。
日本の政局は混迷している。小沢氏のような人物が政局波乱要因では日本の将来はまだまだ暗い。
大阪市の橋元市長も又政局の台風の目とされているが,それに伴う日本の右傾化を恐れる。
政治塾が、地盤 看板 カバンの代わりに議員を養成し輩出すると言われだして来ているが、まだまだしぶとく地盤 看板 カバンの威力は続いている。
政治家を取り巻いた政治屋の勢力はまだまだ健在のままだと感じている。
「中東(アラブ)の春」にも次第に混迷の様相が明らかになりつつある。アメリカ経済が世界に軍隊を派遣するだけの力が弱まりつつあるが、
日本はまだまだアメリカが手放してくれずに「日米同盟」という美名の形で、アメリカに自衛隊が軍事協力して沖縄の基地は依然として変わっていない。
アメリカに対し日本からの「思いやり予算」も続きそうである。
憲法記念日の「沖縄タイムス」を読んで゜みると。
ー以下イン-タネット(沖縄タイムス社説)よりの引用-
憲法は権力に対する命令である―と、一度、口に出して言い切ってみよう。
憲法に対する日ごろのモヤモヤが吹っ切れ、憲法が頼もしく思えてくるはずだ。
強大な権力をもつ政府が国民の権利や自由を侵害しないよう、政府に対し、法的な義務や制約を課すこと。
それが憲法の基本原理である。
そのような基本原理の上に立って日本国憲法は「主権在民」「平和主義」「基本的人権の尊重」という三つの原則を掲げている。
日本国憲法が施行されてから、きょうで65年。
そのうちの25年間、施政権が返還されるまで、沖縄には憲法が適用されていなかった。
憲法という強力な後ろ盾をもたない住民は、人権を守り自治を実現するため、統治者に素手で立ち向かい、
はね返され、転んでは起き上がって、コブシを振り上げ続けた。
その繰り返しが沖縄の戦後史を形づくったといっていい。
復帰後の沖縄において憲法は、県民の期待に応える働きをしてきただろうか。
復帰から5年後、憲法施行30周年に当たる1977年5月3日、平良幸市知事は、県民に向け苦渋に満ちたメッセージを発表した。
「国民の生命と財産を守るためにあるはずの安保条約が逆に県民の生命、財産を脅かす要因になっている」
沖縄では憲法の「主権在民」が全うされているとは言い難い。
「主権在米」「主権在官」というしかないような倒錯した事態が、基地問題をめぐって、しばしば起きている。
米軍への優遇措置を盛り込んだ新日米安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)第6条に基づき、
日本とアメリカ合衆国との間で締結された地位協定。主に在日米軍の日米間での取り扱いなどを定める
日米地位協定が、憲法で保障された諸権利の実現を妨げている。
沖縄国際大学へのヘリ墜落事故で米軍は当初、地元警察や消防を排除し、現場を管理した。
地位協定の内規がどうであれ、明らかな主権侵害である。
沖縄で頻発する地位協定がらみの問題が、もし東京で発生したら、政府や政治家、マスメディア、都民はどう反応するだろうか。
日米の高級官僚レベルの交渉で基地問題が決定され、民意が反映されないという意味では沖縄の現実は「主権在官」だ。
沖縄防衛局は、工事車両の通行を妨害しているとの理由から、米軍のヘリパッド建設に抗議する住民個人を裁判所に訴えた。
かと思うと、沖縄防衛局が、基地所在市町村の首長選挙に露骨に介入していた事実も明らかになった。
「9・11」(米国同時多発テロ)、「9・15」(リーマンショック)、「3・11」(東日本大震災と原発事故)。
21世紀に刻まれたこの三つの日付は、世界と日本を根底から変えた。
国の統治のあり方や資本主義の未来、エネルギーと環境と生命の相関関係について、一から考え直さなければならなくなった。
未来をどのように構想するか。
基地問題の解決も、この大きな変化を前提にすべきだ。
既得権に凝り固まった官僚政治の中からは、基地問題の解決策は生まれない。
日本国は自主外交はまだまだ遥か彼方にあるように思え依然として 半植民地国家のままである。
春よ、来い(動画)
さくら(動画)
(さくら)森山直太朗・森山良子 (動画)
同期の桜(動画)
さとうきび畑(動画)
群青(動画)
普天間基地(動画)
花の季節、民主党の閣僚経験者ら約40人が夜桜のもと会食したそうだ
消費増税をめぐって野田首相と小沢元代表が対立する中、党内の融和を狙ったらしい
平成24年4月12日の天声人語よりの引用
〈盗人を捕らえてみれば我が子なり〉が〈切りたくもあり切りたくもなし〉の付句(つけく)なのはよく知られる。
古い俳諧集にはさらに〈さやかなる月をかくせる花の枝〉という付句もある。
こちらはあまり知られていないが、切るに切れない気持ちはよく分かる
▼そんな花の季節、民主党の閣僚経験者ら約40人が夜桜のもと会食したそうだ。
消費増税をめぐって野田首相と小沢元代表が対立する中、党内の融和を狙ったらしい。
首相にとって小沢さんはさしずめ、命がけの目標を隠す花の枝だろう。
切りたくもあり、切りたくもなし
▼市井でも、花見のムシロに社長派と専務派が呉越同舟の図はある。
場の雰囲気は、東京で見た本紙見出し「民主重鎮 集えど花冷え」で想像がついた。
協調への見通しは立ちそうにないらしい
▼消費増税法案の成立に命をかける野田さんは、むしろ自民党の谷垣総裁に秋波を送る。
自民は協力の前提として小沢さんを「切る」よう求めている。
だが枝を切って、枝とともに散る花(議員)が多ければ、民主党は崩れかねない
▼法案審議の行方は次の衆院選の日程と密接に絡みあう。
そして増税は不人気だ。
しかし「再選されることばかり考えていると、再選に値するのが難しくなる」という箴言(しんげん)もある。
この局面、与野党を問わず、誰が政治家で誰が政治屋かに敏感でいたい
▼きのうの党首討論はまた「入り口論」を出なかった。
理は我に、非は彼に、の難じ合いではない、賢く歩み寄る度量が、政治にほしい。
昼下がり、満開の桜の下の、凍りつくような暗転である。
祇園の繁華街で人の列に車が突っ込み、次々にはねた。
7人が亡くなるという、痛ましい事故になった
平成24年4月13日の天声人語よりの引用
春らんまんの京都、祇園と桜の組み合わせで浮かぶのは、与謝野晶子の「みだれ髪」の名高い一首だ。
〈清水(きよみず)へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢(あ)ふ人みなうつくしき〉。
花篝(かがり)に照らされる夜は華やぎ、幸福感に包まれた乙女は匂いたつばかり
▼この季節、古都は宿の予約も難しいほど観光客でにぎわう。
そんな昼下がり、満開の桜の下の、凍りつくような暗転である。
祇園の繁華街で人の列に車が突っ込み、次々にはねた。
7人が亡くなるという、痛ましい事故になった
▼運転していた男性も死亡した。
原因や事情はまだ明確ではないが、ときどき意識を失う持病があったらしい。
軽乗用車ながらのこの惨状に、「走る凶器」ぶりを改めて思う。
交通戦争と言われた1970年ごろは、年に1万5千人以上が落命していた
▼去年は3分の1を下回ったが、それでも4612人もの命が失われた。
家族やまわりの悲嘆ははかり知れない。
年に約5万人の重傷者にも深刻な障害が残る人は多い。
交通戦争は終わってはいない
▼車そのものの安全性は高まったが、運転するのは人である。
「敵を知り己を知らば百戦危うからず」と孫子の言葉にある。
原因が何にせよ、車の怖さを知って安全を保つことができなかったものかどうか、悔やまれる
▼〈四条橋おしろい厚き舞姫の額(ぬか)ささやかに打つあられかな〉。
晶子の詠んだ橋のすぐ東が悲劇の現場になった。
華やぎを吹き飛ばしてカメラや靴が路上に散乱した。
突然絶たれた命の無念を、痛切に思う
南国からは「とうに散った」、北国からは「雪中でまだ蕾(つぼみ)が堅い」といただいた。
東京の季節感ばかり書いて、お叱りを受けることもある
平成24年4月14日の天声人語よりの引用
季節の話題を書いて頂戴(ちょうだい)する便りに、日本列島の「長さ」を思うことがある。
いつぞやも梅のことを書いたら、南国からは「とうに散った」、北国からは「雪中でまだ蕾(つぼみ)が堅い」といただいた。
東京の季節感ばかり書いて、お叱りを受けることもある
▼〈北国の弥生は四月〉というのが、越後育ちの詩人堀口大学の実感だったらしい。
〈そして今/四月になって、梅桜桃李(ばいおうとうり)/あとさきのけじめもなしに/時を得て、咲きかおり……〉。
最晩年に故郷をうたった詩句から、北国の遅い春の、あふれるような百花繚乱(ひゃっかりょうらん)が目に浮かぶ
▼♯梅は咲いたか桜はまだかいな――の小唄は暖地の感覚だろう。
梅から桃、そして桜の順に前線は旅立つが、手元の文献を見ると、北に行くほど時間差は縮まる。
4月下旬に東北北部でほぼ並び、5月にかけて一斉に津軽海峡を渡っていく
▼主役級の花に限らない。
辛夷(こぶし)も木蓮(もくれん)も、菫(すみれ)ほどの小さき花も、この季節、さまざまな花前線がさざなみのように通り過ぎていく。
昨日が100年の命日だった石川啄木の日記にこんな一節がある
▼〈渋民村の皐月(さつき)は、一年中最も楽しい時である。
天下の春を集めて、そしてそれを北方に送り出してやる時である〉。
5月の描写だが、ふるさと岩手の遅い春の歓喜は、堀口の詩と通じあう
▼石川啄木記念館に聞くと、いまも畑に少し雪が残り、桜は蕾が堅いそうだ。
だが、冬ざれからようやくフキノトウが出てきたという。
「天下の春を集める」まで、もういっときである。
外国メディアを招いた手前か、当局は「衛星は軌道に乗らなかった」と不首尾を認めた。
第1書記と国防第1委員長になった金正恩氏はその夕、
先代の巨像の除幕式で、何事もなかったように手を振っている
平成24年4月15日の天声人語よりの引用
鳴らし損ねた祝砲ほど惨めで気まずいものはない。
人工衛星と称する北朝鮮のミサイルだ。
本日の金日成生誕100年と孫の跡目を祝し、はるかフィリピン沖まで「長距離の弾道」を描くはずが、爆発して韓国近海に落ちてしまった。
乾杯のグラスが砕け散るように
▼外国メディアを招いた手前か、当局は「衛星は軌道に乗らなかった」と不首尾を認めた。
第1書記と国防第1委員長になった金正恩氏はその夕、先代の巨像の除幕式で、何事もなかったように手を振っている
▼飢える民をよそに、なけなしの金がまた浪費された。
約700億円とされるミサイルの費用は、年間輸出の半分強にあたり、食糧不足の3年分を賄える額という。
米国からの支援もご破算となった
▼国内では「軍事の天才」と宣伝される正恩氏のこと、赤恥を埋め合わせるため、次は核実験に及ぶという観測もある。
やけのやんぱち、打ち上げがだめなら仕掛け花火で、という了見だろうか
▼なにせ核なしでは、しがない独裁国である。
核爆弾を米本土まで飛ばせる技術を示さぬことには、外交カードがない。
かくて暴走する金王朝に、外から何を言っても空しい。
空腹の恨みから立ち上がる勇気と、それを束ねる傑物の登場を待ちたい
▼わが政府の対応もおぼつかなかった。
発射45分後の発表では防空の用をなさない。
「成功」ならとうに領空を過ぎている。
冬の花火にも似て、上げるも待つも寒々しいミサイル失敗の巻。
間の抜けたものを内外で見せられた。
さいたま地裁で死刑判決が出た連続不審死事件である
ずばりの証拠を欠き、被告も殺害を否認する難件
平成24年4月16日の天声人語よりの引用
東京あたりでもひと冬に何日か、カーテンを開けたら銀世界という朝がある。
〈不意打ちの雪の朝(あした)でありにけり〉中村宏。
音もなく降り積もる雪は、手品のような天の早業だ
▼誰の知恵なのか、論告で「雪の朝」を持ち出した検察は大胆だった。
さいたま地裁で死刑判決が出た連続不審死事件である。
ずばりの証拠を欠き、被告も殺害を否認する難件。
粗い例え話に背中を押された裁判員もいただろう
▼大意はこうだ。
「前夜は星空だったのに、朝は一面の雪化粧。
雪が降る場面を見ていなくても、夜中に降ったのは明らかです」。
間接証拠だけで罪に問えるという主張は、裁判員を鼓舞するかに聞こえた
▼3人が死の直前に会ったのは、いずれも木嶋佳苗被告だった。
死者からの大金、練炭、睡眠薬。
社会常識を頼りに、裁判員が状況証拠のジグソーパズルを組んで浮かんだ「黒い雪景色」。
「虚飾に満ちた生活のために殺人を重ねた」との結論である
▼男性観や金銭感覚を「反省」し、生き直したいと訴える女性を断罪するには、相当の覚悟と得心が要る。
裁判員の一人は、心の重さより事実の大きさが勝(まさ)ったと語った。
100日もの任期を、全員で全うした自信もあろう
▼裁判員制度の「耐久力」も試された。
もっとも、「降る雪」を語る直接証拠が一つでもあったら、市民にこれほどの負担はかけずにすんだ。
法廷らしからぬ文学的な例え話も、判決が言う被告の「不合理な弁解」も不要だった。
ずさんな初動捜査が悔やまれる。
海の安全を考え直させたのは、100年前に大西洋で沈んだタイタニック号だ
長さ270メートルの豪華客船は「不沈」とうたわれた
平成24年4月17日の天声人語よりの引用
涙というものは、流した人を強くも優しくもする。
科学技術もまた、あまたの悲劇に鍛えられ、熟してきた。
海の安全を考え直させたのは、100年前に大西洋で沈んだタイタニック号だ
▼長さ270メートルの豪華客船は「不沈」とうたわれた。
船底は二重、下部は16の区画に分割され、設計上は2区画に浸水しても沈まない。
だが、すれ違いざまに水平に切られるような事故は想定外だった
▼氷山に遭遇した巨船は左に舵(かじ)を切るが、はるかに大きい水面下の氷で右舷を90メートルにわたり損傷し、自慢の防水隔壁は4割が破られた。
ただ上部客室での異音や衝撃は限られ、デッキで様子をうかがってカード遊びに戻るグループもあった
▼2時間40分後、洋上のホテルは船首から氷海に没する。
約2200人の乗客乗員に対し、「使うはずのない」救命ボートの収容力は半分、生存者は約700人だった。
満天の星の下、無風の海は鏡の静けさながら、水温は0度を割っていたという
▼いくつもの別れがあった。
脱出時に優先された女性は、1等船室ではほぼ全員が助かったのに、3等では半数が逃げ遅れた。
全員分のボートを備え、避難誘導は船室で差をつけないなど、惨事を教訓に海の常識となったルールは多い
▼さて1世紀の後、福島の事故はどう語られていよう。
原発を鍛え直した試練、それとも人類が原子力をあきらめる端緒か。
いずれにせよ、ただの不運に終わらせてはならない。
3800メートルの海底に眠る、タイタニックの伝言である。
北朝鮮の国父金日成(キム・イルソン)主席も、
「次の次」候補として金正恩(ジョンウン)氏に目をかけたと思われる
晴れて3代目となった氏は、11歳で死別した祖父のコピーを演じている
平成24年4月18日の天声人語よりの引用
孫のかわいさは絶妙の「距離感」によるという。
血が引き寄せる親しみと、育てる責任のない気楽さの二重奏である。
北朝鮮の国父金日成(キム・イルソン)主席も、「次の次」候補として金正恩(ジョンウン)氏に目をかけたと思われる
▼晴れて3代目となった氏は、11歳で死別した祖父のコピーを演じている。
ふくよかな体形、髪形はすでに完成品、軍事パレードでの演説も、低い声や語り口が若き日の国父に重なった。
ただ若さゆえか、原稿は棒読みで早口だった
▼先代の金正日(ジョンイル)総書記は、国民の前では寡黙を貫き、肉声の記録は20年前の5秒間しかない。
その遺訓に沿った演説内容ながら、いきなり大群衆の前で20分とは様変わりである。
路線は父を継ぎ、スタイルは祖父をまねる。
これが正恩流らしい
▼江戸川柳に〈売家(うりいえ)と唐様(からよう)で書く三代目〉がある。
落ちぶれた孫が家屋敷を売りに出す。
商いより遊芸に凝ったことは、はやりの中国書体を使った張り紙で分かると。
初代の労苦を知らず、恵まれた中で育った3代目は多芸だが脇が甘くなる、との戒めである
▼かの国の跡継ぎはスイスに留学し、米国発祥のバスケットを愛する。
先代より世情に通じていると祈りたいが、居並ぶ番頭らの思惑もあり、国際社会への吉凶は読めない
▼国連安保理は、ミサイル発射を強くとがめる議長声明を出した。
中国やロシアも同意の上だ。
民に語りかける口はありそうな3代目、さて聞く耳があるか。
ここで世界の声を聞き逃すと、早晩ハングルで「売家」と書くことになる。
田中防衛相の国会答弁も二通りしかないようだ。
「しどろもどろ」と「とんちんかん」である
選挙違反を疑われて「問責仲間」となった前田国交相と違い、
法に触れるような所業があったわけではない。
平成24年4月19日の天声人語よりの引用
政治家の失言には「あっけらかん」という部類がある。
「個別の事案についてはお答えを差し控える、法と証拠に基づいて適切にやっている。
この二つで国会を切り抜けてきた」。そう言い放って辞めた法相がいた
▼田中防衛相の国会答弁も二通りしかないようだ。
「しどろもどろ」と「とんちんかん」である。
昨日の衆参予算委でも、一つしか聞かれていないのに「3点についてのご質問ですが」と切り出し、委員長に注意される場面があった
▼答弁に詰まる大臣に事務方が耳打ちをし、四方から資料が差し出される図は、二人羽織や千手観音に例えられた。
面白うてやがて悲しき助け舟。
毎度「冷や汗のパパ」を見せられる真紀子夫人もつらかろう
▼憎めぬお人柄なれども、指揮官役には不向きと思われる。
命がけで現場に向かう自衛隊員たちが、その顔を思い浮かべて奮い立つだろうか。
野田首相は迷走ぶりを「無知の知」とかばったが、大臣が勉強するまで有事は待ってくれない
▼野党がとうとう問責決議案を出した。
選挙違反を疑われて「問責仲間」となった前田国交相と違い、法に触れるような所業があったわけではない。
だがこの資質で地位にとどまること自体、政府あげての静かなる不祥事といえる
▼外交担当の最高顧問として「害遊」する元首相といい、これでもかとツボを外した人事が、民主党には目立つ。
失言より罪深い、あっけらかんの不適材不適所。
任命権者に差し上げたい言葉は無知ではない。無恥である。
昨年10月1日現在の人口は1億2780万人、1年で約26万人減った。
統計が整うここ60年間では、最大の減り幅だという
きょうは、春雨が百穀を潤す、という穀雨(こくう)にあたる。
平成24年4月20日の天声人語よりの引用
このまま坂を転げ落ちるとは思わないが、峠を越えた寂しさはある。
昨年10月1日現在の人口は1億2780万人、1年で約26万人減った。
統計が整うここ60年間では、最大の減り幅だという
▼少子化に加え、津波にのまれた命、帰国した外国人など、震災の爪あとが数で刻まれた。
減少率の上位は、福島の1.9%を最高に、岩手、秋田、宮城と東北が占める。
被災3県では、悲しい「自然減」に、まとまった転出が続いた
▼警戒区域の福島県富岡町で、2千本の桜並木が満開になったと聞いた。
名高い桜色のトンネルに、人影はない。
原発の事故でわが家を追われた人々は、避難先のテレビで懐かしい景色を確認し、目を潤ませるばかりだ
▼なお残る涙のあとを優しい色に染めて、桜前線がみちのく路を駆け上がる。
きっちりと巡り来る四季に、人事にお構いなしの冷厳を思うのは筆者だけではなかろう。
国破れて山河あり。
その感慨を胸の奥にしまい込んだ。今こそ前を向く時だから
▼きょうは、春雨が百穀を潤す、という穀雨(こくう)にあたる。
草木は甘雨に煙り、稲作農家は苗づくりや田おこしに励む。
この時節のお湿りは「万物生(ばんぶつしょう)」の異名の通り、生きとし生けるものに精気を満たしてくれる
▼週末を挟んで、天気は総じて下り坂らしい。
東日本では、花散らしの降りになるかもしれない。
咲かせて、散らせて、春の色は北国へとにじむ。
あまりに多くの人が欠けた、この列島をなでるように。
恵みの雨に打たれて、また歩き出そう。
尖閣諸島の買い取りを米国で発表した石原東京都知事は、
「政府に吠(ほ)え面(づら)かかせてやる」とけんか腰だった
平成24年4月21日の天声人語よりの引用
アルゼンチンからフォークランド諸島を奪い返した英国は、3年後に軍用空港を造った。
開港式は、しかし国会議員の放言でぶち壊しになる。
「軍政と闘ったアルゼンチンの母親たちは(やすやすと占領された)島民よりずっと勇敢だった」。
外地では政治家も高ぶるらしい
▼尖閣諸島の買い取りを米国で発表した石原東京都知事は、「政府に吠(ほ)え面(づら)かかせてやる」とけんか腰だった。
それが成田空港では「国が乗り出し万全の態勢を敷くなら、東京はいつでも下がります」と落ち着いた
▼つまり、国境の島々に都の表札を掲げることより、領土問題に鈍感そうな政府を動かす策だと。
自らは「尖閣を国有地にした男」として名を残す。
そういうことだろう
▼確かに島が民有地のままでは、いつの日かあらぬ筋に渡りかねない。
実際、海外からは「3島350億円」の打診もあったそうだ。
領土保全のために公有化するなら、都ではなく日本国が買うのが本来である
▼中国や台湾が領有を言い出したのは、周辺の海底資源が注目された1970年前後。
昨今は漁船や監視船が出没し、明治期から続くわが国の実効支配を揺さぶっている。
海洋進出を急ぐ中国は、南シナ海でもフィリピンやベトナムと摩擦が絶えない
▼さてどうする。
隣人との友好は大切だが、腫れ物に触るような毎度の外交では、先方がさらに踏み込んでくるかもしれない。
こと主権に関しては筋を通し、争点はとことん話し合うのがまともな国だろう。
世界が見ている。
厚労省によれば、全国の100歳以上は昨年で4万7千人を超えている。
超高齢のイメージを覆す活躍も多彩に聞こえてくる
平成24年4月22日の天声人語よりの引用
明治最後の年に生まれた映画監督の新藤兼人さんは、95歳の時にこう書いている。
「百歳まではとても無理だと思うが、わたしは今、生きている。
この一秒を、この十分を、この一日を生々しく生きてる」。
それから5年がたって、ご本人の見通しはうれしくも外れた
▼現役の輝きを保ちつつ、きょう100歳の誕生日である。
去年公開された49作目の「一枚のハガキ」は、自らの兵役体験をもとに作った。
好評を博し、映画誌「キネマ旬報」による昨年の日本映画の1位に選ばれた
▼「かけがえのない人を十把一絡(じっぱひとから)げで殺すのが戦争」という名匠の言葉には、激動を生き抜いた重みがずしりと乗る。
この一秒、この一日を積み重ねて至った大台の齢(よわい)である
▼そんな大長老、新藤さんにも先輩はいる。
厚労省によれば、全国の100歳以上は昨年で4万7千人を超えている。
超高齢のイメージを覆す活躍も多彩に聞こえてくる
▼医師の日野原重明さん、ベストセラー詩人の柴田トヨさん……。
有名人だけではない。
頂戴(ちょうだい)した公募の歌集「老いて歌おう第10集」を開いたらこんな歌があった。
〈百とせをすごせし梅の切り株に朱き茸(たけ)生ゆ二つ三つ四つ〉。
106歳の福島ミヤさんの作だ
▼〈人間といううれしいものに生まれ来て百四歳の今日も歌詠む〉は池田ハルヱさん。
みずみずしさにこちらの心も潤ってくる。
きれいごとばかりの老いではないだろう。
だが「うれしいもの」に生まれた喜びを、老若が分かち合える、この国でありたい。
冬のライチョウを探して北アルプスの立山を歩いたことがある
平成24年4月23日の天声人語よりの引用
冬のライチョウを探して北アルプスの立山を歩いたことがある。
25年ほど前、ようやく見つけた姿は神々しいばかりに白かった。
国の特別天然記念物にして「氷河時代の生き残り」と言われるだけのことはあると、感じ入ったものだ
▼その立山連峰の一帯に、日本にはないとされてきた氷河が存在することが先ごろ確認された。
地球の温暖化が言われ、極地やヒマラヤでも氷が解けると危ぶまれるご時世だが、どっこい生きていた。
ライチョウは喜んでいよう。
ともに日本の山岳の、貴重な自然の記念物である
▼氷河が見つかった三つの谷は冬の積雪が20メートルを超えるという。
日本の山は緯度も標高も高くはない。
氷河が存在するには厳しいが、世界有数の降雪量が不利を補い、夏の暑さに負けずにいたらしい
▼地球は古来、寒くなったり暖かくなったりを繰り返してきた。
専門家によれば、現在の私たちは、1万年ほど前に始まった気候の穏やかな間氷期に生きている。
だが、こうした時期は実は短いのだという
▼氷期(氷河期)の方がずっと長く、間氷期は「梅雨の晴れ間」のようなものらしい。
前の氷期には氷河がカナダや北欧を覆い、海面は今より100メートル以上低かったとされる。
変動絶えない地球史の、たまさかの「晴れ間」に文明は発達したことになる
▼氷河のほとりに高山植物が咲く光景は山好きの憧れだ。
奇跡のように存在する氷河が、地球環境への関心を様々に呼び覚ませばいいと思う。
消尽の時代への反省も忘れずに。
新潟県佐渡市で放鳥されたトキから、初のヒナがかえった
平成24年4月24日の天声人語よりの引用
日本が「最後の5羽」で人工繁殖に賭けたのは1981年だった。
同じ年、絶滅と思われていた中国で「最後の7羽」が見つかる。
そこから日中で始まるトキ再生の物語。
雨後の草むらに火をつけるような苦闘の先に、小さな炎が揺れ始めた
▼新潟県佐渡市で放鳥されたトキから、初のヒナがかえった。
環境省の無人カメラがとらえた子は、餌をねだって親のくちばしをまさぐる。
日本の自然界で孵化(ふか)が確認されたのは36年ぶりだ
▼親鳥が保温や餌やりに励み、テンやカラスが襲わなければ、5月下旬にも巣立ちが見込まれるという。
人が関わらない「野生のリレー」を目ざすからには手助けはできない。
なんだか胸が詰まる
▼日本のトキは、乱獲や戦後の乱開発で03年に絶滅した。
中国から届いた個体による人工繁殖は成功し、4年前に佐渡で始まった放鳥は5回、78羽を数える。
半数以上が生き抜き、抱卵中のつがいも多いそうだ
▼あらゆる生物には、したたかに種(しゅ)をつなぐ知恵が備わる。
ある種が短期間に死に絶えるのは、だから自然なことではない。
この地球で「不自然な力」を振り回している種は、一つしかない。
〈絶滅種数え尽くして青い空〉小池正博
▼日々100種ほどが地球から消えているという。
多くは、トキのように美しくも、パンダのように愛敬者でもない。
彼らへの供養には足りないが、せめてこの空に、ニッポニア・ニッポンの学名を持つその鳥をお返ししたい。
それが環境を、つまり人を守ることにもなる。
あと10日ほどで北海道の泊(とまり)3号機が止まり、国内で動く原発はなくなる
平成24年4月25日の天声人語よりの引用
タブーの由来は「聖なる」というポリネシア語らしい。
太平洋に散らばる神秘の島々には、恐ろしげな禁忌や呪術があったのだろう。
いま原子力発電の信奉者が恐れる呪文は、忌むべき13の音で構成される。
〈なければないでなんとかなる〉
▼あと10日ほどで北海道の泊(とまり)3号機が止まり、国内で動く原発はなくなる。
その節目を前に、電力9社が「原発がない夏」の算段を示した。
猛暑になれば関西、九州、北海道が需要のピークを賄えず、平年なみの暑さでも関電はかなりの不足という
▼だから大飯(おおい)を動かしたいとの理屈だが、業界のお手盛り体質を思うと素直にうなずけない。
他社からの融通、節電のゆとりはもうないのか、政府の検証委は重箱の隅を大いにつついてほしい
▼枝野経産相の発言は揺れた。
先々は脱原発でも、この夏の大阪が暗転の汗地獄にでもなれば原発の存在感はいや増し、「脱」の勢いが陰る。
そんな迷いがあるようだ。
師匠の仙谷さんはずっと単純に、原発ゼロを集団自殺に例えた
▼しかし、安全と必要を秤(はかり)にかけてはいけない。
両にらみではなく、安全を確保した上で必要なら動かす、これが筋道だ。
そして原発に絶対の安全はなく、万一の害毒は広域、将来に及ぶ。福島の教訓である
▼大飯の運転再開を問う本紙調査によると、地元福井県も近畿圏も反対が優勢だ。
停電の警告ひとつで民意が一変するとは思えない。
むしろ節電に励むだろう。
取り返しのつかない事故を経て、私たちは多くを学んでいる。
ここ2年、ワールドシリーズに進んだレンジャーズへの期待を思う。
悲願まであと一球と迫りながら、カージナルスに逆転優勝を許した去年の悔しさいかばかりか
平成24年4月26日の天声人語よりの引用
郷土愛にあふれ、とにかく大きいものが好きなテキサス州の人々は、米国ジョークに欠かせぬ存在だという。
米50州の中で面積も人口も2番目とあって、1番へのこだわりは大抵でないらしい
▼ここ2年、ワールドシリーズに進んだレンジャーズへの期待を思う。
悲願まであと一球と迫りながら、カージナルスに逆転優勝を許した去年の悔しさ、いかばかりか。
三度目の正直を託された助っ人が、ほかならぬダルビッシュ有投手である
▼大リーグの新天地で4度目となる登板は、強豪ヤンキースをホームに迎え、黒田博樹投手との日本人対決に。
その大舞台で10三振を奪い、名うての打線を沈黙させた。
胸のすく3勝目だった
▼打者を追い込むと、観衆が立ち上がって三振を求める。
それに応えるたびに、場内を「YU~」の響きが包んだ。生まれたての「テキサス自慢」を祝福するように。
札幌ドームとは違う控えめなガッツポーズに、覚悟と、喜びが詰まっていた
▼6年総額6千万ドル(約50億円)で契約した25歳に、ファンの視線は温かくも甘くない。
背負うものの重さは本人にしか分かるまい。
多くを語らずマウンドに向かう背番号11を、今はただ見守りたい
▼黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソンに名言がある。
「不可能の反対語は可能ではない。
挑戦だ」。
厚い人種差別の壁を、バット一本で打ち砕いた選手である。
幸い、しなる右腕を阻む壁はない。
挑んでこそ見えてくる地平へと、行けるところまで、行くだけだ。
資金問題で強制起訴された小沢一郎氏の、無罪である
平成24年4月27日の天声人語よりの引用
政治を動かした判決といえばやはりロッキード事件だろう。
1983年秋、東京地裁は田中角栄元首相に有罪を言い渡し、闇将軍が表舞台に戻る日は遠のいた。
約1年後、田中派の重鎮竹下登らは、分派行動ともいえる創政(そうせい)会の旗揚げへと動く
▼だれの時事漫画だったか、元首相が「ああせいこうせいとは言ったが、そうせいとは言っとらん」と嘆く傑作があった。
田中は心痛と深酒で脳梗塞(のうこうそく)に倒れ、失意のうちに影響力をなくしていく
▼さて、この判決は政治をどう動かすのか。
資金問題で強制起訴された小沢一郎氏の、無罪である。
大まかな経理処理の方針は承知していたが、うその記載を巡る秘書との共謀までは認められないと
▼小沢氏は折にふれ、「今後は一兵卒で」と殊勝な言を重ねてきた。
くびきを解かれた兵卒が見すえるのは、秋の代表選か、集団離党や新党か。
消費増税の前途多難といい、野田首相は頭が痛かろう
▼民主党は、各自の当選を目的とした非自民の選挙互助会でもある。
にわか作りの公約が破れ、政策や手法が敵方に似てくるほど、小沢流の原点回帰は説得力を増す。
首相の使い捨てが続く中、「なれたのにならない」政治家の凄(すご)みも無視できまい。
だが顧みるに、この人が回す政治に実りは乏しかった
▼若き小沢氏は心ならずもオヤジに弓を引き、創政会に名を連ねた。
以来、創っては壊しの「ミスター政局」も近々70歳。
「最後のご奉公」で何をしたいのか、その本心を、蓄財術とともに聞いてみたい。
山形県で20年前に出土した「縄文のビーナス」が、
土偶では四つ目の国宝に決まり、
きょうから上野の東京国立博物館で公開される
平成24年4月28日の天声人語よりの引用
エーゲ海のミロス島で、農夫がその大理石像を見つけたのは1820年の春。
両腕は欠けるも、体重は右に、視線は左に向けて、額から伸びた鼻筋が美しい。
フランスの外交官らの機略で、「ミロのビーナス」はルーブル美術館の至宝に落ち着いた
▼以来、原則として門外不出である。例外は1964年、日本への旅だった。
手前みそながら、仏政府にかけ合い、東京と京都で展示を企てたのは朝日新聞だ。
一点のみの美術展を、172万人が訪れた
▼わが国にも誇れる女神像がある。こちらは純然たる祖先の作である。
山形県で20年前に出土した「縄文のビーナス」が、土偶では四つ目の国宝に決まり、きょうから上野の東京国立博物館で公開される
▼4500年前、縄文中期の逸品だが、現代彫刻の趣がある。
国宝に推した文化審議会は「土偶造形の一つの到達点」と評した。
縄文人(びと)からの贈り物と喜ぶのは、所蔵する山形県の吉村美栄子知事だ。
「豊穣(ほうじょう)の祈りや再生の意味がある土偶が国宝となり、東北の再生にもつながる」と
▼ミロのビーナスの倍の歳月を知り、渡航歴はすでに本家をしのぐ。
フランス、中国、ドイツ、英国をめぐり、縄文文化の豊かさを伝えてきた。文化使節としての実績は国の宝にふさわしい
▼素焼きの立像に向き合えば、大胆な捨象(しゃしょう)の美を思うはずだ。
次いで土の香り、祝祭のさざめきだろうか。じんわりと、五感に太古がこみ上げる。
時をせき止めて、縄文の匠(たくみ)を守り通した国土に、改めて感謝したい。
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